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奥田瑛二さんが語る生と死と、妻との関係(インタビュー/前編)

シブくてダンディ、大人の男の色気がビシバシ伝わってくる俳優・奥田瑛二さん。

主演映画『洗骨(せんこつ)』が間もなく公開される。

切れ者、クセモノ、クールで情け容赦ない男のイメージが、本作では大逆転。

優柔不断で意志薄弱、グズグズのダメ男っぷりに、びっくり!

ベテラン俳優の奥田さんは何を思って今、この作品にチャレンジしたのか?

 

撮影/萩庭桂太 取材・文/岡本麻佑

奥田瑛二さん

Profile

おくだ えいじ●1950年3月18日、愛知県生まれ。1979年『もっとしなやかに もっとしたたかに』で映画初主演。ドラマ『宮本武蔵』(84年/NHK)や『男女7人夏物語』(86年/TBS)で人気を博し、映画『海と毒薬』(86年)で毎日映画コンクール男優主演賞、『千利休・本覚坊遺文』(89年)で日本アカデミー主演男優賞、『棒の哀しみ』(94年)でキネマ旬報、ブルーリボン賞など9つの主演男優賞を受賞。近年の出演作に『64-ロクヨン-』(2016年)、『散り椿』(18年)など。また映画監督としても才能を発揮、『長い散歩』(06年)をはじめ、高く評価されている。妻はエッセイストでコメンテーターの安藤和津、長女は映画監督の安藤桃子、次女は女優の安藤サクラ。

 

 

演じたのは“ゴミみたいな”男

 

「キャッチコピーを自分で考えました。“笑って泣いて、笑って泣いて、やがて微笑む”、そういう映画です」

 

奥田さんが演じる主人公・新城信綱は、沖縄の離島・粟国島(あぐにじま)に住む中年男。昼間から部屋のカーテンを閉め切り、酒浸りの毎日だ。

4年前に妻を亡くし、以来、立ち直れない。うつろな目、無精ひげ、だらんだらんに伸びきった下着姿。こんな情け無い、ふがいない、だらしない姿の奥田さんを観るのは、初めてかも。

 

「台本を読んでみたら、これはもう、やるべきだと思いました。僕はデビュー以来、文芸作品に出演したり、アウトロー役が続いたり。ここ7~8年は年齢のせいか、企業のトップとか検事正とか新聞社の局長クラスとかね。怒り混じりの台詞を機関銃みたいにまくしたてる、まあちょっと知的な重鎮さんというか狡猾なヒールというか、そういう役が多かった。

クセのある悪役は面白いけど、ちょっと疲れていたんです。もっと人間ぽい、清濁合わせ飲むような役がどうして来ないんだろうと思っていた。そこに、この話が来たわけです。よし、昔の自分に戻って取り組もう、今の奥田瑛二を全部剥ぎ取って、役者としての奥田瑛二をもう一回、構築しようと思ってね」

 

撮影現場では、「空気の抜けた風船みたいな、落ちていたらただのゴミみたいな」男になりきって、その場に“いる”ことに専念したという。

妻を喪ってから4年後、その男は『洗骨』という儀式を迎える。

〈風葬で弔った妻の骨を洗い、改めて埋葬する〉と聞くと、怖じ気づいてしまうけど、粟国島の大自然を背景に物語が展開していくと、その行為は至極当たり前のことのように思えてくる。

 

「そうなんです。なにしろ天国に一番近い島、ですからね。自分が死んだ後、この海、この空、この夕陽、この満天の星空の下に置いてもらったら、自由に天空を飛び回れる魂になれるなって、その場に立った時に思いました。

粟国島は本当に何も無い、美しい島なんです。あの世とこの世が共存していて、この島の人たちは幸せだと思う。僕もいつかここに、と、本当に心から思いましたよ」

シリアスな内容ながら、作品全体を流れる空気はあたたかく、ゆるゆると流れる沖縄時間の中に、ユーモアがにじみ出す。ガレッジ・セールのゴリこと照屋年之監督は〈洗骨〉という風習の中に、人の優しさと生命への讃歌を見ているのかもしれない。

 

それにしても。妻に先立たれた男は、こんなにも打ちひしがれ、立ち直ることができないものなのか。

 

「ねえ、このところ身近に亡くなる方も多いから、僕も考えてしまってね。もしそんなことになったら、僕は妻に幸せを感じさせてあげることはできたのか、苦労ばかりかけてしまったのではないかと、自責の念に打ちのめされるのがわかっているから、辛いです。

だからってわけじゃないけど、僕は7年くらい前から、妻にはちゃんと日常的に『ありがとう』を言うことにしたんです。最初のうち妻は『なによそれ、冗談めかして!』とか『心にもないことを』とか鼻で嗤っていたけど、めげずに続けたらだんだん様子が変わってきた。僕の『ありがとう』をちゃんと受け止めてくれて、そこから夫婦として向き合っているという実感が生まれましたね。

『ありがとう』だけじゃなく、何かむっとすることがあっても飲み込んで穏やかに接したり、優しくなれる自分を作っておくと、お互いに気持ちが良い。それは、ちょっと高級なキャッチボールですよね。夫婦っていくつになっても、いつからでも、そういうふうに歩み寄ることができる。僕はそう思います」

 

役者の原点に立ち戻った奥田瑛二が演じる、情け無い中年男と家族の物語。“泣いて笑って、最後にほっこり”する作品だ。

 

(自身の健康について語った、インタビュー後編はコチラ

 

 

『洗骨(せんこつ)』

沖縄の離島・粟国島に住む新城家の母・恵美子が亡くなった。4年後、島から離れていた息子・剛(筒井道隆)と娘・優子(水崎綾女)は、ひとり家に残る父・信綱(奥田瑛二)のもとに戻ってくる。島には風葬で弔った4年後、その骨を海水や酒で洗い、再度埋葬する風習が残っているのだ。信綱は今も妻の死を受けいれられず、酒浸りの毎日。剛はなぜか家族を連れてこず、優子は出産間近の臨月だが、父親の名前を明かそうとしない。バラバラの気持ちを抱えたまま、母の洗骨の日が近づいてくる・・・・。

1月18日(金)より沖縄先行公開、2月9日(土)より丸の内TOEIほか全国公開。

配給:ファントム・フィルム

監督・脚本:照屋年之

出演:奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女、大島蓉子、坂本あきらほか。

(c)  『洗骨』 製作委員会

公式サイト:http://senkotsu-movie.com/

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