はた迷惑な(!?)天才・井原西鶴と盲目の娘との二人三脚の物語

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出版社勤務を経て、ライターに。『MORE』『COSMOPOLITAN』『MAQUIA』でブックスコラムを担当したのち、現在『eclat』『青春と読書』などで書評や著者インタビューを手がける。

まだまだ続きそうな暑さに加えて、天気の急変も気になるこの季節。
快適なのは室内!ということになりがちなので、「読書で気分転換を」と考える方も多いのではないでしょうか。

 

 

そんなときオススメなのが時代小説。
夏の風景、例えば「縁側に坐って蚊遣りの杉葉を焚いている」みたいな描写を読むと、どこからかその香りが漂ってきて、気分が変わるような気がするのです。

 

 

時代小説には根強い人気があり、ジャンルも作風も百花繚乱状態ですが、私が好きなのは歴史上の出来事や人物をもとにしたフィクション。

 

 

真実かどうかは別として、資料を読み込んだ作家が「事件の背後にはこういう事情があったのでは」「この人物は意外とこんな性格だったのかも」という見方を示した小説はとても新鮮!
フィクションの部分も多いので、純粋にエンタメとして楽しめるだけでなく、かつて歴史の授業で習ったことが思い出されて、お役立気分が味わえるのもうれしいものです。(笑)

 

 

そんな歴史フィクションの中で今回ご紹介したいのは、朝井まかてさんの『阿蘭陀西鶴』。
エンタメ小説の祖とも言われる江戸時代の浮世草子作者・井原西鶴の人間像を、盲目の娘・おあいの視点で描いた小説です。

書評_photo

『阿蘭陀西鶴』
朝井まかて 講談社文庫 ¥700(税別)
「阿蘭陀」は西鶴が生きた時代では「異端」という意味。自らそう名乗った西鶴と盲目の娘・おあいとの物語には、元禄文化が栄えた頃の大坂の活気と庶民の本音が感じられる。朝井まかてさんは2014年に『恋歌』で直木賞を受賞した大阪府出身の作家で、本作は第31回織田作之助賞受賞作

 

 

実は、先ほどの「縁側に坐って蚊遣りの杉葉を焚いている」という文章も『阿蘭陀西鶴』からの引用。
また、西鶴に盲目の娘がいたことは史実のようです。

 

 

「盲目の娘の視点で描いた小説」とは不思議な感じもしますが、おあいは目が不自由ながら亡き母に教え込まれた家事を見事にこなしているくらいなので、それ以外の感覚――聴覚・味覚・嗅覚・触覚がすべて鋭い。そして何より賢い。

 

 

父親の姿は見えなくても、わずかな気配でそろそろ帰宅することがわかるし、声の調子などで考えていることもなんとなくわかるのです。
もちろん父親以外の人物に対しても彼女の観察力は発揮されますが、反面気づかなくてもいいことまで察知することも。

 

 

それゆえこの物語には複雑な味わいが生まれますが、基本的におあいは自己憐憫におちいるような女性ではありません。
亡き母と同じように家事を切り盛りし、仕事にしか興味がない父を助けることが自分の役割――そう心得ているから、控えめでたくましい。

 

 

ただ、おあいの父親に対する見方はかなりクールです。
それは、母の苦労を知っているから。そして、母が亡くなったあと、父は弟ふたりを躊躇なく養子に出したから。

 

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第39回
はた迷惑な(!?)天才・井原西鶴と盲目の娘との二人三脚の物語

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