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京都で仏像を見るならまず東寺へ ( その1)基本の堂宇や仏像について

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

3月26日から開催の東京国立博物館の特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」の予習記事も書いているのですが、ここでは、現地、京都の東寺を拝観するためのご案内をお届けします。

第一回は、はじめて行く方のための、基本のお堂と仏像拝観の情報です。

京都を代表するお寺のひとつである真言宗総本山 東寺。教王護国寺ともいいます。

創建は平安京遷都にさかのぼります。京都に唯一残る平安時代の遺構です。

 

794年に平安京ができたころ、都の真ん中を貫く朱雀大路があり、

その南の端に都の入り口である羅城門がありました。

そしてその左右(西側と東側)に国を守るための官寺(国営の寺)である「西寺」と「東寺」が建てられました。その後、西寺はなくなり、東寺だけが、建立された時と同じ場所に残っているのです。

京都駅から新大阪駅に向かう新幹線の車中からも見えるこの五重塔。

高さは約55mあり、木造建造物では日本一の高さです。東寺のシンボルであると同時に京都のランドマークでもあります。

東寺は、823年に中国で最新の仏教(密教)を学んできた弘法大師空海に託されました。この塔を最初に建てたのは、その空海です。

その後落雷などによって4回も焼失したのですが、そのつど再建され、現在の塔は江戸時代(1644年)に再建された5代目です。

京都駅からほど近く行きやすいこともあって、わたしも、しばしばこのお寺を訪れています。

京都で仏像鑑賞をするなら、この寺から始める、または、この寺で締めくくるのがベスト。

なぜなら、この寺では、京都の始まりのころの仏教文化と仏像がどんなものであったのかをつぶさに見ることができるからです。

もっとも有名なのは、講堂というお堂の中にある「立体曼荼羅」と呼ばれる仏像群ですが、最初にお参りしたいのは、この金堂です。こちらは、東寺の創建時(空海に託される以前)に最初に建てられたお堂で、東寺の本堂です。ただし、現在の建物は、創建時そのままではなく、桃山時代(1486年)に再建されたものです。この時代の建築様式を伝える貴重な建造物で、国宝に指定されています。

 

 

重要文化財 薬師三尊像

 

金堂内には、この薬師三尊像が祀られています。

薬師三尊像とは、病気を治す役割を持つ薬師如来と、その脇侍である日光菩薩、月光菩薩の三体の仏像がセットになったものです。

 

よく見ると、真ん中の薬師如来像が特徴的です。

薬師如来は、向かって右側の上向きに広げた手のひらの上に薬を入れるための小さな壺(薬壺)を持つのが一般的ですが、この像にはそれがありません。

なぜかというと、それが古い時代の薬師如来像の形だから。建物同様に桃山時代に再建されたものではあるのですが、創建時の形式を踏襲しているのです。

奈良時代の薬師如来、たとえば、奈良の薬師寺の本尊などには薬壺はありません。つまりこの金堂の薬師如来は、まだ、奈良時代の仏像の形をそのまま残しているということです。

薬師如来像の台座の下にある小さな像たちにも注目してください。

これは十二神将といって、薬師如来の十二人の眷属(けんぞく)です。

眷属とは、簡単に言えばある特定の仏様の仕事を手伝う専属の手下のようなもの。仏像は、このように、真ん中にメインの像、両脇に脇侍、近くに眷属というようなチームの形で祀られることが多いものです。仏像の種類によって、チームのメンバーはさまざまですが、ある程度の原則を覚えておけば、他の寺で仏像鑑賞をする際にも役立ちます。

(今回の特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」に、金堂の諸尊は出品されません。

 

次ページに続きます。

引き続き、講堂にお参りします。

こちらには、空海が中国で学んだ密教の世界感を伝えるために作った立体曼荼羅と呼ばれる仏像群があります。日本中のお寺を巡っていますが、こちらほど学びの多い仏像空間は、ほかには見当たりません。なにしろこちらには、密教世界の基本構造に従って、21体もの傑作仏像が整然と立ち並んでおり、まるで教科書のようなのです。

