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不思議に魅力的な作品に出会える、 バッドアート美術館展

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。

今回は、日本初、そして、もしかするとこれが最後かも知れない貴重な展覧会のご案内です。

東京ドームシティ内の「Gallery AaMo」にて2018年1月22日(木)から2019年1月14日(月・祝)まで開催される『バッドアート美術館展』。「バッドアート美術館(MOBA)」は、アメリカのボストンにある「酷すぎて目をそらせない」作品をコレクションするユニークな美術館です。今回の特別展では、800点を超える同美術館の収蔵品から選りすぐりの110点が公開されます。

創作過程のどこかで決定的に道を踏み外してしまった作品の数々。と言っても、単にヘタというだけでは、こちらの美術館に展示してもらうことはできません。誰かが真剣に描いたアート作品であること、何かを狙ってわざとヘタに描いたものではないこと。そして、その結果生まれた作品が面白く、どこかしら人を惹きつける力を持っていることが選考基準です。技術が決定的に不足している、なぜ、こんなものを題材にしたのかわからない、表現が行き過ぎている、など、こちらに展示されている絵が酷いと思われる原因はさまざまですが、どれも妙にインパクトがあり、誰かとその絵について語り合いたくなります。これまで数限りない展覧会を見てきましたが、こんな体験ははじめてです。

一般公開に先駆けて行われたオープニングセレモニーには、バッドアート美術館館長(終身暫定臨時館長)のルイーズ・ライリー・サッコさんとバッドアート美術館キュレーターのマイケル・フランクさんが駆けつけ、このユニークな美術館について詳しく説明してくれました。

ルイーズさんのお話によれば、この美術館は、1994年に、彼女のお兄さんが、この「ルーシー・イン・ザ・フィールド・ウィズ・フラワーズ」という作品に一目惚れして引き取り、家に飾ったことから始まったとのこと。もともとは、ボストン在住の美術商がこの絵を路上のゴミの中から拾い出し、絵を捨てて額縁だけを売り飛ばそうとしたのだとか。それからお兄さんのもとには、ガレージセールやゴミ捨て場で発掘されたバッドアート作品が次々に届けられ、映画館の地下などで展覧会を行うようになりました。そしてウェブサイトを開設、カレンダーや出版物も出され、ついには国際的な関心を集めるまでに。

設立当初は世界中から作品が寄贈され、彼らはその数に圧倒されました。しかし現在では、事前に作品の写真と情報を送ってもらって選考するシステムになっており、キュレーターであるマイケルさんの厳しい基準をクリアした作品が収蔵品となります。ちなみにマイケルさんが栄えあるバッドアート美術館のキュレーターに選ばれた理由は、多くの収蔵品をどこかから持ってきたという実績と、いかにもキュレーターが着そうなタキシードを自前で持っていたことだそうです。

今回の展覧会では、日本におけるヘタウマ漫画の元祖として知られるしりあがり寿氏がスペシャルサポーターとなり、独自の視点で紹介してくれています。展示作品の中には、しりあがり氏のコメントが添えられたものもあり、いっそうの笑いを誘います。

オープニングセレモニーでは、このたび新しくコレクションに加わった作品も初公開されました。「天国への階段(ゲイブとリズ)」というタイトルです。なぜ天国かというと、人物の背後の階段が途中で消えており、二人がこの階段を上って行って落ちて亡くなる直前の様子を描いた絵だからということです。ホントかしら?

オープニングセレモニーを盛り上げるために、弦楽四重奏団がモーツアルトの曲を奏でてくれました。一見格調高いが、よくよく聞いていると、微妙に調子はずれかも。

 

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しりあがり寿氏のイチオシは、この「沼ピクニック」という作品です。不思議な沼のほとりで、素敵なカップルが会話していますが、この服はなんでしょう。解説によれば、これは海面上昇や大気汚染が深刻化した近未来で流行しているペアルックの防護服であるとのことですが・・・。

わたしが気に入ったのは、妙に人間くさい顔の動物画です。これは、抱き合ってダンスをする二匹の犬を描いた「青いタンゴ」という作品。ダンスをする人々を描いたルノアールの作品との類似性が指摘されています。

こちらは「チャーリーとシーバ」。シープドッグのシーバがしつこく吠えてうるさいので、シマリスのチャーリーが、シーバの口を絆創膏でふさいだところを描いたものだそうです。でもチャーリーは本当にシマリスなのでしょうか。大きな特徴である尻尾を描かないと、見る人には何の動物か伝わらないと思うのですが。

特に笑える要素はないように見える、この「くつろぐ女性」という絵。油絵が趣味という人が普通に描きそうなテーマですよね。しかし、慧眼なバッドアート美術館のスタッフたちは、女性が頬を赤らめているのは官能小説を読んでいるせいではないかと推察しています。なるほど、そういえば、胸のはだけ方も、少し深すぎる気がしてきました。

「ケンタウロスとバイカー」。この絵はテーマ自体が謎です。作者がバイカーで、自分自身を天駆けるケンタウロスになぞらえているのでしょうか。

 

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目指したものではないかも知れないが、結果的に有名人に似てしまった絵のコーナーもあります。こちらはレゲエの神様、ボブ・マーリーをモデルにしたと思われる「ナッティ・ドレッド」。よく見ると、髪の毛に、一部、本物の動物の毛が貼り付けられています。表現に独創性が感じられます。

マイケル・ジャクソンをモデルにしたと推定される「マン・イン・ザ・ミラー?」。マイクを握る手が右手なのか左手なのか、はたまた別人の手なのか特定不可能なところが魅力。しりあがり寿氏は、これはマイクでなくちくわではないかとコメントしておられます。

全盛期のライザ・ミネリを描いたとされる「あら、お久しぶり」。作者はこの作品に自信を持てず、27年間もガレージに放置。発掘された時には、胸の部分にカビが生えていて、まるで胸毛のように見えました。長い歳月が、より芸術性を高めた一例。

宗教をテーマにした作品もあります。決して神を冒涜しているわけでないと思いますが、どこか不思議。こちらは、「ピエタと羽ぼうき」。伝統的な宗教画のテーマであるピエタ像が、なぜか羽ぼうきと一緒に描かれています。よく見ると、キリストの右手の先がグラスの中のワインに浸されています。ワインはキリストの血を表すということを象徴しているのでしょうか。

「聖母とデンタルフロス」。歯のお手入れ中に眠ってしまった聖母の姿。ブラジャーから、豊胸パットが見えてしまっているところが現代的という指摘も。

 

こうしてさまざまなテーマのバッドアートを見てくると、ご自分でも絵を描いている方は、「もしかすると、わたしの作品もバッドアートとして評価されるのでは」と思うかも知れません。そんな方は、試しに作品の画像を送ってみましょう。厳選なる審査の結果、寄贈候補作品に選ばれると、期間中にこちらの展覧会に展示されます。そしてその中から、ボストンのバッドアート美術館に正式に寄贈される作品が選ばれます。応募方法、期間など、詳しくはこちらをごらんください。

https://www.koubo.co.jp/system/contest/MOBA2018/

 

 

バッドアート美術館展

2018年11月22日(木)~2019年1月14日(月・祝)
※開催期間中無休

Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)

https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/event/MOBA2018.html

 

 

吉田さらさ

公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

個人Facebook

https://www.facebook.com/yoshidasarasa

イベントのお知らせページ

https://www.facebook.com/yoshidasarasa2


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