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体重20キロ増。ピンチに直面するきっかけを作った”一つのベル”

佐々涼子

佐々涼子

1968年生まれ。日本語教師を経て、ノンフィクションライターに。2012年『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)、他に『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(早川書房)など

PHOTO©Hayakawa Publishing Corporation

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連載「卵巣の中の私」が好評だった佐々涼子さんが、新たな連載をスタート!卵巣摘出、子どもの結婚…更年期ならではのリスクと向き合っているうちに、気づけば体重も人生Max!このピンチに、佐々さんはどう立ち向かう!?

ボリボリボリボリ……。
あれは2年前のこと。
けだるい咀嚼音を立てながら、私はカウチソファでカラムーチョを抱え、アメリカのゾンビドラマ『ウォーキングデッド』をだらだらと見ていた。

 

思えばあれが「更年期」だったのだ。……とざっくり括っていいものだろうか。あるいは別の何かだったのだろうか。今となってはわからない。

 

卵巣嚢腫で卵巣を取ってしまい、ホルモンのバランスを崩したのに加え、仕事上の(ちょっと口幅ったい言い方をするなら創作上の)行き詰まり、そして子どもふたりが独り立ちをするなどの空の巣症候群などが相まって、私はどんよりした日々を過ごしていた。

 

もともと過食の気があって、何かストレスがたまると食べちゃうのだ。それも無限に。この後、私は駅前に行って、手のひらサイズのクッキーや、お誕生日用のケーキを買ってきて、ちゃんと切ることもせずにスプーンですくって食べるのがお約束だ。

 

あの丸いケーキを独り占め。最初は夢のようだと思った。しかしそれは習慣化し、いつしか悪夢に変った。もう自分では止められなかった。

 

当時の私の姿を思い出すとちょっと切ない。血糖値の上がり下がりで精神的に不安定になるし、頭はぼんやりするし、ちょっと動くと息切れするし、定期健診では糖が出て、医者に大目玉を食うしで、もう最悪。

 

そして、そんな気分を紛らわすためにまた食べる。その当時の私は自己嫌悪の塊だった。なにせ自分で自分を抑制することもできないのだ。

佐々さん_photo

 

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あ、申し遅れました。お久しぶりです。ノンフィクションライターの佐々涼子です。『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』では海外からの遺体搬送について書き、開高健ノンフィクション賞をいただきました。そのあとは、東日本大震災から立ち上がった製紙会社の半年間の記録『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』を上梓。夢中になって本を書いている間は大丈夫だったのに、しばらくしたら、何も書けなくなってしまいました。

 

まぁ、年齢的にいろいろなことが変わり目の時期だったのだと思います。その頃は、毎日息をするのさえつらかった。特に子宮筋腫が大きくなってからは月経過多で大貧血。ピルも体に合わず、身の置きどころがないとはこのことです。

 

こんなダメ人間になる前は、何とか自分の気持ちを立て直そうと、ノンフィクション賞の賞金を手に海外を放浪。当時は真面目に神仏にすがろうと考えていて、世を捨てる修行に出ていました。こんな感じで。

 

佐々さん_photo

バングラデシュで地元のみなさんと瞑想

 

フランス、インド、バングラディシュ、タイ。様々な国の仏教施設に置いてもらいました。結果的には、煩悩が多すぎて戻ってきちゃいましたけどね。宗教に向いていなかったというよりは、要するに私は「ノンフィクション」の神様を信じていたんだと思います。

 

そこに気づくのは、ずっと後のこと。当時、人生の変わり目だったわけですが、今のコロナ禍の状況と似ていると思えてしかたがないのです。だって、私たちは外に出ることもできず悶々としている。もっとも、今度は世界の変わり目でもあって、みんなが同じ困難に立ち向かっているわけですが。さて、2年前の私に戻りましょう。

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世界中を放浪してもよりどころを見つけられなかった私は、日本に帰って来てからもエンジンは一向にかからず、仕事の方向性は見えてこず、抱えている原稿はずるずるとあとのばし。あげくのはてに過食に走った。一日中引きこもっていたのだ。

