体調不良始まる

前作『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』のときは、左耳の上に円形脱毛症ができた。頭髪の奥の方にあるので、頭頂部からの長い髪に隠れ、いつもは見えないのだが、指で掻きあげるとスマホサイズの巨大な地肌が現れる。

 

 

最初に髪があるべきところを触って、つるっとしていたときにはゾッとした。十円程度なら許そう。しかしiPhoneがぴったり入る大きさはただごとではなかった。

 

 

からだはいじらしい自己主張の仕方で、SOSを発信する。わたしは“ハゲ”を「ザビエル」と名付け、からだからのメッセージと受け取り、かわいがることにした。からだに負担をかけたことを、心から詫び、これからは大切にすると誓ったのだ。もう、つらい思いをさせないよ。そう言い聞かせながら、治れ、治れとステロイドを塗った。しかし、浮気性のダメ夫が浮気を繰り返すように、「ザビエル」が消えたころには性懲りもなく、ひどい暮らしに戻っている。

 

 

『紙つなげ!』を上梓し、しばらくして人間ドッグでD判定がついた。慌てて再検査すると貧血があるらしい。ヘモグロビン値がボーダーの半分しかなかった。医者が値を見てびっくりしている。

佐々さん_photo

 

「苦しくないですか?」
と、医師が尋ねる。

 

「別に。歩いていて二度ほど目の前が真っ暗になって、あ、一度は親切な人に病院に連れて行ってもらったことがありますが、別に生活に支障はありません」

 

「酸素がからだに回らず、いつも酸欠な状態です。高山で生活しているようなものですよ。駅からここまでよく歩いて来られましたね。帰りは気を付けて帰ってください。会社員だったら通勤困難で診断書を出すレベルです」

 

 

駅から診察室までは、ゆっくり歩いても一五分ぐらいだ。そんなに悪いのかと、わたしは驚いた。

 

 

今思えば、ここが長い不調の始まりだった。からだは「ギアチェンジ」のころだよと教えてくれていたのだ。

 

 

 

※文中の、佐々さんの著作をご紹介します。

 

・『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』…海外で死を迎えた遺体や遺骨を故国へ送り届ける、「国際霊柩送還」という仕事に迫った作品。

・『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』…東日本大震災後、石巻の製紙工場が震災被害の絶望的状況を乗り越えて、復興を果たすまでの闘いを描く。

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