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【50代からの明るい終活 私の場合①】〝最期のお別れ〟にたくさん使ったのはお金と……

ギリコ

ギリコ

20年近く前、パーティのビンゴで当たった、とある企業のノベルティ商品。すごくかさばり場所ふさぎで仕方がなかったのですが、ふと思い立ちリサイクルショップに持って行ってみました。なんとけっこうな値段がついてびっくり。

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木内みどり著書「あかるい死にかた」表紙

きっかけは主治医の一言だった。「長年働いてきたんだから、貯金だってしてるでしょう。お金でもめることは多いですからね、遺書とまでは言わないけど、万が一のときに備えてメモ書きくらいは残しておいた方がいいですよ。あなたの場合」

 

数年前のことである。

 

毎日会社に行き、家事をこなし、食べたいものを食べ、たまには旅行……それまでそんな生活を謳歌していたのに、持病の心疾患は年齢とともに悪化していたのだ。

 

医師は「ある日、突然(そのときは)来るから。この病気は。こんな感じで意識がふうっと遠のいて……」と言いながら、少し白目をむいてイスごと後ろに倒れかかるという迫真の演技をみせた。

 

帰宅し、あわてて便せんに一筆書いた。封筒の表書きは『緊急に備えて』とし、リビングのわかりやすい場所に置いた。そんな一方で、「それにしても親より先には絶対逝けないな」と思った。とくに父親。私が先に死んだりしたら、かわいがってくれた父がどれだけ悲しむだろう。自分の死がグンと身近になった。

 

こうして〝お父さんより先に死なない〟が私の目標というか願いとなったのだが、その願いははからずも、思っていたよりも早く叶うこととなった。ある日突然自宅で様子がおかしくなった父は、救急搬送され、そのまま病院で亡くなってしまったのだ。

 

そこからが大変だった。病院との事務手続、葬儀会社や親戚への連絡といったことが一気に押し寄せてきた。

倒れる前日までいつも通り元気に暮らしていた父が突然亡くなり、母は「気が動転して私は何もできない」という。

 

母に代わりあちこちに電話をかけ、葬儀会社の遺体安置所に父を運び、葬儀の日までに遺族がやらないといけないことのレクチャーを受けた。終わって時計を見たら23時半だった。父の死から6時間しか経っていなかった。

 

何しろ緊張したのは菩提寺とのやりとりだった。そこは我が一族には身に余る由緒あるお寺で、それだけで私は気圧されていた。しかもこの日が来るまで、お寺とのお付き合いは全て父がやっていたのだ。

 

事前に葬儀会社から住職へ連絡する際の心得を教わったものの、葬儀の日程やお布施の額から始まり、当日のお車やお膳のことなどいろいろお伺いをしないといけないことが多く、そのたびに「失礼があってはいけない」と言葉ひとつひとつにやたら神経を使った。

 

住職へのお伺いが終わると、祭壇の規模やお棺の種類、会葬御礼の品から精進落としの料理選び、当日の椅子のレイアウトなどあらゆることをどんどん決めねばならなかった。これは経験した方ならわかると思うが、もう全てが予算と好みのせめぎあい。ちょっとでも見栄えのよいものを、お父さんだったらこれがいいって言うだろうな、なんて考えながら選んでいくと葬儀の費用はあれよあれよという感じでかさんでいった。

 

知らなかったしきたりもあった。

 

3回目の打ち合わせで、葬儀会社の人が机の上にたくさんの小さな封筒を並べ始めた。「こちらは納棺師、こちらはお通夜と告別式の日にご住職にお茶を淹れたりするアテンドレディ、あとこちらが火葬場までのマイクロバスの運転手と駐車場の誘導係、こちらは焼き場の係の方、それと焼き場の待合でお茶を出してくれる方にも……」。

