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風雅な古民家宿と北国街道の宿場町・木之本、紅葉散歩案内

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

滋賀県の旅情報を引き続きお届けしていますが、今回は、琵琶湖の北岸の木之本というところにある古民家の宿に泊まって田舎風の料理を味わい、近くの宿場町を歩くのんびり旅です。

大津からJR琵琶湖線で1時間ちょっと。木ノ本の駅で降りると、宿のご主人がピカピカのロンドンタクシーでお迎えに来てくださっていました。今日のお宿は「想古亭源内」。戦国時代の古戦場で知られる賤ケ岳の麓にあります。賤ヶ岳の戦いは、天正10年(1582年)羽柴秀吉と、柴田勝家の間で起きた闘いで、秀吉側で活躍した七人が、のちに「賤ヶ岳の七本槍」と呼ばれるようになりました。

※地名は木之本、駅名は木ノ本

その当時、この賤ケ岳の麓には24軒の農家があったと言われ、お迎えに来てくださったご主人は、そこから数えて17代目。自宅を宿になさったのは14代目(現在のご主人のひいおじいさん)。この方は賤ケ岳の戦いなどの歴史に詳しく、この地を訪れる皇族や文化人を案内しておられました。その際、家にお客さんを招いて接待をしたのが、宿の始まりです。「想古亭」という名前も、そのころ14代目さんに案内された徳富蘇峰さんから賜ったとのこと。

そんな歴史を持つ風雅な田舎家では、外の世界とは違う時間が流れているようです。何か悩みごとがあっても、ここではいったんすべて忘れて、のんびり、ほっこり過ごせそう。

建物は築100年以上。今では手に入らないような高価な木材をふんだんに使った贅沢な造りです。

囲炉裏のある部屋でお食事もできます。

宿泊した文化人から届いた葉書。文字も絵もオリジナリティがあり、洒脱ですね。

 

 

お料理は、すべて、周辺地域でとれたもので作られています。

夏は貴重な天然ウナギも賞味できます。

懐石コースの合間にパスタも出ます。これは息子さんの得意料理です。

これらのお料理は夏の旬の食材を使ったものです。秋にはまた違う料理が出ます。楽しみですね。

 

 

お風呂は天然温泉ではありませんが、光明石という生体活性作用の強い天然石を主たる泉源体としてできた湯が使われています。柔らかくて肌に優しく、長いこと浸かっていても疲れません。お風呂の左側にある樽のようなものは、五右衛門桶風呂。ここにしばらく浸かると、上がってからも湯冷めしないとか。

 

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近所でとれた野菜中心の朝食。お味噌汁がとても味わい深くて気に入りました。

お味噌汁の味の決め手は、この味噌。「よそにない味、想古亭の料理のひみつ、これがみそ」と書かれていますね。親戚に味噌屋さんがいて、特製で作ってくれるのだとか。お土産に購入することもできます。

 

 

翌日はまた、ロンドンタクシーに乗り、近くの見どころを回っていただきました。

背後にあるレンガのトンネルは賤ケ岳隧道。大正時代から昭和初期にかけて建設された歴史的な建造物です。

トンネルの先から眺める琵琶湖の絶景。真ん中あたりの小さな島は竹生島です。

賤ケ岳の北側にある余呉湖。天女が舞い降りて衣を掛けたという羽衣伝説がある神秘的湖です。

 

 

木ノ本駅の東側には、旧北国街道(ほっこくかいどう)の木之本宿の古い街並みがあります。北国街道は、近畿地方と北陸地方を結ぶ街道で、古くから開けた道でした。

北国街道の石碑と懐かしい石のポスト。右側の立派な家は、「山路酒造」という460年続く酒蔵です。

宿場町のランドマークは、高さ6メートルの木之本地蔵さん。木之本地蔵院というお寺の境内にいらっしゃいます。

木之本の旧本陣跡にある、日本最古といわれる「本陣薬局」。古い薬の看板が歴史を感じさせます。

※訪れた時は、ここは修復中で看板などは見られませんでしたが、いつもはこうです。(写真は前回訪問時に撮影)

地元で知らない人はいないほど有名な「つるやパン」。いろいろ面白いパンがありますが、特にサラダパンが大人気です。たくわんをマヨネーズであえてコッペパンに挟んだアイディア商品。

幻の銘酒「七本鎗」の蔵元、富田酒造。軒下に、巨大な杉玉がかかっています。酒粕を使った石鹸やケーキも売っています。

 

次ページに続きます。

ここに来たら、お昼は必ず鯖寿司の「すし慶」さん。立派な料亭風の店内で、お庭を眺めながら食事ができます。

「すし慶」さんの鯖寿司は、鯖の身が厚いのと、すし飯の中に実山椒が入っているのが特徴。

鯖寿司だけでなく、金目のあぶり寿司もあり、お土産に買うこともできます。

 

 

木之本宿には、古くから親しまれてきたお菓子を売る店も多いです。わたしは今回は、木之本地蔵を模った地蔵せんべいとでっち羊羹を買いました。どちらも素朴な懐かしい甘さです。

 

 

 

宿場町だけでも楽しい木之本ですが、実は湖北の観音様巡りの中心地であり、そこここに、素朴で美しい観音像を祀るお寺が点在しています。その多くは常時拝観できるわけではなく、事前管理している方に連絡して鍵を開けてもらわねばなりません。しかし、中でもとりわけ有名な石道寺や己高閣・世代閣という小さな博物館などは、事前連絡がなくても拝観できます。

 

それらは木ノ本駅からバスで15分ほど東に行ったところにあり、周辺は、紅葉の名所として有名です。

ちょっと早いのですが、以前、紅葉シーズンに訪れた時の写真をご覧ください。

中でも鶏足寺付近は、11月後半には、真っ赤な紅葉が見られる関西屈指の人気スポットです。鶏足寺は8世紀に創建された立派な寺でしたが、廃寺になり、現在は、石段や建物の礎石などが残るのみ。そして、その鶏足寺にあった観音様は、現在は己高閣に収められています。このシーズンに木之本を訪れる予定の方は、ぜひ、このエリアで観音様巡りと紅葉散歩をお楽しみください。

 

 

吉田さらさ

公式サイト

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