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仁和寺と御室派の寺からやってきた秘宝と秘仏がすごい

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

今回は、1月16日から開催中(~3月11日まで)、東京国立博物館 平成館で開催中の特別展「仁和寺(にんなじ)と御室派(おむろは)のみほとけ─天平と真言密教の名宝─」のご案内です。寺社好きや仏像ファンの間では、ずいぶん前から話題になっていた待望の展覧会。はじまってから少したちますが、「もう行った?」、「すごかったね」という話でもちきりです。

この展覧会のどこがそんなにすごいのか。

まずは、仁和寺が皇室ゆかりの特別な寺で、歴代天皇の真筆を含む貴重な書を大量に保有しており、今回、その中でも特に貴重なものが公開されるということです。実際にお寺に行っても、これほどたくさんのものを拝見するのは不可能でしょう。

書の中でも一番の見どころは、弘法大師・空海ゆかりの名宝、国宝「三十帖冊子」(仁和寺蔵)。空海が中国で書写して持ち帰り、真言密教の秘書として伝わっているものです。つまり、空海の真筆ということです<一部は別の人物の書も含まれています>。書道史上、もっとも貴重な作品です。全帖の展示は1月28日で終了しましたが、2月14日からは、空海の真筆部分を選りすぐり2帖づつ展示し、この三十帖冊子を納める箱国宝「宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱(ほうそうげかりょうびんがまきえさっしはこ)」も展示されます。

曼荼羅など仏画も数多く展示されます。中でも目を引くのは、国宝「孔雀明王像」<仁和寺蔵、展示は2月12日まで>です。文字通り孔雀に乗った明王の像で、中国の北宋時代(10~11世紀)に制作されて日本に伝来した貴重なものです。こちらは、天皇の病気平癒や皇子の誕生を祈願するための「孔雀経法」という儀式の本尊として祀られたものです。

この展覧会のすごい点の二番目は、普段は一般公開されていない仁和寺の観音堂が、そこに安置される三十三体の仏像とともに完全に再現されていることです。壁画は実物ではなく、高精彩の画像ですが、見事なリアルさで、本当にお堂の中にいるかのようです。

三十三体の仏像は、本尊の「千手観音菩薩立像」を中心として、その脇侍の「降三世明王立像(ごうざんぜみょうおうりゅうぞう)」、「不動明王立像」、「風神・雷神立像」。千手観音の眷属(けんぞく)<=手下>である「二十八部衆立像」です。仁和寺は平安時代の創建ですが、応仁の乱などで焼失し、現在ある建物は、多くが江戸時代の再建です。この観音堂やそこに祀られる三十三体の仏像も江戸時代の作ですが、古い時代の形式を踏襲する素晴らしい像ばかりです。このコーナーだけは、一般観覧者も写真撮影可能なので、気に入った像の写真をたくさん撮りたいですね。

わたしはこの、ユーモラスな風神雷神の像が好きです。

 

次ページに続きます。

この展覧会のすごい点の三番目は、国宝や重要文化財の仏像が多数展示されることです。仁和寺の仏像だけでなく、御室派<仁和寺を総本山とする真言宗の宗派>の他の寺に伝わる素晴らしい仏像も同時に展示されます。その中には、はるばる訪ねて行っても、日程が合わなければお会いすることができない貴重な秘仏が8体もあります。かなりな仏像好きでも、今回展示される秘仏のすべてを拝んだことがある人は少ないのではないでしょうか。

こちらは、創建時の仁和寺の本尊である国宝「阿弥陀如来坐像」と、その両脇侍です。

おなかの前で輪を作った両手を組み合わせる「阿弥陀の定印」と呼ばれる印を結ぶ形式は、制作年代がはっきりしている阿弥陀如来像の中では最古のものです。

福井県明通寺の「降三世明王立像(ごうざんぜみょうおうりゅうぞう)」と「深沙大将立像(じんじゃだいしょうりゅうぞう)」(いずれも重要文化財)。2m50㎝ほどの大迫力の像です。

同じく福井県中山寺(なかやまでら)の「馬頭観音菩薩坐像」(重要文化財)。こちらは、基本的に33年に一度の開帳と決められた秘仏です。現在、東京でこの像にお会いできるのは、ものすごく幸せなことです。

わたしが今回お会いして一番うれしかったのが、こちらの兵庫県神呪寺(かんのうじ)の「如意輪観音菩薩坐像」(重要文化財)です。わたしはもともと如意輪観音像が好きで、あちこちのお寺にある如意輪様を訪ね歩いておりましたが、神呪寺のこの像は一年に一度しか開帳されず、なかなか日程が合わなくて、これまでお会いできていなかったのです。

如意輪観は、一般的に女性的なお顔とちょっとセクシーなポーズの像が多いものですが、こちらの像はどちらかと言えば男性的。わたしには、おおらかな表情で天から下界を眺めている青年のように見えます。

座り方も、一般的な如意輪観音は両方の足の裏を合わせていることが多いのですが、こちらの如意輪様は片足をもう一方の腿に乗せて、足の裏を上に向けています。こういう細かいところをあれこれ観察するのも、仏像鑑賞のだいご味のひとつです。

 

もうひとつの大きな目玉は、2月14日以降に展示される大阪府葛井寺(ふじいでら)の国宝「千手観音菩薩坐像」です。こちらは、毎月18日にのみ開帳される秘仏。神呪寺に比べればチャンスが多いので、わたしも二度ほどお会いしたことがありますが、お堂は暗めで、細部まではよく見えなかったと記憶します。しかし博物館では、じっくり拝ませていただくことができます。

※展覧会前半は、このように千手観音菩薩坐像の写真が展示されていますが、2月14日からは、実際の千手観音坐像が展示されます。

 

この千手観音菩薩坐像の特徴は、1041本もの手があることです。千手観音は、文字通り千本の手がある仏様ですが、像を作る場合は、40本と前で合掌する2本の手に省略されることが多く、実際に千本以上手がある像は、この像しか確認されていないそうです。天平時代の美意識と技術の頂点ともいえるこの千手観音像。わたしは前半に一度この展覧会に行きましたが、この像が展示される後半にも絶対行かなくてはと思っています。

 

音声ガイドは、日中合作映画「空海─KUKAI─美しき王妃の謎」に出演した阿部寛さんと染谷将太さん。

オリジナルグッズは、数々の秘仏をプリントしたクリアファイルやメモパッドなど。

国宝 「三十帖冊子」から「空」という字と「海」という字を抜き出した「空海もなか」もお勧めです。

 

特別展「仁和寺と御室派のみほとけ─天平と真言密教の名宝─」の公式サイト

http://ninnaji2018.com/

休館日 月曜、ただし2月12日(月・祝)は開館、13日(火)は閉館

 

吉田さらさ

公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

個人Facebook

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イベントのお知らせページ

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