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全米一予約が取れないレストランのシェフ、アリス・ウォータースさんが起こす 次なる革命とは?

小野アムスデン道子

小野アムスデン道子

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、旅の楽しみ方を中心としたフリーランス・ライターへ。
旅と食や文化、アートなどライフスタイルについての執筆や編集、翻訳多数。
日本旅行作家協会会員。
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こんにちは小野アムスデン道子です。全米で最も予約が取れないレストランと言われる、カリフォルニアのバークレーにあるレストラン「シェ・パニーズ Chez Panisse」。シェフは、アメリカにおけるオーガニックやスローフードの先駆者であるアリス・ウォータースさん。60年代にカリフォルニア大学(UC)バークレー校で学んだフランス文化が、シェフになるきっかけだったというアリスさんは、気骨あるOurAge世代の先輩でした。

撮影/倉本哲

 

カリフォルニア州バークレーは、名門カルフォルニア大学があって進歩的な土地柄で知られるところ。食生活への意識も高く、肥満など健康に影響を与える飲食品に課税する税金fat taxの一環として、炭酸飲料に課税する「ソーダ税」を2015年1月1日に、アメリカのどこより早く導入しています。

 

そんなバークレーで、地元のオーガニック食材を使ったカリフォルニア・キュイジーヌのレストラン「シェ・パニーズ」を1971年にオープンしたアリス・ウォータースさん。ディナーは、週替わりのコース料理1種類のみ(その日に新鮮で最適な食材で料理を作るから)という姿勢で臨み、料理界のアカデミー賞と言われるジェームズ・ビアード賞を女性として初めて受賞している超有名シェフです。1階のレストランは、最も予約が取りにくいと言われるほどの人気店。

 

私たちが2階のカフェでいただいたランチの食材は、サステイナブルな(持続可能な)方針にもとづいて収穫されたもので、食器もカリフォルニアのものとメニューに書かれていました。

 

新鮮なローカルのキングサーモンにしゃきっとした味の濃い野菜の付け合わせで、素材のよさを味わえました。

 

 

アメリカにおけるオーガニックやスローフードといった食の世界の革命をリードしてきたアリスさんが、今、未来をになう子供たちのために注力しているのが「エディブル・スクールヤード・プロジェクト The Edible Schoolyard Project」。

 

“学校菜園プロジェクト”って?

幸運にも、アリスさんが1995年に創設した学校菜園を見学し、プロジェクトへの思いを直接聞く機会に恵まれました。

 

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「エディブル・スクールヤード」は、「シェ・パニーズ」の近所にある公立中学校マーティン・ルーサー・キング・ジュニア・ミドルスクールの校庭にアリスさんが1995年に創設した学校菜園です。

当時、「シェ・パニーズ」に通う途中にある荒れた学校の様子が気になっていたアリスさん。校長に学校に招かれる機会があり、放置された駐車場と食堂を見て、「ここに子供たちと一緒に畑とキッチンを作りましょう」と提案。それが「エディブル・スクールヤード」の始まりでした。

 

広さは1エーカー(約4,000㎡)もあり、ちょっと学校の片隅で菜園を作っているのとは規模が違います。そして素晴らしいのは、いろんな農作物を作っているというだけではなく、理科や算数の授業はスクールヤードで、文系の授業はキッチンで行われるようになり、この菜園は生徒同志の語り合いの場にもなっていったことでした。

次のステップとして、ファストフードが全盛で学校給食も加工品を温めるだけといった状況だったのを一新。学校菜園はじめローカルのオーガニックな素材を使っての学校給食を、モデル校として始めたのでした。

 

2005年から、このバークレーのモデルを他の土地や国、公立校だけではなく私立校も、放課後やサマーキャンプなどにまで広めるべく、トレーニングもスタート。2012年にはノウハウを共有できるネットワークを構築しました。今ではなんと世界中で5500ものプログラムがこのネットワークを使用しています。

 

アリスさんは「給食はとてもアカデミックで一つの科目にもなりえるものなのよ」と言って、「エディブル・スクールヤード」で使用しているプレイスマットを見せてくれました。中国で栽培される米が流通、そこで経済活動が起こり、文化も伝わっていくことなど、食事をしながら農業の歴史や背景などを学んだり話し合ったりできる仕組みです。

 

 

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「1960 年代後半から70年代というのは、とても変化が激しかった時代。公的な教育が広がり、予算が限られたなかで急成長したために、環境ということには気が払われていなかったわね。大学を出てからフランスに留学をして、食や暮らしを大事にする姿勢に啓発されて、食事を大切にすることで、人生を豊かに過ごせると思ったの」

 

と、アメリカに戻って27 歳でレストランを始めた時のことをそう振り返ります。

 

そして、オーガニックで新鮮な地元の食材にこだわった彼女の料理はスローフードやサステイナブルな考え方を牽引して、今も予約が取れないレストランという人気を博しています。そして、レストランから「エディブル・スクールヤード」へと彼女の信念は広がっていったのです。

 

どうして大人に教育はしないのですか?という質問に

 

「子供が大人に教えるのよ。大人の態度や習慣というのは、そう簡単に変わらないけど、子供が料理をしているのに、大人は電子レンジというわけにはいかないでしょう」

 

と笑顔で答えたアリスさん。

 

「エディブル・スクールヤード」では、月に1回、“ファミリー・ナイトアウト”と言って、学校で夕食を家族で作る機会も設けているのだそう。

 

 

 

ランチ営業で混んでいるカフェで、今回、日本から「シェ・パニーズ」を一緒に訪れた子供に「うちのキッチンでピザを焼くのを手伝ってみる?」と声をかけてくれたアリスさん。聞けば、これは特別なことではなくて、もし、余裕があれば、ちょっとキッチンのお手伝いをさせてもらうことは可能だそう。

 

 

「大学に通っていた頃は、ちょうどべトナム戦争の時代で、私たちがこの戦争を止めなきゃって強く思ったわ。そして止めたのよ。行動を起こすことが大事なの」

 

と話すアリスさんの目は輝き、未来を見ていたのでした。

 

 

シェ・パニーズ Chez Panisse

住所:1517 Shattuck Ave, Berkeley, CA 94709

http://www.chezpanisse.com/

 

取材協力/カリフォルニア観光局 http://www.visitcalifornia.jp

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