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経路不明のコロナ感染は「空気感染」!?/根来秀行教授が解説する「コロナの最新①」

根来秀行

根来秀行

1967年、東京都生まれ。医師、医学博士。この連載から生まれた『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業 「毛細血管」は増やすが勝ち!』(いずれも集英社)が好評発売中。ハーバード大学医学部客員教授(Harvard PKD Center Collaborator, Visiting Professor)、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、世界の最先端で臨床・研究・医学教育にあたる。

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緊急事態宣言が解除されたものの、冬の到来とともに第6波が懸念されています。新型コロナの治療薬開発にも携わるハーバード大学&ソルボンヌ大学客員教授・根来秀行さんが、デルタ株が席捲したこの夏を振り返り、さらに今後、必要な備えについて考察! ぐうたらライター・いしまるこがインタビューします。
(記事の内容は2021年11月21日時点の情報に基づきます)

 

感染力1割強!? ニューデルタプラスも登場

いし この夏はデルタ株が急拡大しましたね。東京では8月中旬には90%以上が置き換わっていたとか。

デルタくん

根来 デルタ変異の大きな特徴は、感染した際の体内のウイルス量が多くなったことです。増殖スピードは従来型の約1000倍ともいわれています。感染者が体外に排出するウイルス量もおのずと増えるので、感染の機会も高まります。

 

CDC(米国疾病予防管理センター)は、従来の新型コロナウイルスは1人の感染者から平均1.4〜3.5人くらいに感染していましたが、デルタ型は1人の感染者から平均5人に感染すると算出しています。

 

これは空気感染する水疱瘡と同等の感染力です。「ワクチン先進国」ながら再感染が拡大しているイギリスでは、デルタ株の亜種で「ニューデルタプラス」が発見され、従来のデルタ株より感染力が1割増しとも言われていて、すでにイギリスの症例の7~8%を占めるとされます。

DELTA(デルタ) PROFILE

最初に確認された国 インド
おもな変異 「L452R」「P681R」
感染性 アルファ株の約2倍
1人の感染者から平均5〜8人に感染
入院率 アルファ株の約2倍
再感染やワクチン効果 ワクチンと抗体医薬の効果を弱める

 

デルタ株が広がった2021年7月のデータ

感染を防ぐ効果 入院を防ぐ効果
ファイザー 42% 75%
モデルナ 76% 81%

(アメリカのメイヨークリニックなどの研究/NHK)

 

いし 新規感染者が爆発的に増えた第5波は、やはりデルタ株のせい?

 

根来 確かにそれもありますが、空気感染の比率が多くなっていることも、新型コロナの感染を広げている重要なファクターだと思います。感染経路不明とされている多くのケースには、空気感染がそれなりに含まれているはずです。

 

いし 変異を繰り返すことによって、空気感染しやすくなっているということはないですか?

 

根来 その可能性はなきにしもあらずですが、次々と変異株が出ていても、変異自体は微々たる変化なんですよ。

 

いし 意外! めっちゃバージョンUPしてると思っていました。

 

根来 新型コロナの感染経路については、飛沫感染と接触感染が主とされてきましたが、空気感染も最初から少なからずあったことがわかってきています。

 

いし 根来教授はパンデミックが始まった頃から、空気感染について懸念されていましたもんね。

 

根来 ハイ。新型コロナに関する論文を査読したり、いろいろ研究にかかわってきましたが、当初から、空気感染でなければ説明できない事例が多数報告されていたんです。

 

最近になって、米科学誌「サイエンス」でも、台湾や米国などの研究チームが200本以上の論文をもとに、空気感染が当初の想定より新型コロナの感染拡大に寄与しているとの報告がありました。

 

日本でも感染症の専門家や医師、物理学者ら38人が「新型コロナの主たる感染経路は空気感染」と指摘し、もっと空気感染を重視した対策をとるよう政府に求める緊急声明を出しましたね。

 

 

いし オリンピックのバブル方式も、飛沫感染と接触感染の予防がコロナ対策の中心でしたものね。それにしても、空気感染って実態がつかみづらくて怖いです〜。

 

根来 空気感染は、ウイルスを含む微細な液体粒子「エアロゾル」を吸い込むことで感染します。大きさは5マイクロメートル(0.005㎜)以下とされ、飛沫より小さいので遠くまで飛び、より長い時間空間を漂っています。

 

ハーバード大学公衆衛生大学院などの研究チームは、新型コロナの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では、エアロゾルによる3mを超える距離での感染が約3分の1を占めたと推定しています。

 

いし オリンピックでも、海外からの選手や関係者に機内感染が複数ありましたが、ひょっとして?

 

根来 疑わしいですね。

 

いし 東京では、時間帯によっては満員電車を見かけます。電車でクラスターは出ていないといわれていますがどうなんでしょう。

 

根来 追跡ができていないだけで、条件が揃えば電車内での感染もあり得ると思います。乗った車両に誰もいなくても、その直前まで感染者が乗っていたら、ウイルスが空気中にふわふわしている可能性も。ウイルスはエアロゾルの状態だと、空気中を3時間ほど浮遊するという報告もあります。

 

いし 3時間もふわふわ…。

 

根来 厚生労働省も、つい先ごろ、新型コロナウイルスの感染経路についてホームページを更新し、新型コロナはエアロゾルを吸い込むことで感染するとの見解を示しました。それまでは飛沫感染と接触感染の二つしか挙げていませんでしたが、第6波を念頭に、今後は空気感染対策を進めることが必要と考えたのでしょう。

 

いし では次回は、ぜひ具体的な空気感染対策について教えてください!

 

みなさん今日も素敵な一日を!

 

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根来秀行教授 ハーバード大学医学部客員教授

根来秀行教授
Hideyuki Negoro

1967年、東京都生まれ。医師、医学博士。この連載から生まれた『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』、『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業 「毛細血管」は増やすが勝ち!』(いずれも集英社)が好評発売中。ハーバード大学医学部客員教授(Harvard PKD Center Collaborator, Visiting Professor)、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、世界の最先端で臨床・研究・医学教育にあたる。

 

いしまるこ(いし)

寒さにめっぽう弱いぐうたらライター。暖かい場所ならどこでも丸まります。

 

 

撮影/角守裕二 イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/石丸久美子

 

 

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