なんとなく疲れている人、必読! 元気と爽快感をもらえる“山女子”小説

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出版社勤務を経て、ライターに。『MORE』『COSMOPOLITAN』『MAQUIA』でブックスコラムを担当したのち、現在『eclat』『青春と読書』などで書評や著者インタビューを手がける。

日々読んだり書いたりしているうえ、趣味というか習い事がヨガとピアノ。考えるまでもなくインドア派の私ですが、それだけにアウトドア派への憧れはかなり強いものがあります。

 

 

「今のこの私では無理だけど、生まれ変わったら山を歩いたり登ったりして、すばらしい景色を眺めてみたい!」
と、よく思う。
その昔、家族のひとりが登山をやっていたのですが、帰宅したとき疲労感とともに「すごいものを見てきたぞ」オーラが出ていたことも、憧れる理由のひとつかもしれません。

 

 

だから北村薫さんの『八月の六日間』が“働く山女子”小説だと知ったとき、すぐさま「読まなきゃ!」と思ったのですが、さらに後押ししたのが取材でお会いした書店員さんの「これ、すごくいいですよ……」という言葉。

 

 

「すごくいいですよ……」って抽象的な言葉ですが、読み終えたとき彼女の「……」部分の意味がわかった気がしました。
多分、心に残る部分は人それぞれ。いつの間にか自分の人生を重ね合わせて読んでしまうので、何とも言えない余韻が残るのです。

書評_photo


『八月の六日間』
北村薫 角川書店 \1500(税別)
現在は角川文庫 ¥640(税別)
仕事でも私生活でも、疲れることが多いアラフォーという年齢。“わたし”もそんな時期を迎えていたが、山と出会い、大自然に心を開くようになったことで、何かが少しずつ変わっていく。元恋人と意外な出会い方をする後半に注目!

 

 

『八月の六日間』は連作短編集。表題作のほか、「九月の五日間」、「二月の三日間」、「十月の五日間」、「五月の三日間」が収録されていて、その名の通りの山登りの行程が描かれています。

 

 

主人公は40歳目前の文芸誌副編集長“わたし”。誠実に仕事をしてきたけれど、不器用な性格でもあるので、公私ともに(どちらかというと心が)ややお疲れ気味でした。
そんなとき、同僚の藤原ちゃんから「明日。山、行きませんか」と誘われます。初心者もハイキング気分で登れるコースで、季節は秋。

 

 

そこで紅葉のアーチを見た“わたし”は
「空から降って来るのは、素朴なのに荘厳さを感じさせる光。色がそのまま音楽だった。めったに、つんとはしない、させない涙腺が、何だか緩みそうになった。」

 

 

初めて行った山でそこが心を開いてくれる場所と知った“わたし”はトレーニングを積み、休暇に登山をするようになります。
基本的にはひとりで行くのも“そのほうがより心が開くと感じるから”でした。

 

 

彼女が目指したのは槍ヶ岳や常念岳ですが、雪の裏磐梯を歩くツアーに参加したことも。
ひとりにしろツアーにしろ、黙々と足を運ぶ時間がほとんどです。絶景に見入ることもあるけれど、ずっと気分よく進めるとは限りません。

 

 

というか、働く女子だけにぎりぎりまで仕事をしていることも多く、ときには睡眠不足を感じながら歩き始めることもあります。
最初は調子がいいと思っていても、途中から「あれ?」みたいなこともあります。

 

 

だから彼女の胸の内はほとんどの場合、期待と不安がないまぜ。
そんななか時折頭をよぎるのは高校の演劇部での苦い経験やかつての恋人のこと、少し前に亡くなった親しい友のことなどでした。

 

第30回
なんとなく疲れている人、必読! 元気と爽快感をもらえる“山女子”小説

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