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ニューヨーク、デモに連帯する街と、黒人差別の真実

杉本佳子

杉本佳子

杉本佳子
ファッションジャーナリスト兼美容食研究家
1988年よりニューヨーク在住。1989年よりファッションジャーナリストとしてファッション、ファッションビジネス、小売りビジネスについて執筆。2013年より美容食研究家としても活動し始め、ブログ「YOSHIKOlicious Beauty」とインスタグラムを通じて、美肌効果の高い食材をなるべく使い、美味しくて見た目がお洒落な料理紹介している。見た目がきれいだと気分が上がり、食べて美味しいので嬉しくなり、美容と健康にいいのでさらにハッピーになる「3回ハッピーになる料理」がモットー。ファーマーズマーケットなどで買う生命力のあるオーガニックの食材をなるべく使う。食材の意外な組み合わせでも定評がある。

月1回、オンラインのクッキングクラスを開催中。日本からでも参加しやすい時間帯に日本語で行われている。詳細お問い合わせや、参加希望は下記メールまでご連絡を!

yoshiko@yoshikoliciousbeauty.com

 

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コロナのあとに来た衝撃的なデモに、寄りそうNYの街

 

ニューヨーク市は8日、やっと商業活動再開の第一段階を迎えました。最初のコロナ感染者が見つかってから、ちょうど100日目!

ほっと胸をなでおろしたのは私だけではなく、おそらく多くのニューヨーカーが、希望に胸を明るくしたことと思います。

しかしその日は、ミネアポリスでアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド氏が警官に殺された5月25日から、15日たった日でもありました。

 

発端になったのは、ニセ札を使おうとした容疑で、武器を持たない黒人のジョージ・フロイド氏が捕まえられ、手錠をかけられたあと、白人警官に8分以上も首を膝で圧迫され、「息ができない」と必死に訴えたにもかかわらず、そのまま殺されたという事件。

この事件に対する抗議の声から沸き起こった「ブラック・ライヴズ・マター(=「黒人の命だって大事だ!」)」運動は、またたく間に全米に広がり、5月28日からはニューヨーク市内のあちこちで、抗議活動が起こりました。しかし1日の深夜、抗議に便乗した大規模な略奪が発生し、次の日から夜間外出禁止令が発令される事態に。多くの店がショーウィンドウに板を打ち付けて防衛するようになり、今もその状態は続いています。

 

世界一とも言われる洗練されたニューヨークのブティック街が無骨なベニヤ板に覆われた姿には、いやおうなく不安をかきたてられます。でもそこは、転んでもただで起きないニューヨーカー。翌週末にはソーホーの一部の店の板に、地元のアーティストたちが思い思いに絵を描きました。かつて、アートギャラリーが立ち並んだソーホーならではの粋なアイデアです! 略奪にあって心が折れてしまったお店の人たちも、こんなアートに迎えられたらちょっとは心が和み、やり直そう!と元気が出るかもしれません。

 

アレキサンダーワンの直営店。板を打ち付けてあっても剥がされて商品を略奪されてしまった店もありますが、ここは無事だったようです。無事だったと知ると本当にほっとします

  

 
希望をイメージするものが多いそれらのアートの中に、とても凝った一枚を見かけました。大きく描かれた女性の体内には、「撃たないで! 首を絞めないで! 絞め殺さないで!」といった悲痛な言葉がびっしり書かれています。

 

アフリカンモチーフを感じる筆致の、豊かな曲線で描かれた女性の姿。もしも夫や息子が警察官の標的になってしまったら、という怒りと恐怖が込められていると感じました

 
ニューヨークを含む全米の抗議集会やデモでは、「It’s my daddy next」(次は僕のパパ)というプラカードを手にした黒人の子供の姿も見かけられます。もしも偽札を使おうとした人が白人だったら、あのように路上で残忍に殺されることはなかったでしょう。過去にも、多くの黒人男性が警察官による過剰な暴力で命を奪われることが何度も繰り返されてきています。「Enough!」(もうたくさんだ!)というプラカードも目立ちます。

