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今年は思い切ったことをしたい!そんなあなたに贈るフィンランドの本

新谷麻佐子

新谷麻佐子

あらたに・あさこ●イラストレーター&編集者。2014年にムーミンの作者トーベ・ヤンソンが暮らした島「クルーヴハル」に、友人でライターの内山さつきと1週間滞在したのをきっかけに、kukkameri(クッカメリ=フィンランド語で「花の海」の意) を結成。以後、フィンランドの小さな町や四季、暮らしと文化をテーマに取材を続けている。著書に『とっておきのフィンランド』『フィンランドでかなえる100の夢』(ともにダイヤモンド社)がある。http://kukkameri.com

フィンランドの女性から見た、清少納言、京都の魅力

 

2023年もあっという間に2月に突入。時間がたっぷりあった年末年始は、久々に読書を満喫しました。たまたま読んだフィンランドの本が、ちょうど年初めに読むのにぴったりだったので、皆さんに紹介したいと思います。

 

著者はどちらもミドルエイジの女性で、忙しい毎日の中で、失敗や挫折を経験したり、心身のバランスを崩したり。そこから思い切った決断をすることによって、自分らしい生き方を見つけていきます。「今年は何か思い切って新しいことを始めたい!」という人におすすめの3冊です。

 

1冊目は、『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』(ミア・カンキマキ/著 末延弘子/訳 草思社)です。

書籍『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』

この本は、自分の人生に飽きてしまったという、フィンランドのアラフォー女性が、「そうだ、京都に行こう!憧れの清少納言について調べて、本にしちゃおう!」と思い立ち、実行に起こした日々を綴った珠玉のエッセイ。

 

著者のミアさんは、フィンランドでは当然の権利として認められる、会社の長期休暇制度を利用して、1年間、自分のために時間を使うことにしました。家を人に貸し、一旦実家に戻って、助成金申請を出して、インターネットで京都の部屋を申し込んでと、あっという間に京都にやってきます。

 

といっても、やれることといえば、関連資料を集め、ゆかりの地を訪ねること。それも日本語のできない彼女には容易なことではなく、図書館を訪ねても、日本語の資料しかなく途方に暮れます。その一方、ユニークな同居人に恵まれて、友人もできて、歌舞伎にもはまりと、気づけば京都の暮らしをエンジョイし過ぎていて、このままでは目的が達成できない!と焦ってしまうのでした。

 

もちろん楽しいことばかりではなく、古い日本家屋ならではの招かれざる客(つまり虫や動物たち!)はやってくるし、中年女性ならではの悲哀なども、ユーモアたっぷりに綴っています。

 

何より全編を通して驚かされるのが、日本の文化への深い理解と豊富な知識。そこに彼女なりの解釈や体験談も加わるので飽きることがありません。例えば、平安時代では、歌の才能と筆跡が重要だったという話では、ミアさんの歴代の彼氏がどんな筆跡だったかを振り返ります。すると、読者の私たちも過去の恋愛体験も振り返ざるを得ず(笑)。共感と気づきの連続です。

 

他に北欧好きとして惹かれたのは、いつものイメージとは違うフィンランド人の姿が垣間見られること。

 

例えば、フィンランドはコーヒーの消費量が世界で1位と言われるほど、コーヒーが大好き。でもミアさんはコーヒーが苦手で、フィンランドでは「この子はいつまでたってもコーヒーが飲めない」という目で見られてしまうそう。でも京都ならどこでもお茶が出てくるので、彼女にとっては楽園なのです。

 

そんなミアさんの目を通して描き出される京都や平安時代の才能ある女性たちの姿は、とても新鮮です。何より京都に行きたくてうずうずしてきます。今年はぜひこの本を持って京都へ!

