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華麗なるスペイン王室の雰囲気を味わいながら、傑作絵画を鑑賞する

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

今回は、現在、国立西洋美術館で開催中の『プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』をご紹介します。会期が5月27日(日)までと長いので、あたたかくなったら、お花見がてら行くのもお勧めです。

吉田さん プラド美術館展 看板

スペインのマドリードにあるプラド美術館は、スペイン王室によって収集された絵画を中心に、1819年に王立の美術館として開設されました。数ある収集品の中でも、もっとも有名なのはディエゴ・ベラスケス。今回の展覧会では、そのベラスケスの傑作が7点展示されます。日本で、これだけの数のベラスケスの作品が同時に展示されるのは、これがはじめてとのことです。

吉田さん プラド美術館展 肖像画たち

この展覧会では、それ以外にも、リベーラ、ムリーリョなど17世紀のスペイン人大画家による作品及び、ティツィアーノやルーベンスなど、スペイン以外の国の大家の作品も多数展示されます。歴代のスペイン国王が絵画を愛して名品を収集したため、当時のスペインの王宮は、まるで美術サロンのような雰囲気だったようです。ベラスケスは、とりわけ美術品収集に熱心だったフェリペ4世の手厚い庇護を受け、国内外の画家の傑作にも触発されながら、宮廷画家として大成したのでした。

 

7つのベラスケスの作品の中でも、もっともよく知られているのは、このかわいらしい王子様の像でしょう。

吉田さん 王太子バルタサール

ディエゴ・ベラスケス

「王太子バルタサール・カルロス騎馬像」1635年ごろ

 

 

国王のフェリペ4世と、フランスのブルボン王朝から嫁いだ王妃イザベルとの間に生まれた美しい王子様は、王族の期待の星だったようです。まだ小さいのに、馬を見事に乗りこなし、ポーズもばっちり決まっていますね。縦が2m以上もある大きな絵で、前に立つと、馬が飛び出してくるのではないかと思えるほど立体的に描かれています。しかし、残念ながら、この王子様は17歳の誕生日を前に病気で亡くなりました。

 

こちらは、そのバルタサール王子のお父さんで、ベラスケスを庇護したフェリペ4世です。

吉田さん フェリペ4世

ディエゴ・ベラスケス

「狩猟服姿のフェリペ4世」1632~34年

 

 

政治手腕と同様に狩猟の腕前も優れた有能な王様だったそうですが、この絵を見る限り、近寄りがたいほどの威厳は感じられず、容姿端麗とまでは言えない平凡な顔立ちのように思われます。ベラスケスは、王様であっても理想化せず、現実をありのままに描く画家だったようです。こういう肖像画を容認してしまう王様の方も、ずいぶんと懐の深い人だったのかも知れません。

 

 

 

次のページも引き続きベラスケスの傑作をご紹介。

ベラスケスは、神話の登場人物も理想化しません。

吉田さん マルス

ディエゴ・ベラスケス

「マルス」1638年ごろ

 

 

マルスはローマ神話に出てくる軍神です。通常は、勇敢な戦士、若者の理想像として描かれることが多いようですが、この絵のマルスは、何だか疲れてぼうっとしているように見えます。体つきも、筋骨隆々の若者ではなく、どことなく中年っぽい。あまりにも写実的なため、神様というより、身近にいる普通の人のような存在感がありますね。冑をかぶっているのに体は裸というのも不思議です。これは、内外に山積する問題に疲れ果てた国王の姿、ひいては、疲弊するスペインの象徴であるという説があるそうです。そういえば、このマルスの顔は、先の狩猟服姿のフェリペ4世にどこか似ているような気もします。天才画家ベラスケスの目は、どこまでも冷徹で現実的なんですね。

 

ベラスケスの作品ではないですが、女性にとっては、この絵も興味深いです。

吉田さん 王女イザベル・クララ・エウヘニア

アロンソ・サンチェス・コエーリョ

「王女イサベル・クララ・エウヘニアとマグダレーナ・ルイス」1585~88年

 

 

この王女は、フェリペ2世とその3番目の妻との間に生まれた娘さんです。当時の華麗なる王室ファッションの様子がよく伝わってきますね。ドレスの材質は、光沢のある絹織物に金糸の刺繍でしょうか。髪と胸元を飾る大粒の真珠や宝石。顔を取り囲む細かなレース。質感が細部まで見事に表現されており、見ているうちに、王女様が話し出しそうな気さえしてきます。

 

バロック期のフランドルの巨匠、ルーベンスによる傑作もあります。

吉田さん ペルセウス

ぺーテル・パウル・ルーベンス、ヤーコプ・ヨルダーンス

「アンドロメダを救うペルセウス」1639~41年

 

 

これも神話の登場人物を描いたもの。しかし、理想化された姿ではなく、女性も男性も、現実にいそうな親しみやすい表情です。フェリペ4世がルーベンスに注文した神話画の一点とのことですが、ルーベンスは完成前に亡くなり、ヤーコプ・ヨルダーンスという画家が仕上げを行ったという記録が残っているそうです。

 

 

 

公式プレゼンターも豪華。詳しくは次のページへ。

展覧会の公式プレゼンターは及川光博さん。

宮廷の華麗な雰囲気が及川さんにぴったりです。プレス向けに行われた内覧会も、コンシェルジェような衣装で登場し、こんなポーズをきめてくれました。

吉田さん 及川光博

音声ガイドの声も、もちろん及川さん。ご本人いわく「カタカナの名前が多くて、セリフを覚えるのがたいへんだった」とのことですが、とてもわかりやすく絵の見どころを説明してくれています。展覧会の公式サイトの中に、及川さん出演によるPR動画もありますので、ぜひご覧ください。

吉田さん 音声ガイド

オリジナル・グッズも、ベラスケスの絵をモティーフにしたポーチやバッグ、ストールなど、ヨーロッパの美術館らしいおしゃれなものが多いです。

吉田さん グッズ

 

「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」

東京展(国立西洋美術館)2018年2月24日(土)~5月27日(日)

兵庫展(兵庫県立美術館)2018年6月13日(水) ~ 10月14日(日)

 

公式サイト

http://prado2018.yomiuri.co.jp

 

 

吉田さらさ

公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

個人Facebook

https://www.facebook.com/yoshidasarasa

イベントのお知らせページ

https://www.facebook.com/yoshidasarasa2

 

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