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“NISA”と“つみたてNISA”、どっちがいいの? 投資初心者の52歳パート主婦が老後資金のため選んだのは……

安田まゆみ

安田まゆみ

東京・銀座の「元気が出るお金の相談所」所長。FP歴24年目。これまでの相談件数は7000件以上、講演回数は1千回を超える。一男一女を育てあげた後、現在は義母と実母の介護に直面中。 お得な情報はより多くの人に知らせてあげたい!というおせっかいな性格。 モットーは「最後まで自分らしく生き抜く」。

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こんにちは、安田まゆみです。

お待たせしました!

今回は“NISA”と“つみたてNISA”についてご説明します。

**************************

ちょうど今から1年前の猛暑の中、私の相談所にいらした52歳のパート主婦U子さん。

家族は夫(49歳・会社員)と長女(社会人)、次女(大学4年生)の4人家族です。

 

ご相談内容ははっきりしたものでした。

「“NISA”を始めたいと思っているのですが、もうひとつ“つみたてNISA”っていうのもありますよね。

どちらが私に合った投資なのかを知りたいんです」

 

U子さんはふたりの娘の進学資金を支えるためにこの10年間、週5日パートで働いてきました。

パートで得てきた収入は月8万円。

そのうち6万円を家計に入れ、残り2万円は自分のお小遣いとして使ってきました。

ところが最近は車で1時間ほどのところにある実家の母親の具合が悪く、病院通いに付き添ったり日常の買い物の代行など実家の家事をサポートせざるを得なくなってしまったそう。

「おまけに母ったら入れ歯の調子も悪くなってきたというので歯医者にも連れていかないといけないんです。

もう今まで通りのシフトでは働けないと思うのでパートを減らすつもりですが、その分収入は減ってしまいます……」

 

次女が大学を卒業してもそのままのペースでパートを続け、収入は老後資金の積み立てにまわそうと計画していたU子さん。

でも母親のサポートのためパートを減らせば収入が減ってしまうので、老後資金の計画も今まで考えていたようにはいかなくなってきてしまいました。

 

その分何とか効率よく老後資金を貯める方法は?と考えあぐねていたとき、母親の付き添いで行った病院の待合室で何となく手にとった雑誌。

 

そこに載っていた金融機関の広告で「資産運用」「将来の備え」「NISA」「つみたてNISA」という文字を見たU子さん。

頭にふと浮かんだのは……

 

「これって私にもできるのかな?」

 

とはいえ投資をしたことの無いU子さんですので、何をどう始めたらよいのかわかりません。

 

そもそも「NISA」と「つみたてNISA」の違いって何?

それに「NISA」と「つみたてNISA」、どちらが自分に合った投資なの?

と悩みだし、私のところに相談に来たというわけです。

 

 

ではまず「NISA」と「つみたてNISA」の比較表をお見せしましょう。

「NISA」は毎年120万円ずつ5年間制度の利用が可能ですので、運用できる最大額は、600万円。

「つみたてNISA」は、毎年40万円ずつ20年(2037年まで)積み立てることができますので、最大で800万円利用できます。

 

また

いつでも売却可能

特定口座や一般口座との損益通算ができない

※≪損益通算とは≫

運用で、利益が出たならば、それに対して税金を払わなくてはなりません。
一般的な資産運用では、同じ年内に出た利益と損失を足して、計算しても良いというルールがあります。
たとえばAという投資信託の売却ででた利益が30万円。
同じ年にBという投資信託の売却で出た損失が20万円。
AとBの損益を通算するとプラスは10万円。
税金は、その10万円の分だけ払えばよいということになっています。

でもNISAとつみたてNISAの仕組みは税制が優遇されて利益に税金がかかりませんので、それ以外の投資での利益や損失と合算することはできない、というルールになっています。

運用益や配当金が全額非課税

 

という共通項もあるので投資をしたい人にとって、利用しないのはもったいないといえる制度です。

 

では「NISA」と「つみたてNISA」それぞれがどういう人におすすめかといいますと……

「NISA」の活用をおすすめするのは

まとまったお金があり、それを投資したい人

株式投資をしていきたいという人

 

●「つみたてNISA」の活用をおすすめするのは

コツコツと毎月少額ずつ(1万円ずつくらい)なら投資していきたい人

 

さぁ、あなたはどちらに当てはまりますか?

