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巨樹の命を生かした巨大観音像を拝みに行く

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。

 

千葉県流山市はつくばエクスプレスの開通により東京からのアクセスがぐっとよくなり、とりわけ流山おおたかの森駅周辺には、新しい商業施設が次々にできて賑わっています。

 

今回ご案内するのは、その駅にほど近い円東寺というお寺です。

2022年3月に、もともとこの場所にあった大銀杏の木で彫った巨大な観音さまの像と、そのお住まいとなる観音堂が落慶しました。

 

このように、根のついた生木をそのまま彫った仏像を立木仏と言います。樹木の命がそのまま仏様に宿る形で、木や山などの自然物を神として拝む日本古来の信仰形態を思わせるお姿です。日本の各地に古い時代のものが残されていますが、数はそう多くはなく、特に現代に作られる例はとても珍しいということで、仏像ファンの間でも話題になっていました。

 

 

わたしが最初にうかがったのは2021年の6月です。

なぜその時期に行ったかというと、観音像があらかた完成し、周囲を覆うための観音堂の建設に着手する直前だったためです。観音堂が建ってしまうと、観音様の全身を外から拝ませていただくことはできなくなりますからね。

 

 

 

はじめて行くお寺でしたが、遠くからでもすぐわかりました。道路沿いに、像高5mほどの立木観音像が、すっくとお立ちになっています。前の道路を歩いて近くの小学校に通学する子どもたちを見守っているかのようなお姿が感動的。かつては樹齢400年、高さおよそ30mだった銀杏の巨樹も、同じように、この土地の人々を見守ってきたのでしょう。

右が円東寺の住職の増田俊康(ますだしゅんこう)さん、左が「この木を何とか生かしたい」という増田さんの願いを実現した仏師の畠山誠之(はたけやませいし)さんです。

 

まずは増田さんに、どのような経緯で観音像の建立に至ったかというお話をうかがいました。

増田さんがこちらの住職に就任されたのは2004年。それ以前は無住の寺で、当時のこのあたりは、まだ狸が走り回るような場所だったそうです。

その後区画整理が始まり、ここには幅40メートルの道路が通されることに。銀杏の木は伐採と決まっていたのですが、道路の幅が約半分に変更されたため、枝と根を切り落とすだけでよしということになりました。

 

「この木が残されることになったのは奇跡だけれど、枝や根を刈り込んで残すだけなんて、何だか木の命に申し訳ないようだ」と増田さんは考えました。そんなときに、東日本大震災という未曽有の大災害が起きてしまったのです。

 

そのころ円東寺で仏像彫刻教室の講師をしていたのが、仏師の畠山誠之さんです。

畠山さんは岩手県出身で、ご親戚やお知り合いが津波の犠牲になってしまいました。大震災で命を落とした無数の方々の供養のために何かしたいということで、増田さんに、この銀杏の木で仏像を彫ってはどうかと提案しました。

 

 

 

それはよいアイディアだ。では、どんな仏様を彫ろう。

最初は弘法大師像も考えましたが、供養のためならやはり観音様がよいだろう。大震災が起きたのは2011年3月11日なので、十一面観音がよいということになりました。正面の大きなお顔のほかに11のさまざまな表情の顔があるのが十一面観音です。この像では、大きい顔の両脇に2面、頭上に9面です。

 

「増田住職は、わたしの意見を取り入れて、かなり自由に彫らせてくれました」と畠山さん。

畠山さんの提案で、観音像にはさまざまな要素が加えられました。そのひとつが、根の部分に穴をあけること。ここを通って向う側に行くことで、「胎内巡り」ができるようにしたのです。これを行うと、人は生まれ変わると言われています。

 

この時点では、まだ右手がついておらず、このような形で根のところに置いてありました。2度目の訪問の際には、この手を含め、劇的に変化した観音様にお会いすることができました。

 

 

 

 

