さあ、この先にはどんな世界が広がっているんだろう」――本を読み始めるときはいつもワクワクしますが、ちょっとした緊張感があるのも確か。
多分それは、本の帯情報などである程度の前知識を得ていたとしても、自分との相性は読んでみないとわからないから。
たとえるならば、転校生として教室に入ったときの「なじめるのかな」という気分のような?(転校生経験はないけれど)そしてその相性は、20ページほど読めばだいたいわかる、というのが私の実感です。
今回ご紹介する『ボージャングルを待ちながら』は、昔からの友人に「とても素敵なお話なの!」と勧められた本。
「彼女が言うのだから間違いないはず」と思って読み始めましたが、いきなり冒頭で衝撃を受けました。
「ぼくが生まれる前、パパは銛(もり)でハエをとるのを仕事にしていたそうだ。パパは使っていた銛と、つぶれたハエを見せてくれた。」
「え、本当?」と思ってページをめくっていくと、次々に「ぼく」とパパとママの驚くべき日常が現れます。
本と自分の相性を考えるまでもなく、いきなり“そっちの世界”に連れていかれたのだから、呆然というか痛快というか。
こんな経験、あまりなかったような気がします。
『ボージャングルを待ちながら』 オリヴィエ・ブルドー 金子ゆき子訳 集英社 ¥1700(税別) 「現実がありきたりだったり、悲しかったりしたときは、面白い作り話を聞かせて」。そう言う美しいママを中心にした家族三人の幸せな暮らしは、彼女の悲しい異変をきっかけに徐々に崩れていく。フランスで50万部超えのベストセラーになった、著者のデビュー作
さて、そんな「ぼく」とパパとママの日常を具体的に紹介すると……
●儲かっていた何軒もの車検場を売って、働きに出る必要がなくなったパパは、デビューの気配がない“作家”。彼はママの意向で、彼女を二日と続けて同じ名前で呼ぶことはない。
●普段のママはどんなことにも夢中になり、世の中の進歩にいちいちはしゃいで陽気に跳びはねながらついていくような人。優美なアネハヅルを旅先から連れ帰り、以来一緒にすんでいるが、美しい引き綱をつけて繁華街に連れて行こうとして通行人に怖がられたことも。
●パパとママはひっきりなしにところかまわず踊ったが、いつもかけるのは悲しいけれど同時に陽気なニーナ・シモンの〈ミスター・ボージャングル〉。大勢のお客を招いて食べて飲み、みんなで大笑いする日々だったので、「ぼく」は小学校生活になじめない。というか、家族全員学校のやり方とそりが合わない。
こんなエピソードが目まぐるしくつづられていきますが、「いやはや楽しそう!」「こんなに現実を無視してはしゃげるなんてパパもママもタフね~」などと思う一方で、「これって永遠に続くものなのかしら。楽しすぎる日常には寿命があるのでは?」という不吉な予感が頭をよぎって……。
そしてそれは残念ながら当たってしまいます。
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