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戸田奈津子さんの健康の秘訣は、絶対にクヨクヨしないこと!(インタビュー/後編)

現在はペースダウンしているとはいえ、長い間、映画の字幕翻訳の世界で第一線を突っ走ってきた戸田奈津子さん。

締め切りに追われっぱなしの年月を経てきたにもかかわらず、元気いっぱいの健康優良85歳だ。

いったいなにが、今のハッピーな毎日を支えているのだろう?

 

(85歳の戸田さんが97歳の村瀬実恵子さんとの共通点を語った、インタビュー前編はコチラ

 

撮影/萩庭桂太 取材・文/岡本麻佑

戸田奈津子さんポートレート横顔

戸田奈津子さん
Profile

とだ・なつこ●1936年7月3日、東京都出身。津田塾大学英文科卒。映画字幕翻訳者・通訳。フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』で本格的に字幕翻訳者としてデビュー。数々の映画字幕を担当。洋画字幕翻訳の第一人者としての地位を確立。ハリウッドスターとの親交も厚い。

 

脅威の健康の秘訣は、ストレスゼロ!

 

40代から50代、60代と、年間50本のペースで洋画の字幕翻訳を続けてきた戸田さん。毎週1本ずつ映画の字幕翻訳を仕上げるなんて、並大抵の仕事量ではない。

 

「1日24時間あるうち、6~7時間は寝て、残りの時間はすべて机にかじりついていました。そういうのが何10年も続いたけれど、病気ひとつしたことないの」

 

運動は?

 

「しません! ゼロです。小学校で走るのが遅くて、劣等感を感じて運動に拒否反応がでたのね(笑)。

70を過ぎてから、みんなに勧められてスポーツジムに入りましたけど、シャワーを浴びに行くだけ(笑)。友だちに誘われてタップダンスもちょっとやりましたけど、あれはね、ミュージカル映画が好きだったから。もちろん、フレッド・アステアのように踊れるはずないけど、ダンスは好きなのね」

 

食事は?

 

「何が体に良いとか、考えたこともありません。食べたい物を食べたいだけ、いただいています。もちろんお酒も。だから太っているけど、それはしょうがないわね(笑)」

 

では、体のために何かしたことは?

 

「肩が凝るから、マッサージには行っていました。それだけです。

あ、でも、睡眠だけは、どんなに忙しくても毎日ちゃんと寝ました。徹夜なんかしたことないです。睡眠は人間の基本。大事だと思うんです」

 

こんなに何もしないで元気いっぱいの80代には、初めて会ったかも。

ではいったいなにが、戸田さんの健康の秘訣かというと。

 

「気持ち、です。気の持ちようで体の調子はずいぶん変わると思うの。

もちろん、難病の方や、なかなか病気が治らない方はおつらいでしょうし、本当にお気の毒に思います。その点私はラッキーとしか言いようがないし、これは私だけに当てはまる極論かもしれないけれど、気の持ちようで病気は撃退できると信じているのね。だから絶対にクヨクヨしない。楽天的なの。いいことしか考えない。

よく言うでしょ? コップに半分水が入っていたら、私は必ず『まだ半分ある』って喜ぶタイプ。『もう半分に減ってしまった』なんて悲観的なこと、考えたこともないです。

更年期障害も、仕事が忙しくて、いつの間にか過ぎちゃった(笑)。

ですから健康であるためには、ストレスが一番いけないと思うんです。私がこれだけ元気なのは、ストレスを一切排除しているから。本当にストレスは、ありません!」

 

とはいえ、この現代社会、ストレスゼロで生きるのは難しいことのように思うけど。

 

「どうかしら、ね? 私にとってのストレスは、なにか力によって強制されたり、制限されることなのね。

だから若い頃会社勤めを1年半くらい経験しましたけど、これは自分に向いていないと思って、さっさと辞めて、ずっとフリーランスです。自分ひとりでやる仕事だから、嫌な人とか合わない人と無理矢理付き合う必要もないし。それが良かったんでしょうね。まああの、もともと楽天的なのかもしれませんけど(笑)」

 

ストレスゼロは、ストレスの可能性がある環境を回避した結果、でもある。

 

「私の性格上、仕事をしていくんだったら家庭と両立するのは絶対無理だとわかっていたので、家庭を持つとか子どもを産み育てるという選択肢は捨てました。何もかも持とうとしても中途半端になるだけで、欲張ってもダメですから。人生は選択ですからね」

 

そんな人生に、今は大満足。

 

「自分で判断して選んだ結果ですからね。十分に仕事もさせてもらったし、後悔はありません。『さびしくない?』なんて聞く人もいますけど、とんでもない! ひとりで映画を見たり本を読んだり、退屈してるヒマがないんです」

戸田奈津子さんポートレート

そんな戸田さんだけど、現在、体に不調がないわけでもない。

 

「2~3年前、家の近所の横断歩道でタクシーにはねられて、2か所骨折しました。初めのうちは松葉杖をついて歩いていたけど、不思議ね、すぐに骨がくっついてくれたの。

あと、つい先日、朝起きたら肋骨が折れていた、ということがありました。なんか痛いなと思って、なかなか治らないから医者に行ったら『折れています』って。そのうち治りましたけど。

今もね、家具にぶつけた足の小指が折れて治りかけなんですけど、でも大丈夫。やっぱり80代ともなると、骨が弱くなるって本当なのね」

 

 

ひょっとして、スーパーマンですか?

 

「いえいえ(笑)、でもこういうのは自分のコントロール外のことですから、本当に、丈夫な体に生まれたことを天に感謝するしかありません」

 

鍛え上げた心の筋肉は、体も強くしてくれるみたいだ。

 

つい先日、85歳の戸田さんと、97歳の元メトロポリタン美術館特別顧問の村瀬実恵子さんが、その人生と今について語り合った対談集が発売された。コロナ禍を逆手に、Zoomを通してやりとりする言葉の中には、そんな心の筋肉を育てる秘訣が、ぎっしりと詰まっている。

その本のタイトルは、『枯れてこそ美しく』。

 

「『枯れて』とか『美しく』とか、口に出すのも恥ずかしいんだけど(笑)。でもね、花って枯れるから美しいと思うんです。人間も、死ぬから美しい。やっぱりその時が来たら、枯れなきゃ。無に還らなければ。それは村瀬さんも同じように考えてらしたみたい。ああ良かったなと、意を強くしました」

 

まだまだ、枯れるまでには時間がかかりそうですが。

 

「じゃ、この本のタイトル、『枯れそこねて』とかどうかしら、ね?(笑)」

 

『枯れてこそ美しく』

戸田奈津子「枯れてこそ美しく」カバー

著者:戸田奈津子 村瀬実恵子(集英社 1430円)

https://books.shueisha.co.jp/items/contents_amp.html?isbn=978-4-08-781706-5

映画を通じて海外の文化を日本に紹介し続ける85歳の字幕翻訳家と、日本美術の素晴らしさを世界に広めてきた97歳の元メトロポリタン美術館特別顧問。人生の達人ふたりによる“生きるヒント”がいっぱいつまったスペシャル・トーク!

 

村瀬実恵子 むらせ・みえこ●1924年樺太生まれ。東京女子大学英文科卒。コロンビア大学美術史考古学部教授、メトロポリタン美術館東洋部日本美術特別顧問などを歴任。2010年瑞宝中綬賞。親交のあった日本美術収集家、メアリー・バークの収集をサポート。展覧会の企画、監修などでも活躍。

 

 

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