さて、2022年3月。2度目の訪問です。

2013年11月から彫り始め、あしかけ8年半。3月6日には、観音様の開眼と観音堂の落慶法要が行われました。以前観音像だけがお立ちになっていた場所には、このような観音堂が建っています。

二階の窓に何かの影が見えますが、あれが観音様でしょうか。

正面から見ると、確かに観音様のお顔を拝めます。普段の日は、この状態でしか観音様にお参りすることができず、観音堂の内部に入って直接観音様にお会いできるのは、毎年3月11日のみです。

 

「追悼のために建立された観音様ですから、みんなにこの日を忘れて欲しくないという意味で、震災の起きた日だけの御開帳としたのです」と増田さん。

 

この日は取材のための訪問だったので、特別に観音堂を開けていただきました。

 

あれ? 観音様の色が違いますね。前は生木のままでしたが、その上に柿渋を塗ったので、このように艶のある赤茶色になりました。以前と大きく変わった点がもうひとつ。右手に錫杖と呼ばれる長い杖を持っています。上部についている輪をじゃらじゃら鳴らして、魔を祓ったり、「あなたを救いに来ましたよ」と知らせる役割を持つとされる持物です。これも当初の計画にはなかったものですが、畠山さんの発案で付け加えられました。

 

正面のお顔もりりしく、頭上や両脇の小さなお顔の表情も、よりくっきりしています。

 

 

頭の後ろには、あまり穏やかではない笑いを浮かべた顔もあります。

この表情には、いくら救っても間違いを犯してしまう人間を嘲笑って諭すという意味があります。

 

以前、木の根元に置いてあった手はこうなりました。

仏様の手の指の間には、一度により多くの人を救うための水かきのようなものがついていますが、それもはっきり確認できます。

 

足の指や衣のひだもリアルに彫られています。「手足は特に力を入れたのでよく見てくださいね」と畠山さん。

 

胎内巡りも階段がついて、よりくぐり抜けやすくなりました。一瞬で生まれ変われるツアーに行ってきます!

 

 

立木観音様以外にも、円東寺さんには、他のお寺とは違う魅力的な特徴がありますので、そちらもご紹介しておきます。

まずは、増田住職が、たいへん多芸な方であることです。「PRINCOちゃん」という別のお名前もあり、大道芸人としても活動されています。得意技は、バルーンアートとジャグリングです。

 

ジャグリングを実演していただきました。お見事です。

 

流山市指定の石造十二神像もあります。薬師如来の補佐をする十二人の手下で、戦いの姿をしています。

こちらの石像は江戸時代にできたもので、本堂内にお祀りされています。それぞれの頭の上に何か乗っているのがわかりますか?

 

十二神将は十二体なので干支に対応しており、乗っているのは干支の動物です。

お参りする機会があれば、自分の干支の神将様を探してみてください。

 

 

「なぞなぞけいじばん」にも注目してください。

前の道を歩く子どもたちになぞなぞを出して答えを考えてもらう仕組みになっています。けれどこれ、大人でもちょっと難しい問題ではないでしょうか。

 

仏像イラストレーターの田中ひろみさん作の立木観音のイラストが入った、かわいい御朱印帳もございます。

 

 

最近できたのは、この「おおたかの森庭苑」。近年人気の高い樹木葬の墓地です。

瓦のように見えるものが墓標で、小さいのが一人用、大きいのが家族用です。大きい方にはペットと一緒に入ることもできます。生前に準備しておくことも可能なので、樹木葬を考えている方は、一度見学してみては。

 

 

次に立木観音様のお姿を直接拝めるのは2023年3月11日になりますが、それ以外でも何かと楽しい円東寺。

素晴らしいケーキ屋さんやレストランなども付近にあるので、ぜひ、流山観光とセットでお出かけください。

 

円東寺で開催される行事など、詳細情報は、こちらの公式サイトをごらんください。

 

 

𠮷田さらさ 公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

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