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雨宮処凛さんに聞く。『女子の呪い』を解く魔法ってある?(前編)

 今の社会の”ひずんだあり方”に、常に問題を提起し、発信しつづけている作家の雨宮処凛さん。新刊 『「女子」という呪い』 が、大きな話題を呼んでいる。
帯には 「この国で『女子』でいることは、かなりしんどい」 とある。
子供の頃から「女のくせに」「女なんだから」・・・と言われ続け、大人になってなお、その呪縛から逃れられない、女性たちの”生きづらさ”について、真正面から取り組んだエッセイ集だ。軽快でユーモアを含みながらの文は、「そうだよね、なるほどね!」という気づきに満ちている。今、なぜこのテーマなのかをうかがった。

(取材・文/水田静子、撮影/山下みどり)

 

理想の結婚相手は”おしん” ?

30代男子の言葉に、倒れそうになった

 

「ジェンダーとかフェミニズムというテーマについては、実をいうと私自身、どこかハードルが高いと感じて、これまで避けていた部分があったんです。あまり勉強していなかったこともありますが、逆に詳しく学んでしまったら、きっと何を見ても誰を見ても腹が立ってしまうだろうし(笑)、自分自身、これまで以上に生きづらくなってしまうだろうという思いもあって」。

ウェブメディア『imidas(イミダス)』で『生きづらい女子たちへ』という連載を始めて、8年近く。

自らの生きづらさを見つめることから始まり、じわじわと広がる貧困と、それを生み出す社会の構造へと次第に視野を広げ、ペンや行動で果敢に異議を唱えてきた雨宮さん。その中で、「女性」の生きづらさを追っていると、どうしてもこの大きなテーマにぶつからざるをえなかった、と言う。

「書き始めてみると、女性たちの多くが私と同じだった。疑問を抱いて、イラついて、でもどうしたらよいのかわからず葛藤していることがわかったんです」

 

 

 

 

しっかりとこちらの目を見て話す雨宮処凛さん。テーマについて熱い思いを秘めながらも、口調はおだやかだ。本書の帯には「男以上に成功するな」「女はいいよな」「男の浮気は笑って許せ」「家事も育児も女の仕事」「若くてかわいいが女の価値」・・・・等々と、どこかで聞いた覚えのある腹の立つ決まり文句、まさに「女子への呪いの言葉たち」が挙げられており”こういうオッサンを、確実に黙らせる方法あります”という、痛快なコピーが添えられている。

 

誰もが憶えのある言葉を見るだけでも、女性に生まれただけで、なぜひとりの人間としてではなく、「女」と「ひとくくり」に押し込められるのか、という疑問が湧いてくる。場合によっては窮屈な、ときには屈辱的な人生を送らねばならないことになるのはなぜかを、雨宮さんの文章は、彼女らしい目線でわかりやすくひもといていく。

 

たとえば本書には、昔懐かしの『おしん』が登場する。かつてNHKの朝の連続ドラマで大評判となった、あの、貧しくもけなげで、苦労ばかりしていた主人公のおしんだ。雨宮さんは最近、30代の男性から「結婚相手の理想は〝おしん″です」と言われて、仰天したというのだ。

「めまいがして倒れそうでした(笑)。こんなに若い男性にも、耐え忍ぶ女性が理想なんていう人がいるんですから。いまだ女性を家政婦か、奴隷のようにしか思っていないのかも、とショックでした。

 

でもこれって辿っていけば、その男性を育てた母親に責任があるんじゃないかなあと思って。

彼は自分の父親や親戚に、威張られても従っている母親を見て育っているわけです。女は男に従うもの、従順でなければならないという、それはまさに刷り込みですよね。ある意味、ダメ男の製造をしてしまっている。父から息子へと連鎖していくわけです。でも、もう今の時代、そういう男性と一緒に生きていきたいという女性は、なかなか現れないはずですよ。結局のところ、息子の人生の選択を狭めてしまっていると母親は気づかない」。

→困ったおじさんが「おしん」を求める実態とは?

 

ОurAge 世代女性も苦しむ「昭和の呪い」。

そろそろ終わらせませんか?

 

確かに、威張る男はイヤだと言いながら、母親からすると、息子はつい、甘やかしてしまいがち。

夫に対しても、そんなに強くは言えないで、受け流しつつも最後は耐えてきたのが私たち世代かもしれない。

 

「『OurAge』の読者さんは40~50代だとすると、親世代が70~80代ぐらいで戦中・戦後スグ派でしょうか。その親世代からの、”刷り込み”も大きいと思いますね。何の根拠もなく『男は立てなくてはいけない』『男が言うことは聞かなくてはいけない』などと教えられ続けて、自然にそれが身についてしまった人も多いんじゃないかと思います。

たとえば食事についてさえも、男が先に食べるとか、男たちにはご馳走を出すとか。私自身も同じ世代ですが、田舎で育ったので、そういう男女差別はあまりにも普通にありました。同じ人間なのに、よく考えればおかしなことですよね。」

昭和の家庭、確かにところどころにそんな光景があった。今でも、そういう家はあるだろう。

 

 

「親戚一同が集まったとき、おじさんたちは座ったままで、女たちだけが台所で忙しく立ち働いている、という光景も、よく見ました。

今でもはっきり思い出すのは、私のいとこの女性が20代で亡くなったとき。娘を亡くしたお母さん、つまり私の叔母が、葬儀などを一通り終えた食事の席で忙しく給仕をしていました。親戚のおじさんたちは労わるどころか『ビールないぞ!』などと大声を出して呼びつけていて。女はこんなに悲しいときでも料理を運んで、酒を注がなければならないんだと、ものすごく腹が立ちました。

被災地の避難所でも同様のことがあったと聞きます。避難所でも朝から晩までお米炊いて、おにぎりを握ってと、女性は常に働いている。炊事は女の仕事と思っている男性たちには、そんな女性たちを手伝うという発想がまったくない。

それこそまるっきり『おしん』の世界ですよね。

 

 

そんなのもう、若い人があこがれるどころか、女にとってはとんでもない状況。次の世代に引き継いでいてはいけないものだから、ここらへんでいいかげん終わらせようよ、と思うんです。

 

 

『「女子」という呪い』雨宮処凛著 集英社クリエイティブ 1100円(+税)

 

プロフィール

あまみや・かりん 1975年、北海道生まれ。作家、活動家。バンギャル、右翼活動家を経て、2000年に自伝的エッセー『生き地獄天国』でデビュー。数々の著作を発表する側ら、イラクや北朝鮮へ渡航を重ね、紛争や問題の起こる現地の状況を直接取材。格差や貧困についての取材、執筆も精力的に行う。『生きさせろ! 難民化する若者たち』でJCJ賞受賞。反貧困ネットワーク世話人。著書に『一億総貧困時代』など多数。新刊『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)には、各方面から賛同の声が集まっている。

 

→続きは後半へ! 若い女性の生きづらさは他人事じゃない。65歳以上の単身女性の半数以上が貧困というデータも?

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