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松本千登世/たくさんの感情の起伏を経て、まろやかな愛情を抱ける大人に

松本千登世/Chitose Matsumoto

松本千登世/Chitose Matsumoto

1964年生まれ。美容エディター。

客室乗務員、広告代理店勤務、

出版社勤務を経てフリーランスに。

自らの経験に基づいた審美眼によって語られる、

エッセイや美容特集がつねに注目の的。

著書に、

『美人に見える「空気」のつくり方 きれいの秘訣81』

(講談社)がある

年齢を重ねるほどに美しく__

 

〝大人磨き〟はこれから

 

 

第3回 たくさんの感情の起伏を経て、まろやかな愛情を抱ける大人に

 

 

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何気なく眺めていたTV番組。タレントのパンツェッタ・ジローラモさんがイタリア・ナポリに里帰りし、久しく会っていない母を予告なく訪ねて、驚かせようという番組…確かそうだったと思う。普段は「ちょい悪」のイメージが強いこの人は、母を前にどんな表情をするのだろう? あの笑顔の向こうに隠された本当の表情が見えるのかもしれない。

 

 

興味がわいて、思わず画面を追った。思いがけず、遠く日本の地で活躍する息子に会えた母は、うれしすぎる驚きに、一瞬にして目に力が入り、肌に血色が戻り、存在ごと輝きを増したように見えた。マンマの手料理は本当においしそうで、観ている私たちまで母の味を思い浮かべてしまうような、穏やかなシーン。そして、あまりに短い滞在を終え、帰路につこうとした彼に母から手渡された手紙に綴られていた文字。

 

「あなたが元気なら、私も元気です。あなたが幸せなら、私も幸せです」

 

本音を言えばきっと、寂しさでいっぱいだっただろうと想像する。もしかなえられるなら一生、いや、それが許されないなら、あと一日でもあと一時間でもいい、そばにいたい、いてほしい。すがりつきたい気持ちを、母として積み重ねてきた時間がまろやかに包み込んでいるからこその、温かくて豊かで、思いっきり切ない響き…。どんな天才コピーライターも舌を巻く珠玉の言葉にちがいない。ジローラモさんの「人たらし」の原点は、ここにあったのだと合点がいったりして。

 

 

この話をすると、年齢や職業を問わず、そして結婚している人していない人、子どもがいる人いない人関係なく、女性たちは誰しも目を潤ませる。わかるわかると深くうなずく人から、

 

「いつかそんな『域』に達するんだろうか」

「自分のことで精一杯な自分が恥ずかしい」

「一生そんなふうに思えなかったらどうしよう?」

 

と、自身を省みる人までさまざま。

 

 

ただ共通していたのは、これが女性独特のもので、もともと組み込まれた母性からあふれ出す感情なのじゃないかということ。そして、じっくり時間をかけて信頼関係を育み、その関係に100%自信が持ててやっと手に入る、とても成熟した思いだということ…。

 

 

子どもに対する感情としてはとても理解しやすいけれど、きっとそれだけではないのだと思う。親に対して、パートナーに対して、親友に対しても…こんな気持ちが自然とわき上がってくるような「かけがえのない存在」がいる人生が最高だと思う。プラスもマイナスも、酸いも甘いも含めて、たくさんの感情の起伏を経たからこその、まろやかな愛情を抱ける大人が本当に美しいと思う。こんな人生を、こんな大人を目指したいと思うのだ。

 

そういえば、と思い出した。新聞でたまたま読んだ小学生の作文コンクール…夏休み、少しだけ遅く起きて、たくさんの洗濯物に追われる母を見かける。

 

「お母さん、毎日大変じゃない?」
と問いかけると、母は「幸せ」と答える。

「お父さんが頑張ってくれた汗と、子どもたちがたくさん遊んでかいた汗を洗う、それが私の幸せ」

なのだ、と。

 

すると、この小学生は、ベランダに干された洗濯物を見るたび思うのだ。「ほかの家にも、あっちにもこっちにも、『幸せ』が干してある」…。
相手の元気を願うと元気が連鎖する。

相手の幸せを願うと幸せが連鎖する。

 

今一度、まわりへの愛情を進化させたいと思う。自分自身が、誰かにとってかけがえのない存在になるために。

 

 

 

 

 

撮影/江原隆司

 

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