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ジムデビュー!ショッキングピンクのTシャツを着て胸を張れ

佐々涼子

佐々涼子

1968年生まれ。日本語教師を経て、ノンフィクションライターに。2012年『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)、他に『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(早川書房)など

PHOTO©Hayakawa Publishing Corporation

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卵巣摘出、子どもの結婚…更年期ならではのリスクや変化と向き合っているうちに、気づけば体重が人生Maxに!ノンフィクション作家・佐々涼子さんの好評新連載第2回、いよいよこのピンチに対処すべく、佐々さんが行動開始!

こんにちは。ノンフィクションライターの佐々涼子です。あれは2年前のこと。体調を崩した私を待っていたのは、ひきこもりと過食の日々。かつてはよくアルコールと薬物におぼれるロックシンガーがいましたが、私がおぼれたのは激辛スナックとスイーツ。そんな時、長男の結婚が決まり、人生を立て直そうと決心します。しかし、ここからが難しい。だめな自分と向き合わなくちゃならならなかったから。
さて、話は当時に戻ります。

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2年前の5月末、私はジムのフロントにいた。応対してくれたのは、笑顔がキラッキラのお姉さん。「一緒に頑張っていきましょう!」と、小さくガッツポーズしてくれたので、私もつられて半笑いしながら中途半端なガッツポーズを作る。

 

私はシェイプアップのための特別コースを申し込んだ。期間は3カ月。9月の長男の結婚式に合わせたものだ。トレーナー2人と管理栄養士がつくという。テレビコマーシャルでよく見るパーソナルトレーニングと比べたら驚くほどの廉価だ。ジム側には、運動習慣を作ってもらい、長く通う会員を増やすという狙いもあるようだ。「佐々さんには、どんなトレーナーが合うかなぁ。私がぴったりな担当を選びますからねっ」とにこにこして請け合ってくれた。

 

大穴馬券に有り金全部つっこむ競馬好きのおっさんみたいな調子で「ええぃ」と申し込みを済ませたものの、内心ではあまり期待はしていなかった。何しろ私は自分の人生を立て直すために世界中を放浪して、偉いお坊さんに謁見してきたのだ。

 

それで何が残ったかって? 煩悩まみれの毎日を送る、搾りかすのような人生だ。仕事もできないし、子離れもした。あとは何が残っている? ナッシングだった。

 

気力などまったくわかない。カーテンを閉め切った部屋で、ゾンビが人間をボリボリ食べちゃうドラマを、カラムーチョをボリボリ食べながら見ていた。糖質を入れると、血糖値が上がってひとときものすごい快楽がやってきて元気になる。でも、気分はすぐに急降下。鬱々とした気分になる。それが嫌でまた食べる。今度は甘いもの。食べるとひと時ハイに……。

 

私の気分は上がったり下がったりした。これって、どうよ。堂々たる糖質ジャンキーじゃない? 野菜? ああ、かつてそんな食べ物が存在した。豆製品? 魚? 食べない、食べない。だって、私にはスナック菓子とスイーツがある。

佐々さん連載_photo

 

そして迎えたトレーニング初日。Tシャツを貸与してくれるというので、何も持たないで行った。すると「はいっ」と、明るく手渡されたのが、目が痛くなるほど鮮やかなショッキングピンクのTシャツだった。このコースの人だけが着るものらしい。若い子が着たらきっとかわいいのだろうが、ジムでできるだけ目立ちたくない私にとっては苦痛だった。

 

ああ、何かの天罰でしょうか、仏さま。「私は不摂生していました」と、ジムの人々に知らしめるような蛍光色だ。はーっ、私はロッカールームの一番隅っこにいってこそこそと着替え始めた。隣では、すらっとした女性が惜しげもなく肢体をさらして着替えている。私はどんどん隅っこにあとずさった。

 

すっかりどよんとした気分でロッカールームを出ると、そこに階段があった。「健康のために歩きましょう」と貼り紙が。ああ、そうですか。しかし、階段を降りていくだけで「はぁはぁ」と息が上がる。もうそれだけで運動した気になった。もう帰っていいでしょうか。

 

私はようやくジムエリアへと降り立った。

 

あの日のことをよく覚えている。私は、このうすらぼけっとした、さえない私に、後ろ頭をはたいて教えてやりたい。「よーく、周りを見てごらん」と。

 

この日、私は普遍の幸福へと続く、ごく「個人的な」歴史的転換点に立っていた。世界中を旅して得られなかったものが私の手の中にある。私は、あの日の私をスタンディングオベーションで迎えたい気分だ。

 

「ようこそ、新世界へ」。胸を張れ、私。自分の問題にちゃんと向き合い、ピンクのTシャツを着て立ち向かおうとする私に誇りを持てと。だが、その時の私はまだそれを知らない。

 

担当トレーナーは、同じピンク色のシャツを着ているという。私はきょろきょろとその人を探す。どこかのリゾートのような、大きな窓の明るいフロア、銀色のマシン。ガラス張りの隣のフロアでは、明るいヒップホップの音楽に合わせて、熱帯魚のように色とりどりのウェアを着た人たちが踊っている。どこかから柑橘系のアロマの香りが漂ってきた。

 

「佐々さんですね」と声をかけてきたのはピンクのポロシャツを着た男性だった。
浅黒い肌。彫の深い顔立ち。きりっとした眉。南の島の人を連想させる。
「はじめまして」
その人は、人なっこい顔をくしゃくしゃにしてキュートな笑顔を作った。この人、誰かに似ている。「誰だっけな」としばらく考えてみた。ああ、そうそう、沖縄出身で演技派俳優の満島真之介。満島ひかりの弟だ。その瞬間、私の心の中で、その人は「ミツシマさん」になった。

 

彼は私にシェイプアップコースの説明をする。トレーニングは1回60分で週に2日。2週間に1度の栄養指導がある。そのほかにも、ジムの施設を使って積極的に身体を動かしてほしいとのこと。
「じゃ、早速計測してみましょう」

 

たはー。やっぱり。きらいだよ、体重計。そーっと体重計に乗る。そーっと乗ったって、勢いよく乗ったってきっと数字に変わりないと思うのだが、やっぱりそーっと乗ってしまう。

 

78.9キログラム。体脂肪率41パーセント。

佐々さん連載‗photo

 

更年期を境に太るというのは聞いていたが、これってたぶん身体の話だけではなく、多くの人が「人生のギアチェンジ」を迫られる時期なのだろう。数字の変動はそれを教えてくれた。どこへ行くのだって、きちんと自分のいる場所を知らなければならない。私はその時、自分がいる場所の正しい座標を手に入れたのだ。

 

(つづく)

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