 

 

もうひとつ、さすがニューヨーク!と思える動きがあります。それは、ニューヨークにあるあちこちの劇場が、「BLM(ブラック・ライブズ・マター)」のデモ隊に協力し、トイレやWi-Fiなどを提供しはじめたことです。

NYのすべての劇場は、自宅待機の行政命令が出てからずっと閉鎖中。再開は今のところ、9月になりそうです。今はデパートや美術館も開いていませんし、レストランの中も入れませんから、出かけた時にトイレをどうするか、結構深刻です。特に何時間も集会やデモに参加している人たちは、トイレに行けなかったらとても不便ですよね。そこで、劇場がBLM運動のためにできること、ということで始まったのが「openyourlobby」(オープン・ユア・ロビー)です。インスタグラムやツイッターでこの言葉で検索すると、どこの劇場のトイレが使えるかわかります。

イーストビレッジにあるザ・パブリック・シアターでは、お水とスナックも準備して、デモ隊が来たらいつでも渡せるように待機していました。路上に立てた看板でも、運動への支援を表明しています。イーストビレッジにある別のとても小さな劇場もデモ隊のためにお水とスナックを用意し、トイレを使えるようにしていました。

 

非営利で運営される劇場として長年文化に貢献してきたザ・パブリック・シアター。アーティストらによる民主的な運営を続ける同劇場は、ソーシャルな問題提起にも敏感

略奪にあった店までが抗議運動に同調し、熱く支持する理由とは

 

怒りと悲しみを発端に、アメリカ全土から沸き起こったBLM運動。今は、政治家からファッション業界、ナショナルフットボール協会を含むスポーツ界など、さまざまな人たちや団体がこの運動を支持しています。なぜ、経済活動再開目前のニューヨークで、これほどの略奪にあいながらも、寛大な態度をとれるのか。これだけ多くの人たちを動かした背景には、いったい何があるのでしょうか。

 

1つは、むしろ、異常な略奪行為があったことが「BLM運動」への支持を増やすほうに作用していると思います。

略奪が起きた当初は、「デモ隊の一部が暴徒化した」と思われていました。報道などでも最初はそういわれましたが、次第にデモをしている人たちと略奪をしている人たちは違うことがみえてきました。組織化されたプロの窃盗集団の存在がわかっていますが、その他に、抗議をおとしめようとする政治的な意図をもったグループもいるのかもしれないとも言われています。

いずれにしても、あまりにも酷い破壊行為と略奪をしている輩はデモ隊とは別とわかってくると、「こうした動きのせいでBLM運動の正当な主張が妨害されることがあってはならない」という気運が生まれたのだと思います。

 

略奪の被害にあった、「サタデーズNYC」や「3.1フィリップリム」などの人気店が、商品のほとんどを奪われながらも、インスタグラムで寛大な態度を示し、BLM運動へ寄付を呼びかけたことも注目に値するでしょう。

「サタデーズNYC」は、略奪が記録された動画とともに、「商品は差し替え可能だが、黒人の命はそうはいかない」で始まるメッセージを発表。「黒人の兄弟、姉妹、友人たちがもううんざりしていることをわかっている」と自省し、「昨晩起きたことを怒っていない」、とまで書きました。そして文末で「次の2つの人権擁護団体に寄付したら自分たちをタグ付けしてほしい、そうしたらその寄付と同じ額を最高2万ドルまで寄付する。みんなで4万ドル寄付しよう」と呼びかけました。すると、その目標額は24時間以内に達成されたとのことです。

 

合わせて4万ドルの寄付達成の報告と感謝を示した「サタデーズNYC」のインスタグラム(一部)。寄付先の人権団体はNAACP(全米黒人地位向上協会とACLU(アメリカ自由人権協会)だとある

 

