老舗の麸専門店「半兵衛麸」本店で過ごす充実の時間

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アナウンサー、テレビ番組プロデューサーなどを経て、集英社「エクラ」などのライターに。
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五条大橋のすぐそばに創業元禄2年の麸の専門店「半兵衛麸」があります。石造りの洋館と古き趣の町家からなる店構え。外からは商品の姿は見えず、また目立つ表示も一切ありません。町家に掛かる暖簾が入口。そこからは、外からは想像できない趣と品格あふれる世界が広がっているのです。

町家のエントランス部分から洋館に進むと、さまざまな種類の麸が並ぶ店舗が…。初めて訪れた人は、その展開にちょっと戸惑いながらも、次第にこの店の姿に魅力されてしまいます。

そもそも麸は、室町時代に禅僧が中国から日本に伝えたといわれ、精進料理には欠かせない食材のひとつです。麸の主原料であるグルテン(小麦タンパク質)は、小麦粉に水を加え練り、でんぷんや水溶性成分を流したもの。一般的な焼き麸は、グルテンに小麦粉を加え焼き上げ、長期保存が可能なことから、全国に食材として広く普及した食材。でも京都で麸というと、まず思い浮かべるのは、モチモチした食感の生麸。これはグルテンにもち粉を加え、茹でたり、蒸しあげたもので、京料理には、煮物、田楽、揚げ物などで登場する、まさに京の味なのです。

 

「半兵衛麸」は、初代、玉置半兵衛が、宮中の大膳亮で麸の作り方を学び、当時、寺院や宮中でしか食されることがなかった麸を、多くの人に味わってもらいたいという思いから創業。以来、現在の11代当主に至るまで、麸一筋に歩んだ老舗です。良質の水を多量に必要とする麸づくり。五条大橋のそばは、まさに水に恵まれた場所、今も敷地内に井戸が残ります。

江戸中期の思想家であり石門心学の創始者、石田梅岩に学んだ三代目当主。その時代に確立された「半兵衛麸」の家訓「先義後利」(まず利益より、人のために役立つことをし、そこで生まれた利益をまた世のためにつかう商売)は、以来、代々守り続けます。時代に合った麸の開発はもとより、それを象徴するのが、1階にある資料室と2階の「お辨當箱博物館(おべんとうばこはくぶつかん)」です。

 

入口そばにある1階の資料室には、主に江戸時代の食文化に関する古文書や公家の食器、商いまつわる資料などが展示され、京都の食文化の歴史などを知るスペースです。

また2階の「お辨當箱博物館」は、豪華な蒔絵や螺鈿が施された弁当箱が種類豊富に揃い、江戸時代の人々の野遊びや花見などの様子をうかがい知ることができます。四季折々の風情を楽しみながら、集い、味わう料理の数々。それを納め、運ぶ弁当箱に施された日本の工芸の見事さ。日本人の遊び心の素晴らしさを物語る展示品です。すべて無料で公開され、だれでも自由に見学できます。

後世に日本文化、特に食にまつわる文化を、残し伝えたいという当主たちの思いが、この展示なのです。

 

次ページに続きます。

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第58回
老舗の麸専門店「半兵衛麸」本店で過ごす充実の時間

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