ちなみに相談者のU子さんは……

「先生、私、両方チャレンジしてみたいです。

だっていつでも売却可能で運用益や配当金が全額非課税なんでしょ」

とのこと。

 

でも残念ながら、この制度は一人につきどちらか一つしか選べないのです。

 

そうお伝えすると大変残念がったU子さんですが、「NISA」と「つみたてNISA」のどちらを始めるにしても大切なのは家計から投資に回せるお金はいくらなのかを算出することです。これは「NISA」や「つみたてNISA」以外を利用して投資する場合も同じです。

 

「下の娘が大学を卒業したら、パートを減らしたとしても毎月3万円は貯金できると思うのでそれを投資にまわしていこうかしら」

とさっそく具体的な投資額を口にしたU子さんですが……

 

ちょっと待って!

 

 

実は

貯金にまわせる額=投資の額ではない

のです。

「エ?」

怪訝な顔をしているU子さん。

 

「たしかに「NISA」と「つみたてNISA」はいつでも途中解約ができるといいました。

が、急に資金が必要になった場合(たとえば家計の大黒柱である夫が病気で長期療養しなければならなくなった、など)解約しようとしても運用の状況次第では解約は避けた方がいいことがあります。

 

それは元本割れしているときです。

 

必要資金を手に入れるためとはいえ、元本割れしているときに解約してはもったいないですよね。

このような事態も想定し、当面使わない資金からいくらを投資に回せるか決めるのが大事なんですよ」

 

「確かに今解約したら損っていうときに解約するのはヤダなぁ」

とぼやくU子さん。

 

「ではさっそくいくら投資に回せるか計算してみましょう。

その方法は

①家計の資産状況を出す

②今後の使う目的が明確なお金の支出予定を書きだす

※お子さんがまだ小さいご家庭で「子どもの進学費用」を貯蓄している場合は、進学費用は通常の貯蓄とは別枠と考えて確保しておきましょう。

あ、そうそう0歳~19歳向けのジュニアNISAというのもあるんですよ。

それについてはいつかご紹介できればと思います。

③急に資金が必要になった場合(家計の大黒柱である夫が病気で長期に療養するようなことになった、など)に取り崩さなくてはならない資金として「1年分の手取り年収」を計算する

 

 

家計の資産状況()から「貯蓄してある子どもの進学費用()」、「今後使う目的が明確なお金の支出予定()」、「手取りの1年分の年収()」を引いた残りが余裕資金となります。

そしてその余裕資金の一部(投資初心者は余裕資金の20~30%くらいから)が投資に使ってもよいお金となるのです。

 

投資に使ってもよいお金が算出できたら

・一度にまとめて投資するのか

それとも

・コツコツ分割して投資していくのか

投資の仕方を考えていきます。

 

以上の計算をしたところ、U子さんのご家庭には一度に投資に回せるほどのまとまった額の余裕資金はありませんでしたので「NISA」ではなく、毎月のパート収入から投資ができる「つみたてNISA」を利用し、老後資金を貯めることにしました。

 

U子さんのつみたて計画をご紹介しますね。

●投資期間/65歳までの10年間

●投資額/今年は月1万円。来年の4月以降は次女の学費がなくなるので3万円にアップ

●10年間の総投資額/(1万円×6か月)+(3万円×9.5年×12か月)=348万円

※ご相談に見えられた日(7月末)から口座開設までに丸1か月かかると想定。

その場合運用開始は10月からとし翌年4月までの投資期間を6カ月間として1年目分は計算。

●目標運用益 10年で400万円
※年3%の運用利回りで計算

 

「超低金利のこのご時世、これだったらただ貯金しているよりは資産を増やせるかも!」

と明るい表情になったU子さん。

 

さっそく投資する商品も選びました。

 

選んだのは

「せっかく投資をするのであれば日本だけではなく、世界で頑張っている企業に投資をしたいです」

と世界的に活躍している先進国の会社の株式に投資するインデックス(指数連動)型の投資信託。

この積み立て投資を続けるにあたり、私が注意事項としてU子さんにお伝えしたのは

●途中でやめないこと。

●運用成績が途中で悪くなっても10年間は続けてみること

これだけです。

 

株価は上がり下がりするもの。

多くの企業の株に分散している投資信託も永遠に下がり続けることはないわけで、どこかでは上がっていくことになります。

投資を始めたばかりの頃下がり続ける投資信託に不安になって、途中で投資をやめたくなったり投資信託の商品を変えたくなる気持ちもわかりますが、続けないとかえって損をすることがあるからです。

