古美術商が創造した京の美意識ホテル「ART MON ZEN KYOTO」

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「京都観光おもてなし大使」&旅ライター
アナウンサー、テレビ番組プロデューサーなどを経て、集英社「エクラ」などのライターに。
2011年より京都に在住。
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京都の祇園の北側に位置する古門前(ふるもんぜん)・新門前(しんもんぜん)エリアは、古美術商や骨董店、ギャラリーなどが連なる芸術性の高い場所。常に静寂と落ち着きが漂う通りでは、店先に置かれた品々が、その美しさと品格を無言のうちに語っています。

さて、このエリアで古美術や茶道具を扱う「中西松豊軒(なかにししょうほうけん)」は、全国の名士や文化人を数多く顧客にする店。古門前通に面した町家は、その歴史と創業以来の品格を物語る姿です。4代目当主となる中西輝之さんは、生まれながらにして本物の品々に囲まれて育ち、大学卒業後は東京・京橋の古美術商の元で、美術商としての修業を積み、その後4代目を継承します。天賦の才に研きをかけ、その審美眼と真贋の確かさは、茶道のお家元、また国内外の美術愛好家から厚い信頼を寄せられています。そんな中西さんが、4年の歳月を投じ、完成させたのが、店に隣接するホテル「ART MON ZEN KYOTO(アール モン ゼン キョウト)」です。

京都を訪れる美術愛好家が、心地よく過ごせる宿があったら…。また、多くの方に古美術への関心を抱いて欲しい…。その思いは中西さんを、ホテル建設へと導きました。近年、京都では、次々にホテルや宿が建設されていますが、「そのような一時的なブームは、全く眼中にありません」と中西さんはきっぱり。時代の流れに左右されない、他に類を見ないもの…それが「ART MON ZEN KYOTO」なのです。

 

数寄屋建築の匠、渡邊工務店と建築家、村田美紀さんと共に設計から携わった中西さん、そこに望むのは、品格・雅さ・本質の追究という「京都の美意識」からなる宿です。「古美術商が作る宿ですから、本物でなければいけない。妥協を差し挟むことのない、高い美意識から生まれた宿である必要があるんです」と。その言葉通り、全15室の客室は、中西さんの美意識の高さを物語る設えに見事に整えられています。

 

国内のホテルでは貴重な3メートル越えの高い天井。そこには加湿器が設置され、常に適度な湿度が保たれるという嬉しい設備も。また数寄屋建築に用いられる「なぐり」という手法で微妙な凹凸が施された床がある客室もあり、素足で心地よく過ごせると海外のゲストに好評だそう。他にも従来の客室内にはありえない銘木を使った太い柱が、数寄屋建築の美を醸し出すなど、ホテルの客室とは思えない設えに驚きます。

そして室内にさらなる趣をもたらす調度品は、なんと価値ある本物の美術品や茶道具です。美術館などで鑑賞するような品々が、ベッドやソファーの傍らにガラスケースに納まり置かれているのです。「ゆっくりと美術品との時間を過ごしていただけたら…」と中西さん。お茶を飲みながら、またグラスを傾けながら、その美術品を独占する時間は、なんとも贅沢。置かれる美術品は、季節やお客様の好みなどでも頻繁に替えられるそう。まるで美術館にいるような気分ながら、気に入ったものに出会えたら、求めることも可能なところが美術館と違う点。じっくりと向かい合う美術品に心奪われるゲストも多いそう。

 

次ページに続きます。

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第53回
古美術商が創造した京の美意識ホテル「ART MON ZEN KYOTO」

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