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抗体ばかり注目されるワクチン。実はT細胞の活性化が重要!?/根来秀行教授が解説する「コロナの最新③」

根来秀行

根来秀行

1967年、東京都生まれ。医師、医学博士。この連載から生まれた『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業 「毛細血管」は増やすが勝ち!』(いずれも集英社)が好評発売中。ハーバード大学医学部客員教授(Harvard PKD Center Collaborator, Visiting Professor)、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、世界の最先端で臨床・研究・医学教育にあたる。

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秋になり、国内の新型コロナウイルス感染者数は急減。このまま収束してほしいけれど、海外ではワクチン接種後のブレークスルー感染が拡大しています。改めてワクチンの効力や副反応についての最新の知見を、ハーバード大学&ソルボンヌ大学客員教授・根来秀行さんに、ぐうたらライター・いしまるこがインタビューします。
(記事の内容は2021年11月29日時点の情報に基づきます)

 

ワクチンはパンデミックの切り札にならない!?

いし イスラエルや米英などに続き、日本でも3回目のブースター(追加免疫)接種が行われますが変異株にも効くんですか? デルタ株のほかにも、ラムダ株、ミュー株など、ワクチンへの抵抗力が高い変異株が登場し、さらに南アフリカから新たにオミクロン株が見つかって大騒ぎになっていますが。

変異株イラスト

 

根来 ウイルスの変異は生き延びるためのものですからね。mRNAワクチンは、ウイルスの突起となるスパイクタンパク質を作り、これが異物(抗原)として認識されて抗体が作られるわけですが、変異株はスパイクタンパク質の構造をちょっとずつ変化させて、ワクチンの抗体をすり抜けようとしているわけです。オミクロン株は30を超える変異を持つ、これまでで最も分岐した変異株なので、ワクチンの効果を低下させ、再感染のリスクを高める可能性が懸念されています。

 

いし ブースターもいたちごっこのような気がしますが、4度目、5度目もなんて話も聞きます。その一方で、追加接種での副反応を懸念する意見も高まっていますね。

 

根来 最近の研究で、スパイクタンパク質が血管の内皮細胞に取りつき炎症を起こしていることが確認されているんですよ。その炎症反応がどの程度起こるかにより、ワクチンの副反応も変わってくるわけですが、FDA(米国食品医薬品局)とWHO(世界保健機関)の科学者は、「追加接種で心筋炎などワクチンの異常反応リスクがもっと大きくなるかもしれない」と警告。一般人の追加接種に否定的です。

 

いし 日本では10月24日の時点でワクチン接種後の死亡報告は1325人に上っています。接種との因果関係を認められたケースは1件もありませんが、心筋炎、脳出血やくも膜下出血など血管系の死亡が目立ちますね。

 

根来 現時点では推測でしか言えませんが、様々な報告や研究成果をもとに考察すると、ワクチンが作り出したスパイクタンパク質による血管炎が、ひとつのトリガーになっているんじゃないかと考えられます。今後はそういう検証もしっかり行い、きちんと説明をしていかないと、国民のワクチンへの不信は募っていくと思います。

コロナとの闘いの最前線は「毛細血管」イラスト

●コロナとの闘いの最前線は「毛細血管」

細胞に入り込んだウイルスは増殖して全身に拡散しますが、その際、毛細血管の内皮細胞にも取りついて炎症を引き起こし、弱い血管を傷つけます。血管を修復する過程では血栓ができやすく、修復機能の異常により重症化を招くケースも。

 

「肺や腎臓など毛細血管の集中している臓器は感染が広がりやすい。ワクチンを接種して、腎臓のデータが悪くなったという報告も出ていますが、スパイクタンパク質が毛細血管レベルの炎症を引き起こして、悪化させている可能性があります」

 

 

いし 改めて伺います。新型コロナワクチンのメリットは何なんですかね?

 

根来 抗体ばかりフォーカスされがちですが、T細胞が活性化することも大きいんですよ。

 

いし T細胞は免疫細胞の一種?

 

根来 ハイ。ヘルパーT細胞とキラーT細胞があり、ヘルパーT細胞はウイルスとか異物が入ってきたときに、抗体を作るB細胞に知らせて攻撃を仕かける。

 

キラーT細胞はウイルスが乗り移った細胞に攻撃を仕かけて死滅させる。このふたつのT細胞部隊が、ワクチンによって活性化されるのです。

 

いし ワクチンによる抗体が減ってきても、T細胞部隊が頑張ってくれる?

 

根来 T細胞がある程度活性化されたところで保たれていれば、新型コロナウイルスに対する抵抗力は、ワクチンを接種しないときよりは高くなるはず。

 

感染予防効果は低下しても、ワクチン接種者の重症化率が低くなっているなど、変異株に対してもワクチンに一定の効果が見られる理由のひとつはそこにあると思います。

 

みなさん今日も素敵な一日を!

 

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根来秀行教授 ハーバード大学医学部客員教授

根来秀行教授
Hideyuki Negoro

1967年、東京都生まれ。医師、医学博士。この連載から生まれた『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』、『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業 「毛細血管」は増やすが勝ち!』(いずれも集英社)が好評発売中。ハーバード大学医学部客員教授(Harvard PKD Center Collaborator, Visiting Professor)、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、世界の最先端で臨床・研究・医学教育にあたる。

 

いしまるこ(いし)

冷房も暖房も苦手なぐうたらライター。換気だけはマメに行い、風通しよく過ごしています!

 

 

撮影/角守裕二 イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/石丸久美子

 

 

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