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近代 今右衛門・柿右衛門の美しさに出会う 「井村美術館」

小原誉子

小原誉子

「京都観光おもてなし大使」&旅ライター
アナウンサー、テレビ番組プロデューサーなどを
経て、集英社「エクラ」などのライターに。
2011年より京都在住。
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「下鴨神社」の西側、下鴨本通り沿いにレンガ色のビルがあります。1階は、オールドバカラなどの西洋アンティークや江戸時代から現代の肥前磁器を扱う「京都美商ギャラリー」で、そのビルの地下に「井村美術館」という美術商の井村欣裕さんが、研究・蒐集した有田焼の名工、今右衛門と柿右衛門の作品が展示されている個人美術館があります。

「美術をもっと身近に感じて頂きたい」と、井村さんが蒐集した作品を展示する美術館を作ったのは1981年のこと。

「国内だけでなく、ヨーロッパに行くと、伝統の技を継承した素晴らしい美術品に出会うことがあるんです」

と美術商として、欧米諸国にも足を運び蒐集した品々が、展示室や特別室に展示されています。

なかでも井村さんを長年魅了し続けているのが、江戸期に日本の磁器を発展させた名工、柿右衛門と今右衛門。柿の実を眺め、磁器に赤絵を使う技術を思いついたという逸話で知られるのが初代柿右衛門です。

 

「肥前、鍋島藩の御用窯として発展した有田焼は、江戸中期から長崎出島で東インド会社を通じ、ヨーロッパへ輸出が本格化し、その優れた技術と美しさから王侯貴族が愛する美術品として保有されることに。今も多くの作品が、欧米諸国の美術館などに所蔵されています。

十二代柿右衛門 「染錦 初代画額皿」

 

ところが、18世紀以降の江戸中期、マイセン窯の発展で、日本からの磁器の輸出はほとんどなくなります。そのため、有田の窯元は、欧州の王侯貴族用に制作された豪華絢爛で高価な美術品から、国内向けの日常使いの器の大量生産へと方向転換を余儀なくされます。さらに廃藩置県で、もともと藩の管轄下にあった窯元は、藩の庇護をなくし経営自体を自ら担うことに。そんな激動の時期、衰退してゆく有田焼の優れた技術と作風を復興させようと尽力したのが、近代の十代今右衛門、十一代柿右衛門で、それ以降の作品にも心惹かれ、30年以上蒐集と研究を続けているんです」

と井村さん。

九~十代柿右衛門「染付 草花文長皿」

 

「かつてヨーロッパの人々を夢中にした有田の焼物。現在、十五代を数える柿右衛門、十四代となる今右衛門…その長い歴史の中で、近代の十一代柿右衛門の作品は、激動期にあってあまり名前も知られず、その作とわかるものが多くないんです。しかし、確認できた作品は、いずれも初期の苦心までもが感じられる丁寧なものづくりです」

と井村さん。

 

「井村美術館」には、その近代の有田美術陶芸の復興に尽力した十代今右衛門以降と歴代柿右衛門の作品、約50点が展示されているのです。

 

「近代の柿右衛門や今右衛門の作品は、伝統の技を継承しながら、そこに独自性を強く表現した作家の意欲を感じます」

と続けます。

 

十一代柿右衛門「染錦 羽根模様皿」

十一代柿右衛門 「柿形香合」「蝉の巣香合」

 

 

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