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がんの痛み・つらさの解決方法は?

いしまるこ

いしまるこ

やる気はあるけど根気はない、自称ぐうたらライター(虚弱体質)。
お気楽道に邁進するため体と心の在り方を
模索する中で、医療・健康テーマを多数取材。
OurAgeではハーバード大学医学部 根来秀行教授の連載を担当

こんにちは、ぐうたらライターのいしまるこです。

 

 

いしまるこの緩和ケア最前線レポートもいよいよ最終回です。
今回は2月11日(建国記念日)に開催された、緩和ケアの市民公開講座に参加してきましたよ。テーマは「がんの痛み・つらさの解決方法はあります」。祝日だというのに、300名を超える参加者が集まり、緩和ケアへの関心の高さがうかがえます。

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今回の市民公開講座のパネリストのみなさん。厚生労働省の委託を受けて、日本緩和医療学会が主催

 

 

今はがんにかかってもかなり長生きする時代。現在、がんの5年生存率はトータルで約65%。10年生存率でみても60%近い数字です。

 

 

「もはやがんは特別な病気ではなく慢性病のひとつ。高血圧や糖尿病のように、長く生きればかかる可能性の高い病気です。体と心の症状を緩和し、経済的、社会的サポートも含め、その人の人生を支える緩和ケアは、今の時代に必要とされる、とても身近な医療なのです」と日本緩和医療学会の細川豊史理事長。

 

 

時代のニーズに合ったがん医療実現のために、国もがんとの共生を政策に取り入れ、緩和ケアの普及に力を入れています。「より多くの医療従事者が緩和ケアの重要性を認識し、がんと診断された時から緩和ケアが提供できるような体制の整備を進めています」(厚生労働省 益池 靖典 さん)

 

 

今回の市民講座では、実際に緩和ケアに携わっている専門家たちが、いざというとき緩和ケアを上手に利用し問題解決にあたるための方法を、とても具体的に教えてくれました。

 

 

医療用麻薬への誤解が
不要な苦しみを招いている

 

 

緩和ケア医の有賀悦子医師は、「痛みの解決方法」についてレクチャー。医療用麻薬に対する誤解が根強い日本では、痛みがあってもがまんする患者が少なくありません。けれども、アメリカで緩和ケアを学び海外の緩和ケア事情にも精通している有賀医師は、「がんの痛みは取り除くことができる症状です。海外では痛みに対しての取り組みは人の基本的な権利。痛みを放置することは人権の侵害だと言われます」とキッパリ。

 

 

「医療用麻薬は痛みがある状態で適切に使用すれば、たとえ量が増えても依存や中毒に陥ることはありません。むしろ、痛みを我慢し続けているとストレス脳になり、うつ状態に陥るリスクが高まります。便秘やムカムカ、眠気などの副作用もありますが十分対処できます。がんになっても自分らしく、しなやかに生活していくには、医療用麻薬を適正に使いこなしていくことが重要です」

 

 

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歯切れのいい語り口で理路整然と説く有賀悦子医師。帝京大学医学部緩和医療学講座教授・診療科長

 

 

適切な薬の選択をするためにも、患者が痛みをしっかり伝えることが大切。
「痛みをとる薬には、消炎鎮痛薬、医療用麻薬、鎮痛補助薬の3つの種類があり、それぞれに得手不得手があるので、併用しながら痛みを抑えていきます。ですから、痛みの場所だけでなく、痛みの強さやパターン、性質、痛みによる生活の困りごとなど、具体的に痛みを伝えてもらえると、医師も薬をどのように使うかイメージがしやすく、薬選びの助けになります」

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「“痛みの性質”を伝えましょう」

 

 

「がんに限らず、年を経ていく過程の中で困ったな、つらいなと感じることを、人の手を借りながら解決していくことは基本的な権利です。躊躇せず、〝私は困ってます〟とのろしを上げることが緩和ケアの最初の一歩です」

 

 

ストレスをためないコツは
今までと同じ生活を続けること

 

「がん体験は非常にストレスフルな体験であることは間違いありません。がんの経過に応じて、そのときそのときのつらさがある。患者だけでなく、家族にも同じくらい負担がかかってきます」
と指摘するのはがん患者の心のケアをする精神腫瘍科医の秋月伸哉医師。

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がんに関わる心理的衝撃

そこで、秋月医師がすすめる「自分でできるストレス対処法」です。

 

 

1 まずは自分でストレス状態にあるんだと気づく
「気づかないと対応できないですからね」

 

2なるべく今までと同じ生活を続ける
「体にそんなに問題がないのに、仕事を休んだり、会社を辞める人がよくいるのですが、
かえって病気のことばかり考えて不安が強くなることが多いです。痛みがある場合は、薬で
きちっと症状をコントロールして、生活のリズムをあまり変えないようにすることが大切」

 

3困っていることは相談する
「主治医にいろんな困りごとをおもんばかってもらおうと期待するのは無理。
医師にも家族にも言わないと伝わりません」

 

4 今必要で、正確な、私に当てはまる情報を得る
「まずは主治医や担当の看護師に相談を」

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わかりにくい心の問題をよどみなく解説する秋月伸哉医師。千葉県がんセンター精神腫瘍科部長

 

 

ストレスがあっても、通常は時間とともに心の安定を取り戻していきますが、がん患者の5人に1人はなんらかの手助けを必要

とするという報告も。
そんなとき助けになってくれるのが精神腫瘍科です。がん診療連携拠点病院を中心に配置されています。

 