 

フィンランドの「シス」から学ぶ、逆境から立ち直る力

 

続いては、『フィンランドの幸せメソッド SISU』と『EVERYDAY SISU フィンランドの幸せ習慣』(カトヤ・パンツァル/著 柳澤はるか/訳 方丈社)。

フィンランド女性の書いた本2冊

 

『フィンランドの幸せメソッド SISU』(写真左)は、日本で3年前に出版され、その続編『EVERYDAY SISU フィンランドの幸せ習慣』は、昨年発売されました。

 

フィンランド系カナダ人の両親の下に生まれ、カナダで教育を受けた著者が、マスコミ業界で経験を積んだのち、男女平等の北欧に惹かれ、30代前半でフィンランドに移住。以来、フィンランドの人たちのシンプルな暮らしに惚れ込み、フィンランドでキャリアを築き、結婚と出産を経験。その後、フィンランドの人たちの根底に流れる「SISU(シス)」に魅了されていきます。

 

シスとは、本書によると、フィンランド固有の概念で、逆境から立ち直るレジリエンスや、困難に直面しても挫けない強い心を意味します。

 

『フィンランドの幸せメソッド SISU』では、そんなカトヤさんがフィンランドで見つけた、森とともに生きる北欧のシンプルな暮らし、そしてフィンランドの歴史的なシスから、日常生活で見られる習慣的なシスまでを丁寧に紹介していきます。

 

中でも私が一番驚いたのは、フィンランド好きの間ではおなじみの「サウナとアイススイミング」が、うつ病の治療に効果があるということ。

 

カトヤさん自身、カナダ時代、長年うつ病に悩まされてきました。彼女の実体験とともに、最新の研究結果を示しながら、サウナとアイススイミングの組み合わせが、いかにうつ病の治療に効果的かを教えてくれます。

(サウナと海や湖の中を泳ぐアイススイミングは、本当に気持ちがいいですよ。過去に、サウナ&アイススイミングの体験について書いたので、興味のある方はそちらもどうぞ!)

 

私にそんな気づきをくれたカトヤさんが第2弾を出版したと聞いて、迷わず手に取りました。『EVERYDAY SISU フィンランドの幸せ習慣』です。

 

まず、思いがけなかったのが、彼女は1冊目を出版したのち、再び精神を病んでしまったということ。というのも、シスの本が22カ国で翻訳出版され、世界中のメディアから取材が殺到。ジャーナリストとして奔走する一方、プライベートでは離婚を経験。仕事に育児と、全てを完璧にしようとするあまり、習得したはずのシス、つまり自然や冷水の中で過ごす時間、そしてよく食べてしっかり休むという当たり前の時間を完全に見失ってしまったというのです。

 

本書では、そんなカトヤさんがいかにして再び回復していったのか、さらにはDVやいじめ、燃え尽き症候群など、様々な困難から立ち上がった人たちの体験や研究を取り上げ、健全なシス(困難に直面してもくじけず、立ち直る力)は、どのようにして育むことができるのかを紹介していきます。

 

行き詰まった今の状況を変えたい。転職、移住など思い切ったことがしたい。心身ともに健康な暮らしがしたいけど、何をすればいいかわからない。――そんな人たちにおすすめの3冊でした。

 

さて、活字の世界にどっぷりと浸かり、頭を使うとおなかが空きますよね(笑)。北欧のおいしい食べものの話も少し。

 

冒頭の写真でお見せしたシナモンロールは、東京・恵比寿にある、世界のパンを集めたベーカリー「パダリア」 のもの。北欧のパンでは他に、フィンランドの「カルヤランピーラッカ」(写真左下)、スウェーデンの薄い堅焼きパン「クネッケブロード」(写真右上)もありました!

フィンランドの「カルヤランピーラッカ」(写真左下)、スウェーデンの薄い堅焼きパン「クネッケブロード」

 

カルヤランピーラッカは、ミルク粥をライ麦生地で包んだカレリア地方のパイ。ゆで卵とバターを混ぜた「ムナボイ」をのせて食べるのが定番です。ムナボイは簡単に作れますが、お店でも販売しています。スウェーデンのクネッケブロードは、思った以上にハードな歯ごたえ。家にあったクリームチーズをのせてみたら絶品でした。次回はサーモンとディルをのせて食べたい!ちなみに、ジョージアのパン「ハチャプリ」もチーズたっぷりでとてもおいしかったです!旅行気分を味わえますよ!

 

 

新谷麻佐子さんの北欧旅連載

『今人気の田園ツーリズム。フィンランド、ラトビア、エストニアに行ってきました!』

 

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