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梅雨どきの鬱陶しさを晴らしてくれる さわやかな青春時代小説

山本圭子

山本圭子

出版社勤務を経て、ライターに。『MORE』『COSMOPOLITAN』『MAQUIA』でブックスコラムを担当したのち、現在『eclat』『青春と読書』などで書評や著者インタビューを手がける。

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天気予報ほど、誰もが興味を持つテレビ番組はないんじゃないかな、とよく思います。「今日も暑い(寒い)一日になるでしょう」と言われると、「いい加減にして」とぼやきながら着るものを考え、少しやわらぐとほっとひと息。
季節を問わず、雨で行動が左右されることは多いので、特に降水確率を気にする方もいらっしゃるでしょう。

 

 

 

私は低気圧が近づくとかなりの確率で頭痛が起きるので、そこもチェック。どうやら作家にはこのタイプの方が結構いらっしゃるらしく、原稿の進み具合に気圧が関係してくることもあるのだとか。
そういう場合担当編集者は、締切のデッドラインと天気図をにらめっこ……なんて話を聞いたことがあります。
あ、私はコーヒーを飲んだり鎮痛剤に助けてもらったりして、何とかやっていますよ(笑)。

 

 

 

先日も天気予報を見ながら「人っていつの時代もお天気で一喜一憂したんだろうな」とぼんやり考えていたのですが、その流れである人物のことを思い出しました。
彼の名は水上草介。梶よう子さんが描く時代小説『柿のへた』『桃のひこばえ』の主人公で、御薬園同心。幕府の施設である小石川御薬園で、薬草栽培や御城で賄う生薬の精製に携わる青年です。

書評カバー

(左)『柿のへた 御薬園同心 水上草介』
(現在は文庫化)
梶よう子 集英社 580円(税別)
(右)『桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介』
梶よう子 集英社 1700円(税別)
御薬園同心・草介のもとにはなぜか、さまざまな問題が舞い込んでくる。剣術の試合になると吃逆(しゃっくり)が止まらない、漢方を使った菓子を作りたい、八日で三貫目(約十一キログラム)落としたい……。それらに対して草介が取った行動は? 南町奉行所に勤める同心・高幡、小石川養生所の蘭方医・河島など、個性豊かな周囲の人々との交流も読みどころ

 

 

 

つまり、彼は植物を育てることがお役目なので、お天気には人一倍敏感。もちろん、江戸時代にテレビの天気予報なんてないので、空を見上げたりして陽の照り具合や風を予測しています。

 

 

 

でも今も昔も、多少の対策はとるにしても、結局はそのときどきのお天気を受け止めるしかないですよね。だからつい愚痴ったりしがちですが、草介は植物を眺めながらこう考えるのです。

 

 

 

「春から夏にかけて、かなり空が不機嫌だった。(中略)ただ、そうした気候の乱れがあったせいか、ムラサキやハナスゲ、紅花、マンネンロウ(ローズマリー)といった初夏の花と、薄荷、馬簾菊など盛夏の花たちも一緒になって、咲いている。草木たちはこうして季節や気候と折り合いをつけながら生きているのだ」

 

 

 

草木も人間も“それぞれ個性や役割があるし、みんな大いなる自然のもとで懸命に生きている”と考える草介。
そんな人物だから、「折り合い」という植物が持っている柔軟性が、自然と自身にも備わったんじゃないかな……という気がしました。

 

 

 

とはいえ、時は江戸時代。士農工商のトップにいる以上、上から目線で当たり前の武士なのに、生き物すべてを等しくやさしい目で見つめる草介は、時に「変わり者」と言われます。
加えて“機を見るに敏”とは真逆ののんびりタイプなので、部下である園丁頭から「なにをのんきに考えていなさるんです」と言われることも。

 

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