葬儀に関わっていただくさまざまな職業の方々への心付けを入れる封筒だった。金額の相場も一緒に教えてもらえたのは、本当に助かった。

一通り決め終わり、さぁ帰ろうとしたら「ご住職にお出しするお菓子ですが……」と用意するお菓子についてのアドバイスが最後にあった。和生菓子(できれば季節感のある美しいお菓子が望ましい)を2種類、通夜と告別式の2日分(つまり合計4種類。同じ種類のものを連日お出ししてはいけない)用意するように、ということだった。

それを横できいていた母は「そんなお菓子を売っているところ、うちの近所にはない」と即答した。

なので私が都心の百貨店まで買いに行くことにした。とにかく頭にあったのは「亡くなったお父さんに恥をかかせるようなことがあってはならない」ということだけだった。

 

とにかく父との最期の別れにはお金も使ったが、このように気もたくさん使った。

そして時間も。

 

父が亡くなったのは大型連休の最中だった。だから会社から休みをもらう必要もなく、つまり仕事が滞ることなく済んだが、もしこれが忙しい時と重なっていたら自宅から往復4時間かかる葬儀会社へ連日休みをとって出向くのは、きつかっただろう。

 

まるで父が私の仕事の邪魔をするまいと、亡くなる日を選んでくれたような気がした。

 

こうして葬儀を終えたが、お寺とのお付き合いはここからが始まりだった。

四十九日の納骨から始まり、三回忌、七回忌……

毎年、春と秋のお彼岸もある。

 

父の供養のためなら、全てちゃんとやりたい。

 

でも……

 

自分のときは勘弁、と思った。

誰かにこんな面倒をかけたくない。そもそも葬儀のあれやこれやを担ってくれるような子どももいないのだ。

だったら、火葬から納骨、亡くなった後マンションを退去するための家財道具の処分など、死んだら起きる『やらねばならないこと』を今から自分で手配しておこう、残された誰かがあわてて決めないといけないなんてことは避けたいと思った。

 

 

そしてお寺もお坊さんも、つまり宗教儀礼の一切が関与しないシンプルな旅立ち方をしようと決めた。

 

これは父が亡くなった後だからこそ、できた決断だった。

父が健在のとき、もし私がそんなことを言い出したら「代々お世話になってきたお寺にお願いするのが筋だ」と怒っただろう。

 

父が亡くなったことは本当に悲しく辛かったが、その死は私が背負ってきたものをひとつおろさせてくれた。

 

それは世間体とか家のしがらみとかいう名前のついた荷物だった。

 

後に木内みどりさんのご本『あかるい死にかた』を手に取り、扉に載っていた木内さんの遺言をみたとき、その筆跡と内容が放つ清々しさに圧倒された。

 

木内さんの遺言を眺めていたら、「そうか。私が今とりかかっていることは私流の〝明るい死にかたプロジェクト〟なんだ」と、まだどこかにうっすらと残っていた家というしがらみへの遠慮が消えた。

 

木内さんほどの見事な終い方はできないが、自分のやりたいように私はやるぞ。

 

……けれど、とりかかってみてわかった。

自分の目指す人生の終い方、そのための生前準備はけっこう大変だということが。

「家の片づけは気力、体力があるうちに」とよくいわれるが、まさに終活こそそうだったのである。

 

まずお墓を買った。自分専用のお墓だ。

 

好みの墓園を探し出し、現地の見学をし、契約し、自分で選んだ樹を植えてもらった。

 

これについては大変ではあったが、意外なことに全てのプロセスがとても楽しかった。

 

その墓園は昔話に出てきそうな里山の中にあって、雉が舞い降り、ふくろうも来る(あと猪も)。

そして骨壺は使わず、骨を木綿の布でくるんで土に埋めて自然に還すという埋葬方法をとっている。

 

「いずれあそこで、私の骨はゆっくりと土に還るんだ」と思うと穏やかな気持ちになる。

 

こうして自分の好きなようにお墓を準備したことが、私の死への向き合い方を大きく変えていった。

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