重要文化財 大日如来坐像

 

21体の仏像の中心となるのが、この大日如来像です。空海が中国で学び、日本に伝えた真言密教では、この宇宙には、大日如来を中心に、無数の仏様が満ちていると考えられています。それを絵画の形で現したものが「曼荼羅」です。空海は、これを、仏像の形でより体感しやすく表現することに心血を注ぎました。その結果生まれたのが、こちらの立体曼荼羅なのです。

重要文化財 大日如来坐像を中心とした五智如来

 

仏像は、「如来、菩薩、明王、天」の四つのカテゴリーに分かれます。これは悟りに近い順で、如来はすでに悟りを得た存在、菩薩は次に悟ることを約束された存在、明王や天は、仏の世界を守る役割を持つとされます。こちらの講堂では、真ん中に大日如来坐像を中心とした五智如来、右側に金剛波羅蜜菩薩坐像を中心とした五菩薩、左側に不動明王坐像を中心とした五大明王、そして両端に天のグループが祀られています。

国宝 不動明王坐像を中心とした五大明王

 

こちらは大日如来の心の中の決意を表す化身とされる不動明王と、それを取り巻くユニークな姿の4体の明王像。5体合わせて五大明王といいます。

不動明王は、のちの時代には「お不動さん」と呼ばれて庶民にも大人気となりましたが、実は、空海が日本にはじめて紹介したものでした。つまり、奈良時代のお寺には、本来、不動明王はなかったのです。現在の奈良には不動明王があるお寺もありますが、それは後世に加わったものです。こんなところからも、平安時代初期に導入された密教がどれほど画期的で、大きな変化をもたらしたかがわかりますね。

 

国宝 持国天立像

 

両端には、それぞれ3体ずつ、天のカテゴリーに属する像が並んでいます。

そのうち四隅にあるのは、仏の世界の四つの方角を守るとされる四天王像です。勇ましい闘いの姿をして、足で邪鬼を踏みつけています。上の写真はそのうちの一体、持国天の像です。

 

国宝 帝釈天騎象

 

3体のうち真ん中には、四天王には属していない天の仏像が祀られています。右側は梵天、左側は帝釈天で、どちらも、インドの土着の神様が仏教に取り入れられたものです。

この2体はお顔が美しいことで知られ、特に左側の帝釈天を、「京都一のイケメン仏像」と呼ぶ人もいます。

(今回の特別展 『国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅』に、大日如来坐像、金剛波羅蜜菩薩坐像、不動明王坐像、梵天坐像は出品されません。)

 

これら21体の立体曼荼羅のうち、15体もの仏像が、2019年3月26日から東京国立博物館で開催される特別展「国宝 東寺-空海と立体曼荼羅」に出展されます。はるばる京都に行かずとも立体曼荼羅の仏様に会え、しかも、お寺では見られない背後の様子も鑑賞できる素晴らしい特別展です。

 

 

次回は、より通好みのスポットをご案内します。

 

 

特別展 『国宝 東寺空海と仏像曼荼羅』

開催場所 : 東京国立博物館 平成館(上野公園)

開催期間 : 3月26日(火)~6月2日(日)

開館時間 : 9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)

※会期中の金・土曜は21:00まで

休館日:月曜、5/7(火)

(ただし4/1(月)[東寺展会場のみ開館]、4/29(月・祝)、5/6(月・休)は開館)

https://toji2019.jp

 

 

5周年記念企画「黒田知永子さん×吉田さらささん スペシャルトークショー@東寺展」に150組300名様をご招待します!
イベント詳細や応募方法は、こちらへ。

 

 

撮影/藤澤由加〈MyAge取材分〉 撮影協力/東寺

 

吉田さらさ

公式サイト

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