 

自律神経の失調によって夜は熟睡できないし、気持ちは落ち込む。鬱っぽいし、過剰な食欲はある種の依存症だなとは薄々気づいていた。自分で制御できないのだ。

 

そんな私に離れて住んでいる長男から一本の電話が入った。
今にして思えば、これが私を救う「気づきのベル」となる。

 

「オレ今度結婚することになった」

 

平成4年生まれ。当時26歳。ちょっと前から結婚を前提に付き合っている人を知っていたので、「へー」という感じだった。自分が生んだ子が結婚するってちょっと不思議。よく足にまとわりついてピーピー泣いていたくせに。若い頃に生んだ子どもが、また、若い時に結婚する。苦労をさんざんそばで見ているはずなのだが、さすが我が子、チャレンジャーである。

 

小躍りして喜んだのもつかの間、さて、結婚式に何を着ようかという段になって私は不安になった。

 

だいぶ身体が重いような気がするけど、今、何キロぐらいあるんだろう。

おそるおそる体重計「タニタくん」に乗ってみた。液晶に目をやる。

 

「ヴァッ!」

 

へんな声が出てしまった。いや、ちょっとおかしい。私はよろよろと「タニタくん」から降りると、トイレに行き、出せるものは全部出し、洋服を脱ぎ、大きく息を吐いてそろそろと体重計に乗る。

 

「ゲゲゲッ!」

 

増えてる!!増えてるよ。1年足らずで 約20キロの大増量。しかも体脂肪が40%近い。私の身体の40%は生クリームやスナック菓子でてきているに違いない。

考えてみればお釈迦様の弟子になり損ねて以来、私の新たな神は「スイーツ」であり「スナック」であった。しかし、まずいぞ。絶対まずい。糖尿病の専門医には「これ以上太ると糖尿病になりますよ」と脅かされた。あれは、たしか今より10キロ以上痩せていたはずだ。うわああ。

 

真っ青になりながら、とにかくフォーマルドレスをレンタルに行ってみた。店員さんは断言する。
「だいじょーぶ、ドレスはストンとしてますから、身体の線なんか出ませんよぉ」
「そうですか」
「そうそう、試着してみてください」

 

着てみた。鏡を見る。ストンとするはずなのに様子がおかしい。全然ストンとしない。丸かった。……黒くて巨大な丸。

 

お姉さんは、顔の前で手をパタパタしてこう言った。「お似合いですよぉ~、大丈夫、大丈夫」

 

私は茫然として鏡を見た。目が覚めた気分だった。この鏡の中の、顔色の悪いどよんとした人は誰?糖質過多ではれぼったい目をして、生気なくたたずんでいるこの人は。誰にも愛されず、大切にされていない自分がそこにいた。我ながら自分が気の毒だった。

 

とにかくましなドレスをレンタル予約して外に出た。家の近くの駅にたどりついたのは夕暮れ時。とぼとぼ駅前を歩いていると建物の上に大きな看板があるのが目に入る。ヘルシーな笑顔を浮かべた女性がヨガのポーズをとっている。そこはジムだった。自動ドアのガラスに私が映る。私は世界中の不幸を背負ったような顔をしていた。

 

中から、健康そうな人たちが笑いさざめきながら出てくる。
案内のチラシがドアの向こうにあるのが見える。足を踏み入れようとするが、自分の見た目を気にしている私には結界でも張ってあるのかと思うほど入りにくい。私はその時、コンプレックスでぺしゃんこだった。

 

だが、今運動しなければいつするのだ。これが最後のチャンスだ。
それに私は知っていた。依存症は一人では治らない。
「誰かに助けを求めなくちゃ」
私は意を決してドアの前に立ち、ドアが開いた途端に中に潜入、入り口に置いてあるチラシを一枚バッと取ると、それを握りしめて素早く外に出た。ミッション成功。とりあえずチラシは手に入れた。

 

人類にとっては小さな一歩だが、私にとっては大きな一歩だ。

 

長男の結婚式まで、残すところあと3カ月。
(つづく)

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