話題の本の著者に聞く
「私が考えるタンパク質のとり方」
今、タンパク質を積極的にとる健康法やダイエット法を説く本がブーム。
特に話題の2冊の本の著者に、おすすめのタンパク質のとり方を伺いました。
まずは、4回に分けて最新著書の「正しい肉食」が話題の熊谷 修先生おすすめのタンパク質のとり方をご紹介します。
今回は、老化を左右するという「血清アルブミン値」についてのお話です。
『正しい肉食』の熊谷 修先生に聞きました
熊谷 修さん Shu Kumagai
1956年生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。東京農業大学卒業。わが国初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者。
最新の著書『正しい肉食』(集英社)が話題
熊谷 修 著
『五〇歳をすぎたら肉を食べなさい!正しい肉食』
メタボ対策として〝控えるべき〞というイメージが強かった肉ですが、本書では肉食の病気や老化への予防効果を、長年の研究に基づくデータで実証。中高年こそ毎日肉をとるべきと提唱した画期的な本。¥1,200/集英社
病気と老化を防ぐカギは、
しっかり肉をとることです
最近、タンパク質でも特に老化予防に効果的なのではと注目されているのが肉。これを実証データに基づいて解明したのが熊谷修先生の著書『正しい肉食』です。
「中高年になると魚や野菜中心の食事になりがちですが、そのため動物性タンパク質が不足した“新型栄養失調”になる人が増えています。体の栄養状態を表す指標として血清アルブミン値があります。この値は、体の中で骨格と筋肉量の占める割合と、正比例の関係にあります。
つまり、血清アルブミン値が高いほど栄養状態がよく、老化速度も遅いといえますが、この値を上げる効果が最も高いのが肉。私たちの研究では、肉食を増やした人ほど血清アルブミン値が上がり、歩く速度も落ちず、筋力の衰えを防ぐことがわかりました。肉食によって肥満度が減ったり、糖尿病やうつ、認知症などさまざまな病気を防ぐことも期待できます」
さらに、熊谷先生のすすめる“正しい肉食”は、とり方にもポイントが。
「大事なのは毎日80gの肉を食べることと、肉を含めて10食品群をとることです。これを実践するだけで健康寿命を延ばせます。ぜひ実践してみてください」
次ページでは、血清アルブミン値について詳しくご紹介。
1.老化を遅らせる血清アルブミン値は、肉で増やす
血清アルブミン値が
低いほど、老化が速くなる
熊谷先生が、老化を左右するものとして着目するのが血清アルブミン値。下記のように、この値が少ないと要介護または死亡のリスクが高まるというデータが。
「健康寿命を延ばすには、血清アルブミン値が4.3g/㎗以上になる栄養状態を維持することが大切です」
シニアを対象とした3年間の追跡調査で、血清アルブミン値が4.1g/㎗より少ないグループは、それ以上のグループに比べて、要介護または死亡のリスクが高まることが判明
肉食で血清アルブミン値が
増えると、体力が衰えにくい
下記のグラフは、熊谷先生がシニア約1,000人を対象に4年間にわたって行った肉食推進活動における、歩行速度の変化の比較。
「これによると、肉食頻度が増えて血清アルブミン値が上がったグループは、歩く速度が落ちていません。つまり肉食は筋力の衰えを防ぐのです」
肉食頻度が増えて血清アルブミン値が上がったグループ(2と3)は、歩く速度はほとんど落ちていません。一方、肉食頻度が変わらず血清アルブミン値も上がらなかったグループ(1)は、歩く速度が低下
血清アルブミン値が増えると、
さまざまな病気が防げる
熊谷先生の研究では、肉食を増やして血清アルブミン値を上げると、糖尿病予防にも効果的なことが明らかになりました。また、心筋梗塞や脳梗塞、熱中症など、さまざまな病気の予防になり、体の酸化を防いでアンチエイジングにもつながることがわかっています。
次回は、肉を含め毎日10食品群プラス主食をとる、という熊谷先生おすすめの食事についてお話です。
撮影/フルフォード海 図表製作/ビーワークス
取材・原文/和田美穂 監修/熊谷 修