「生きる蔵」から生まれる逸品醤油

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フードエディター&ライター

世界のレストランのトレンド取材から、毎日のごはんレシピの単行本編集まで、幅広く食を取材し続けて25年。

食べ歩く日々が続くので、家での食事はきわめてナチュラルでヘルシー。健康食への関心も深い。
朝日新聞のコラム「ジョシ目線」をはじめ、集英社「エクラ」などの女性誌や男性誌をメインに執筆。
手がけた単行本は「やさい歳時記」長尾智子著(集英社)、「芸術家の食卓」林綾野著(講談社)、

「出張料理人が教える本当に使えるおもてなし本」マカロン由香著(講談社)など

 

 「生きる蔵」から生まれる逸品醤油

 

こんにちは。北村美香です。

 

そろそろ夏休みシーズンですね。夏の旅行計画は進んでいますか。旅の楽しみのひとつは、自分へのおみやげですね。私はいつも、土地の調味料を買ってきます。

先日、小豆島へ取材に行きました。温暖少雨、ヨーロッパの地中海によく似た気候を生かした小豆島。別名「醤の島」と呼ばれるほど、醤油造りが盛んです。そこで、素晴らしい醤油に出合いました 。

醤油造りが盛んな小豆島

小豆島は、古事記では「あずきしま」として登場するほど古い歴史のある島。小麦と塩に恵まれ、醤油造りが盛んになった。

 

島の南東部の住宅街に、150年を経た蔵があります。「ヤマロク醤油」という看板を掲げ、5代目山本康夫さんが蔵を守り続けています。蔵には、醤油を造ってくれる乳酸菌やら酵母菌やらが約110種類も棲んでいるそう。「醤油を造るのは僕じゃなくて菌なのです。何代もかけて育ててきた菌と蔵を守るのが僕の仕事です」と5代目主人の山本康夫さん。

「ヤマロク醤油」という看板

山本家に記録されているのは150年ほど前のことから。たぶん、200年ほど前からこの蔵はあったのではないかと、山本さん。

 

こちらでは、再仕込み醤油「鶴醤」と丹波黒豆を原料とした「菊醤」の2種類の醤油を造っています。どちらも、小麦と大豆と塩だけを手間暇かけて、じっくり仕込んだ深みのある味わい。

速醸技術で造られた醤油がたくさん出回っている現在、冬の寒仕込みから始まり、夏を2回越えて醸造された「本醸造醤油」は、希少な存在です。

 

「鶴醤」は、その本醸造醤油を再度、同じ材料と時間をかけて醸造した再仕込み醤油。約4年間も蔵で育てられ、まろやかで深いコクと旨みが存分に感じられます。

「菊醤」は、あっさりしたキレのある旨みが特長です。実は私、もともとこの醤油のファンだったのですが、煮ものや炒めものの仕上がりが、すっきり軽やかに仕上がるのがお気に入りの理由です。この味の秘密はこだわりの原料。旨みの強い大粒の丹波黒豆と香川県産小麦「讃岐の夢2000」に、メキシコ産天日塩を使っています。

北村美香おすすめ逸品醤油「鶴醤」と「菊醤」

左が再仕込み醤油「鶴醤」。右が丹波黒豆を使った「菊醤」。各500ml\1,080。問い寄せもできる。

 

さて、この醤油のおいしさは、原料や手間暇かけている以外に、蔵と木桶の存在に担うところが大きいのです。蔵に入れば、暗がりに浮かび上がってくる天井裏に、壁に、柱に、菌がびっしり。

醤油蔵

蔵から事務所を見る。壁や柱にも菌がいます。まさに「生きる蔵」。

醤油蔵の木桶

木桶にも菌がびっしり。代々「木桶は決して水洗いしてはいけない」と伝えられている。乾燥させることと塩分で雑菌を遮断する方法なのだそう。

 

木桶職人が激減し、材料となる木材も減ってきていることを危惧したご主人が、2009年に新しい木桶を発注しました。職人さんに「戦後初の発注です」と言われたとか。でも、新桶を作っただけでは、桶が壊れてなくなってしまえば、それで終わりになってしまう。技を継承しなければ、次世代に伝統の醤油造りを伝えられない。こう考えた山本さんは、自ら桶職人に弟子入り。木桶職人としてもこれから活動することを表明しています。

「ヤマロク醤油」5代目主人の山本康夫

奈良の吉野杉で造った自作の木桶の前で山本さん。「これから新桶に菌がついて育っていくのを見守るのが楽しみです。新しい木桶で造った醤油は2017年の秋にでき上がります」

 

さて、蔵の木桶でもろみを熟成しているところを見せていただきました。プツプツ、シュッシュッ。何か音が聞こえるではありませんか。「もろみが発酵している音です。人が蔵に入ると、菌の活動が活発になるのか、音がするんですよ」。、まさに「もろみの声」です。菌が生きている証拠です。

醤油蔵で木桶のもろみをかき混ぜる

蔵の中では、発酵を助けるために、手前の長い棒で木桶のもろみをかき混ぜる作業を行う。夏は発酵による温度も加わり、灼熱の暑さ。代々「地獄のもろみ混ぜ」として伝わってきた。ぶくぶくと発酵しているもろみが桶からあふれんばかり。「声」も盛んに聞こえる。

 

発酵食品なので、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、酵素などの栄養成分も豊富。抗酸化作用や血液サラサラ効果、発ガン抑制効果などの効果も知られています。この効用の恩恵を受けるためにも、自然の原料でじっくり発酵させた醤油を選びましょう。

 

7回目の酢のご紹介のときにも申し上げましたが、「新鮮な食材と上質な調味料が料理上手への近道」です。自然の旨みを湛えた醤油は、これだけで味が決まるほど、塩味や旨み、甘み成分のバランスがとれた調味料です。つい多用してしまうと、どの料理も醤油味になってしまいますから、気をつけて! 私は、味を決めるために使うのではなく、独特の旨みや香りをつけるために使っています。「さしすせそ」の「せ」が醤油(せうゆ)です。つまり、砂糖も塩も入れて味が決まったところで風味づけのために入れなさいという先人の知恵です。

だからこそ、ドボドボたくさん使うのではなく、上質なものを少し。これで充分、料理の味がランクアップします。

 

夏の旅で、土地の調味料をみつけてみてはいかがでしょう。旅の思い出と共に、おいしさもぐんとアップすること、間違いなしです。

 

 

ヤマロク醤油
香川県小豆郡小豆島安田甲1607
☎0879・82・0666
FAX0879・82・1293
http://yama-roku.net/

 

*小豆島の美味しいものを探す旅特集は、現在発売中の「エクラ」8月号で、ぜひご覧ください。小豆島の醤油蔵やオリーブ畑、おいしい宿とレストラン、手土産など、島旅の魅力満載です。旅の計画中の方にもおすすめ。

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第8回
「生きる蔵」から生まれる逸品醤油

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