もうひとつは、もっとずっと根の深い差別を、見つめなおそうという視線の広がりです。

2016年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画「13th(憲法修正第13条)」を見ると、アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の扱われ方がよくわかります。

18世紀の、奴隷制があった時代から今まで、差別に満ちた現状は、根本的に変わっていないということが。

映画には、奴隷制度が廃止された後も黒人を都合よくこき使いたかった白人が、黒人を小さな罪で逮捕して刑務所に入れ、安い労働力として使う仕組みをつくり、同時に「黒人は危険」「排除すべき」というイメージがつくられていったことが描かれています。

 

私の身近な友だちにも、アフリカ系アメリカ人と結婚した人たちがいます。今回の事件があって初めて彼女たちから聞いて、「息子たちは子どものころから、白人の友達といても自分だけ警察に呼び止められる、成長するにつれてそれがエスカレートしていく、という体験をしてきている」「夫は警察に目をつけられないように、出かける時は必ずきちんとした格好で出かける」ということを知りました。

 

アフリカ系アメリカ人が抱えるこうした「生きづらさ」を、これまで知らなかった日本人は、私を含め多いようです。でも、アメリカで生まれ育った人たちはそれをわかっていて、だから「もうこういう構造的差別はなくさないといけない。これ以上黒人に対する警察の過剰な暴力を見過ごすことはできない」と強く思い、BLM運動を支持していこうとしているのだと思います。

今、いろいろな企業や団体が、アフリカ系アメリカ人がよりよい仕事につけるようにアドバイスする仕組みをつくろうとしています。それも「構造的差別」をなくそうという試みのひとつでしょう。

 

だから、「BLM」は「黒人の命だって大事だ!」という意味なのです。これを日本では「黒人の命“も”大事」と訳したりしがちです。また、これに反論したり、対象を拡げようと「”どんな命だって”大事」と混ぜっ返す動きも各地であります。しかし、そうした表現をしてしまうと、これまでずっと命を顧みられることのなかった黒人への構造的差別の問題が、なおざりにされてしまいます。

 

多くの企業や団体がBLMをサポートするようになっているのは、デモに参加している人たちに、人種を問わずミレニアルズ世代(20代~30代)が多いことも関係しているでしょう。アメリカでビジネスをする場合、ミレニアルズ世代をひきつけることは非常に重要です。BLMがこれだけ多くの人たちを動かしている背景には、ビジネス面での思惑もあると思います。そういう時代であることを、世界の中にある日本も、意識しておきたいですね。

 

コロナに覆われた3月以降、いろいろな試練に耐えてきたニューヨークですが、少しずつ前に進んでいることがわかります。

4月のニューヨークの模様をお伝えした記事の冒頭に、地下鉄ホームに表示されたサインの写真を使いましたが、その時は

「エッセンシャルワーカーじゃない?だったら何故ここでこれを読んでいるの?家に帰りなさい」

というサインでした。

 

4月、感染者が次々と出る中で、社会を支える「エッセンシャルワーカー」以外は公共交通機関は使わないように求めるサインが駅に掲示されていた

 

今は、このサインです。

「鼻と口を覆っていますか?」

という質問で始まり、フェイスカバーをすることを求めています。

交通機関を利用するには「鼻と口」をきちんと覆うように求めるサイン。感染拡大が収まっても、「ニューノーマル」の日常が続きます

 

鼻と口を覆う「正しい」方法もわかりやすく表示されています。ニューヨーカーはコロナが広まるまでマスクをする習慣がまったくなかったので致し方ないのですが、口だけ覆っていて鼻が出ている人が多いのです。この表示を見て、マスクを正しくつける人が増えてくれるといいな、と思っています。

 

私たちはみんなそれぞれ、知らなかったことがたくさんあります。新たに学んだことを、単なる知識ではなく、日々の考え方や行動に取り入れていくことは一朝一夕にできることではありません。でも、まずは知り、学び、自覚し、日々の思考と行動に根付かせていく努力を続けることが、より多くの人々が生きやすい世界につながっていくと信じています。

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