貧血で倒れる

40代後半は人生の変わり目だ。やっと家族の心配をすることもなくなり、働きたくてしかたがないとき、大きな人生の節目も一度にやってくる。まず、10年という長い闘病生活を経て母が亡くなった。その年に長男が大学を卒業し、20代から必死になってやってきた母親業が一段落した。

 

 

そして、寝食を忘れて打ち込んだ、本を書くという仕事をひとつ終えた。みな、納得のいく結果だったはずだ。しかし、幸不幸はさほど関係ないようで、大きなできごとは自分の体調に明らかな影響を与えた。わたしは中身が抜けた着ぐるみのようにグニャグニャになってしまった。

 

 

その「からっぽ」を充電期間として楽しめたら、こじらせることもなく、もっとよかったのかもしれないが、わたしは無駄にあがいた。何をやっても上滑りばかりで、夢の中で走っているときのように、まったく先に進んでいかない。文章を書いても、書いても、途中で息切れをしてことごとく言葉が空中分解した。それでも、ばたばたとむなしい努力を繰り返していた。水の外にいるのに、なぜかひとりであっぷあっぷと溺れているような気分だった。

 

 

そんなある日、決定的なことが起きる。

 

 

それは大きな工場での取材中のことだ。さんざん階段を昇り降りした後、トイレに寄ったら、トイレの中で突然目の前が真っ暗になって何も見えなくなった。

 

 

乱気流の中の飛行機に乗っているように目が回り、平衡感覚を失った。ああ、まずいな。自宅のトイレで気を失うのは構わないが、取材先のトイレで倒れて、騒ぎになったらどうしよう。私は、トイレでうずくまりながら、これは何とかしてからだの不調を治さなければならないと痛感した。

 

 

実は、その前に産婦人科に行って、子宮内膜増殖症と子宮筋腫と診断されていた。小さな筋腫がたくさんあって、手術では取り切れないということだった。ピルと鉄剤を処方されていたのだが、どちらも飲むと最悪な気分になった。ピルを飲むとむかむかしてまるで思春期のころの気分の悪さだし、鉄剤は胃を荒らしおまけに便秘になる。あまりにからだに合わないのでやめてしまっていた。

 

 

しかし、そうも言っていられなくなった。立ちくらみが怖くて、階段は手すりをつかまないと降りられないし、電車で立ったまま移動するのも不安だ。外出が怖くなり、人混みを歩くのが苦手になった。とにかく、貧血だけは治さなければならない。

 

佐々さん_photo

 

 

だが、次に訪れた産婦人科で、さらなるハプニングが起きる。

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