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世界が注目、日本の美意識/①山村博美さんインタビュー

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世界が注目、日本 の美意識

 

 

著者interview

美は世につれ、人 につれ。 移ろう基準も 紐解けば本質が見えてくる

 

日本文化を化粧という切り口で紐解いた『化粧の日本史』。著者 の山村博美さんは、化粧品会社勤務を経て、美容ライターとして活 躍するかたわら、化粧文化を専門とするフリーの研究者です。 「大学時代に色彩に興味がわき、化粧やおしゃれに目覚めたのもそ の頃。当時流行ったサーファーやニュートラなど、ひと通り経験し ました」

 

就職した化粧品メーカーの研究所で、古今東西の化粧文化の資料 に埋もれる経験が、山村さんの基礎を作り上げたのでした。 「歴史的に見れば、化粧に対する認識は、西欧と日本でまったく対 照的。キリスト教の教えで化粧は虚飾、しないほうがいいとされて いた西欧に対し、日本では化粧をするのは礼儀のひとつ。特に日本 では、化粧がその人の社会的属性まで物語る、ノンバーバル(非言 語)コミュニケーションとして機能していたほど一般的でした」

 

肖像画を見てもわかるように、西欧の化粧は、あくまでその人自 身の美しさを際立たせることが目的なのに対し、日本では江戸時代、 女性は結婚でお歯黒を、出産したら眉を剃ることが定着、化粧ひと つで女性が人妻か、母親なのかまでわかったそう。化粧に使う色も 白い肌に映える赤い唇に、お歯黒という白・赤・黒の三色が基本で、 それ以外は使わないのも特徴的だったのです。

 

山村さんご自身は充実していた研究生活を送っていましたが、体 を壊したことで17年目に退職。普通なら落ち込むところを、「時間 ができたのだから、今までできなかったことを」と、学芸員の資格 取得に挑戦してみごと合格、TOEICも受けてスキルをアップ。美 容業界誌から仕事の依頼も来て、着実にキャリアを重ねていたある 日、日本の化粧文化史の執筆依頼が舞い込みます。

 

しかし、順調に行けば「本当は2年以上前に出ているはずだっ た」本の出版は、更年期によるメンタルの不調で大幅に遅れるとい う事態に見舞われます。 「資料を読み込むという作業は、鬱々とするくらい調べなければな らないもの。それが楽しかったのに、調べれば調べるほど心配にな って、そのうち一字も書き進められなくなり…」

 

スランプから抜け出すきっかけは、人からすすめられた朝の散歩 だったそう。 「最初は足元ばかり見て歩いていたのが、しだいに周りの景色を見 渡すことができるように。ようやく嵐が過ぎたという感じでした」

 

でも、この時間があったおかげで、化粧について改めて整理でき、 昭和末期まで取り上げた、これまでに例のない本に仕上げることが できたのでした。 「平成も四半世紀が過ぎ、昭和もすでに過去。プチ整形やボトック スなど美容整形がこれだけ一般的になってきて、化粧文化は今、大 きなターニングポイントを迎えているのかもしれません」

 

あと2冊上梓するのが目標と語る山村さんの表情は、好きなこと に真っすぐ向かっている人らしい、清々しい明るさに満ちています。 次はどんな化粧の世界を見せてくれるのか? 楽しみにしています、 山村さん!

山村博美

山村博美さん

Hiromi Yamamura

1961年生まれ。東京女子大学文理学部英米文学科で東 西の比較文化論を学ぶ。おしゃれも楽しくなり、就職は 化粧品会社に絞り就活、その甲斐あって某化粧品会社の 宣伝部にめでたく就職。ほどなく研究所に異動、化粧文 化にまつわる資料編纂に携わることで、研究の面白さに 目覚める。健康上の理由で退職したのちは、フリーの美 容ライターとして独立、活動の場を業界全体へと広げる。 『化粧の日本史』は、初の単独執筆の著書

『化粧の日本史 美意識の移りかわり』

『化粧の日本史 美意識の移りかわり』 

 

山村博美 著/吉川弘文館  1,700円

 

日本の化粧文化の変遷を、古代から昭和に至 るまで網羅した初めての通史。いわゆる古文書 だけでなく、当時の雑誌や新聞記事まで調べた データに基づく記述は、偏りがなく、しかも読 みやすい。私たちの美意識がどういう流れで生 まれたのか、この一冊を読めば腑に落ちます。

 

 

撮影/矢部ひとみ〈山村さん〉 藤澤由加〈本〉

取材・文/佐野美穗

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