 

また毎月一定の額を積み立て投資する場合、

価格が高い時は買える口数が少なく、価格が安い時は買える口数が多くなる

ので結果、高値づかみすることが少なくなり平均すると購入価格を下げることができます(購入価格の平準化。この投資法を「ドルコスト平均法」といいます)。

 

ドルコスト平均法のメリットは

●大きく値下がりしたとき定額で積み立てているのでたくさんの口数を買い付けることができ、値上がりしたときにはそれほど値上がり率が大きくなくても元本を回復できること

です。

値下がり相場のあと以前の水準まで値段が戻る頃には、元本を上回る収益を得ることができます。

 

つまり

積み立て投資が有利になるのは〝上昇している相場〟よりも〝下降している相場〟です。

投資期間を10年と決めたのであれば、特別な事情がない限り10年間は続けたほうが良いのです。

 

「つみたてNISA」は「長期運用」「積み立て投資」「(時間や投資先の)分散投資」の3つが図られた仕組みで、投資対象は金融庁が定めたガイドラインに合致した投資信託、つまり金融庁の厳しい絞り込みに残った商品だけになります。

とはいえ金融庁が元本を保障しているわけではありません。

投資期間によっては元本を割る可能性があるというリスクは、投資を始めるときに理解しておきましょう。

 

ここまできくとすっきりした表情でお帰りになったU子さんでしたが、その数か月後、再び連絡がありました。

 

「先生、今度は夫が投資を始めたいので相談に伺いたいって言っています」

 

U子さんの夫が、独身で亡くなった叔父さんから200万円の遺産をもらったのだそう。

そこで私のところでNISAの説明もきいていたU子さんが

「まとまったお金(今回の遺産の200万円のこと)がある人はNISAがおすすめらしいよ」

と夫に話したところ

「へぇ、だったら一度具体的な投資先の相談をしてみたいな」となったそうです。

 

 

その結果U子さんの夫が選んだのはバランス型の投資信託。

NISAは非課税期間が5年なので安定した投資を第一に考えたのです。

 

バランス型とは、日本株、外国株、日本債券、外国債券などを組み合わせて投資するタイプのこと。

これ1つを買うだけで多くのジャンルに投資できる便利さがメリットです。

株と債券は反対の値動きをする性質がありますので、組み合わせることで全体の値動きを安定させる効果があります。

 

 

妻はインデックス(指数連動)型の投資信託を選んで「つみたてNISA」で積極運用。

夫はバランス型ファンドを選んで「NISA」で安定的に運用。

夫婦でこういった投資の分散をするのもありなんですよ。

 

最後に。

OurAge読者のみなさんはもちろんお分かりだと思いますが、投資とリスクは背中合わせです。

「リスクのない投資」なんてものは残念ながらありません。

 

ですからせっかく投資をするのであれば、税制面で有利な制度(つみたてNISAやNISA)を利用しない手はないのです。

 

さぁ、あなたの場合はどちらを検討してみますか。

 

~さらに後日談~

こうして夫婦で投資を始めたU子さんですが、しばらく経ってまたご連絡をいただきました。

 

「先生、夫が会社でiDeCoという投資の説明をきいてきたんです。

NISA同様、税制面で有利な制度みたいだって夫はいうのですけど、これってすでにNISAをやっている人でもできるんでしょうか?」

 

確かに〝税制面で有利〟ときけば、なんかやらないともったいないのかなって思えてきますよね。

答えは……

NISAやつみたてNISAをやっている人でもiDeCoはできます。

 

けれど私がU子さんに合わせてお伝えしたのは……

 

「前もお話ししましたが、投資とリスクは背中合わせです。

〝リスクのない投資〟なんてものはありません。

iDeCoもNISAも投資であるからにはリスクがあります。
iDeCoは60歳まで引き出すことはできませんし、NISAやつみたてNISAも解約したいと思ったとき元本が割れていたりするかもしれません。

お金が必要というときに貯金を下ろすような感覚で解約したりすることはできませんよ

いざというときに解約しなくてもすむよう、十分な預貯金を貯めておくことが先決です。

あくまで〝余裕資金〟での投資を心がけましょう」

**************************

●明るく気さくな人柄でギリコもすっかりファンになってしまった安田さん。

安田さんが所長の「元気が出るお金の相談所」↓

http://www.my-fp.net/voice/2016/03/voice-573.html

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