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ボルタンスキーでタイムトリップ

オチャリーナ

オチャリーナ

お茶好き、カフェ好きで、お茶のんで仲間とおしゃべりするのが至福。
コリ症、冷え性なので、鍼とかお灸で癒しています。
由紀さおりさん、十朱幸代さんと、本を担当したセンパイ女性たちの
美と健康の実践に刺激を受けつつ、つい「明日からやろう」とナマケがち(汗)

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夏の終わりの休日、以前から気になっていたフランス人の現代アート作家、クリスチャン・ボルタンスキーの展覧会を見に、国立新美術館に行ってきました。「たしか前に水戸芸術館で見たはず……」と、うろ憶えながら、なぜか「行かなくちゃ」という気になったのです。

訪ねてみると、年譜では水戸芸術館の展示は1990~91年。「え、前回見たのは29年前!?」 とびっくり。そして、うろ憶えだった作家の展覧会から、20代後半で見たのとは全然違うインパクトを、50代後半の私は受けました。いや、これこそ長く生きている醍醐味、というものでしょう(笑)

人の「存在」を醸し出す「記憶」や「痕跡」のようなものに満ちた作品の展示は、「展覧会をひとつの作品のように見せる」、ということでしたが、特に印象的だったのは、ちょうど真ん中あたりにあるひと部屋の作品群でした。

ハロウィンで見かけるような幽霊たちが左右に漂う白く明るい廊下(?)を抜けたあとの暗くて広い空間。正面の大きな《ぼた山》は、うち捨てられたような黒いコートの山。頭上には無数の肖像写真が揺れ、河原のような一角では、荒涼とした野原で無数の風鈴が風に鳴る、寂寥感に満ちた映像が流れています。そんな空間のあちこちにでは、「コート」だけで形づくられた虚ろな人形たちが、何やらつぶやいています。耳を傾けると、発しているのは「問い」。

その問いの「相手」に気づいたとき、「あっ」という思いと共に、心を揺さぶられます。

儚い存在と、それを留める記憶。名もない無数の生の痕跡。その近さ、遠さ、不可思議さ。普段なら考えたくもないそんなことを、素直に見つめられる空間でした。

 

コートの人形の間を歩く。繰り返される問いが印象に残る ①、②、③

展示を見ていてふと思い出したのは、29年前、水戸での展覧会に行った時のこと。その日はなぜか、当時のパートナーとその両親と一緒でした。ドライブがてら、水戸にでも行こう、ということになったような気がします。その後一時「義父母」となった彼らはそのころ、まさに今の私と同じ年ごろだったはず。彼らはどんな思いでこの作家の展示を見たのかな? 当時すでに病を得ていた義母は、今は「記憶」の中の人となり、聞くことはもう叶いません。

そして、たまたまですが、この日私がこの展示を見に行くというと、家でブラブラしていた学生最後の夏休み満喫中の息子がなぜかついてきていました。結果、偶然2回とも2世代で見ていたわけで、それもまた、なんだか不思議なご縁のような気がしました。

 

白い光の中を進む廊下状の展示。天使や悪魔を思わせるシルエットはどこかユーモラス。しんみりするだけではありません 

外に出ると蝉の大合唱。すぐ近くにある話題のパン屋さんカフェでふっくらしたトーストと薫りの良いカフェラテをいただきながら、29年後の自分って考えがたいな、でも、29年ってあっという間だったよな、などなどと、ぼんやり考えたりしました。過去と、そして未来にも、ちょっとずつトリップしたような気分です。

大阪と東京の展覧会は既に終わりましたが、10月半ばからは長崎での展覧会が始まるそうです。各地での展覧会は、「それぞれが独立したひとつの作品」と、解説にあるので、また違う空間や驚きが楽しめることでしょう。

東京ではお盆の前後に見られましたが、長崎ではハロウィンのころに見られるのというのも悪くないかも、と思います。

クリスチャン・ボルタンスキー—Lifetime

長崎県美術館 2019年10月18日(金) ~ 2020年01月05日(日)

(写真はすべて国立新美術館での東京展より。筆者撮影)

①《ぼた山》(写真右・部分/2015)②《スピリット》(写真上/2013)③《発言する》(写真右手前/2005)④《幽霊の廊下》(2019)

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