術後の脳内対話

たしか、名前は「スピリチュアル・ペイン」。世界保健機構(WHO)は、肉体的痛み、精神的痛み、社会的な痛みのほかに、霊的な痛み、すなわちスピリチュアル・ペインを加えた四つを、トータルペインとしている。オカルトなんかじゃなく、医学界が認めた世界共通、普遍的な痛みである。

 

 

昔、逆子で子どもを自然分娩して難儀した。椎間板ヘルニアの手術では背中を15センチ開いた。スキーで転倒した時の膝の手術痕もある。しかし、今感じている種類の痛みを感じたことはなかった。

 

 

「ああ、へっちゃらだと思っていたけど、やっぱり、なんか悲しいよね、悲しいんだよね」

 

 

そこに思いが至ったところで、痛みが底を打つのを感じた。しみじみと自分がもうひとりの自分に語り掛けると、次第に気持ちが落ち着いてきた。

 

 

脳内対話は続く。考えてみると何十年も、ひとつの体でよく生きてきた。こんな時に、自分が分裂し、脳内で仲間割れしている場合ではないではないか。

 

 

ま、いろいろあったが、これから先の人生を生き延びていくために、お互い一致団結して、励ましあいましょう、そうしましょう。と、こんな調子で反省会は、次第に脳内慰労会へと変わっていったのである。

 

佐々さん_photo

 

外側から見たら、池の鯉のようなアホ面だったかもしれないが、侮ってはいけない。内面では、いろいろ起きているのである。そういう自分を観察しているのは、結構面白かったし、感動すらした。

 

 

あまりの痛みで、何人かの人格が生まれ、頭の中で分裂し、やがて統合される過程は、非常に興味深かった。

 

 

人間、危機に陥ると、いろいろなものを、脳内でこしらえるものなのだろうか。そういえば、海で遭難した人が、頭の中で有能な秘書を作り上げ、その人格にマネジメントを任せたという話を読んだことがある。

 

 

内面が落ち着いてきたころ、投与してもらった痛み止めが効いてきたのか、潮が引くようにして痛みも和らぎ、やがて眠気が襲ってきた。痛みがなくなると、痛んだ時に思ったことを忘れてしまう。

 

 

今回のことを記憶からなくすのはあまりに惜しかった。ちゃんとメモを取っておかなくちゃ、……。と思ったあたりで意識が遠のいて、そのあとの記憶は飛んでいる。

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