今年いただいた年賀状で目立ったのが、「定年まであと〇年」「第二の人生を模索中」などという言葉。
考えてみれば、私も社会に出てから35年以上になります。自営業やものすごく出世した方などを除けば、“現役に一区切り”という時期に差し掛かっているんだな、としみじみ。
そのせいか、最近気になるのが“私たちが現役だったのはどんな時代?”ということ。
バブルの盛り上がりとその崩壊を経験し、数々の大きな自然災害・人的災害にショックを受け……もちろん喜ばしいニュースもたくさんありましたが、なかなか大変な時代だったことは確かです。
忘れてならないのは、パソコンや携帯の普及。世の中をすっかり変えてしまいましたよね。
そんなわけで“過去を振り返りたいモード”だった私にピタリとハマった本が『日本の同時代小説』。
鮮やかな切り口と語り口で読む人をうならせる文芸評論家・斎藤美奈子さんの最新刊で、話題になった本からその時代の性格を浮かび上がらせた意欲作です。
『日本の同時代小説』 斎藤美奈子 岩波新書 ¥880 この50年の小説と社会の関係を幅広く考察。純文学やエンタメだけでなく、エッセイやノンフィクション、ケータイ小説などにも触れた視野の広さが魅力。“(山口百恵の)『蒼い時』のヒットは、タレントの自伝というジャンルを形成”など、ナルホドの指摘がいっぱい
1960年代から2010年代までの本が10年単位で取り上げられていますが、まずは自分が気になる時代や忘れられない本から読み始めてもいいかも。
そこを中心に前後を読んでいけば、じわじわと理解が広がっていくはずです。
さて、私にとっての同時代小説といえば、1960年代の終わりからもの。
興味を持つきっかけになったのは、思春期にちょっと背伸びして読んだ年上世代の愛読書でした。
60年代を代表する青春小説といえば、この二冊。柴田翔の『されど われらが日々――』(1964)と、庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1969)でしょう。
斎藤さんご指摘のこの二冊にすっかりハマったことで、それまで読んでいた課題図書的な本からちょっぴり脱皮。
70年代の終わりには、中沢けいさんの『海を感じる時』や見延典子さんの『もう頬づえはつかない』の赤裸々な描写にドキッとさせられ、村上春樹さんの『風の歌を聴け』を読んで「よくわかんないけど、おしゃれ!」などと無邪気に喜んだりしていました。
ものすごく気取って言えば、新しい文学の波を感じつつ、大人になることに恐れと憧れを抱いていた、という感じ!?
そんなふわふわとした乙女心は、1981年に出た一冊の小説によって木っ端みじんにされます。
それは田中康夫さんの『なんとなく、クリスタル』。
モデルクラブに所属している女子大生・由利の日常を描いた小説で、彼女の服のブランド名や食事をしたレストラン名などが記載され、それらに注釈までついていたことを覚えている方も多いでしょう。
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