 

「遠慮せずに心配を話せる相手や場所は意外と少ないもの。精神腫瘍科は気兼ねなくいろんな話をできる場です。
誤解に基づく心配を修正したり、不利な考え方や行動のクセを変える練習をしたり、呼吸法など体から心をリラックスさせる方法を伝えたり、必要であれば薬を使って、気持ちや生活を立て直していくお手伝いをします。
〝心の専門家〟というと引く人も多いのですが、とって食われるわけではないので、気軽に相談してもらえるとうれしいです」

 

 生活の困りごとも

看護師に相談できます

 

 

「体調、仕事やお金、家族としての役割、周囲の人との関わり方など、がん患者さんの生活に関する不安はさまざまです。100%すっきり解決することはむずかしいけれど、緩和ケアでは生活の不安を軽くする方法を一緒に探します」と緩和ケアセンターで外来を担当しているがん看護専門看護師の風間郁子さん。

 

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女性らしくやさしい雰囲気の風間郁子さん。筑波大学附属病院看護部緩和ケアチーム専従看護師

では風間看護師がすすめる「生活の不安解決のコツ」は?
1 思い込まない、抱えない
「相談しても仕方ないんじゃないかと、一人で抱え込まないで。解決できないこともあるかもしれませんが、思わぬいいアイデアがみつかることも。話すことで気持ちが軽くなったり、不安が解消されることもあります」

 

2不安に思ったとき、気づいたことをメモしておく
「診察室を出てから、〝あれを聞こうと思ったのに…〟ということがないように、聞きたいことを簡単にメモして持っておくと、聞き逃さずに聞けるはず」

 

3病気について理解する。治療や体調の見通しを知る
「生活の不安は病気に端を発することが多いので、まずは病気についてきちんと理解すること。そして、今後どんなことが起こってくるかを知り、備えておくと安心です」

 

4活用できるサービスや社会資源を知っておく

 

5 生活の変化に沿った具体的方法については、誰かに一緒に考えてもらう
これらを実践するには、「まずは身近な看護師やがん相談支援センターに訊ねてみてください」と風間看護師。

 

 

考えがまとまってなくても大丈夫。相談してはいけないことは何ひとつないので、まずはなんでも思いのままに話してみてください。今は、がんを専門領域として持った看護師も増えていて、こういった看護師が相談に乗ってくれる場合もあるので、是非訊ねてみてください」

 

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がん患者さんに関わる専門領域の看護師

 

 

お金・仕事、あらゆる相談に
対応するがん相談支援センター

 

 

 

「みなさん、支援制度の活用方法に自信がありますか?」

 

 

医療ソーシャルワーカーの坂本はと恵さんのレクチャーは、こんな問いかけから始まりました。

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ハキハキと頼もしい坂本はと恵さん。 国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター/がん相談支援センターがん相談統括専門職

日本における社会資源というのは基本的に自己申請制。自分に適した制度を自分で見つけて、的確な窓口で申請して初めて使えるもの。それに付随する制度も、自動的には教えてもらえません。

 

 

たとえば、お金の問題で第一選択肢となる支援制度は高額療養費制度です。自己負担限度額を超えた額があとから払い戻される制度ですが、一時的にでもまとまったお金を一度に支払うのは負担ですよね。けれども〝限度額適用認定証〟を保険者に申請し、窓口に提出しておけば、病院への支払いは最初から自己負担限度額でおさまるんです。

 

 

また、会社員であれば、会社の組合独自の保険でさらに安くすませることができる場合も。まずは会社員としての権利を調べてみて。休職していても使えますからくれぐれも早まって会社を辞めないでください

 

 

さらに、坂本さんの「お得情報」は続きます。なんと抗がん剤の副作用は、障害年金の対象になる ものもあるのだそうです!

 

 

「障害年金は病気によって仕事の作業能力が落ちてしまったことに対する補佐的な制度ですが、以前は人工肛門など体の機能が変わってしまった人が対象でした。が、2012年からはがん治療の副作用による倦怠感や嘔吐、全身衰弱なども含め、総合的に判断されるようになりました。

 

 

時代によって制度の運用が変わることもあるので、タイムリーな情報を積極的にキャッチしてほしいと思います。
また、障害年金は基本的に発病から1年半後からの申請になり、申請時には1年半前の体や生活の状況を書かなくてはなりません。書類の精度が高いことも申請時に重要となるので、療養日記をつけることをおすすめします」

 

 

おおっ、知らないことばかりで目からうろこがポロポロ。ぐうたらないしまるこは、知らないまま損するところでした。

 

 

「療養生活を送るうえで情報は力です。知らないことは恐怖につながり、時に不利益をもたらします。知らないことを知る第一歩を踏み出してください。

 

 

その時は、がん相談支援センターを是非活用していただきたい。がん相談支援センターは、がんに関する情報の集約地点です。がん診療連携拠点病院にありますが、その病院にかかっていなくても無料で相談が受けられますよ。少なくとも、

窓口で9万円以上支払っている人は、絶対相談に来てください!

何か使える社会資源があるかもしれませんから」

 

白熱の緩和ケア
パネルディスカッション

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講座の最後はパネルディスカッション。日本テレビ記者で乳がん体験者の鈴木美穂さんとお笑いジャーナリストのたかまつななさんが加わり、大いに盛り上がりました。その一部をご紹介します!

 

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座長はいつも穏やかな愛知県がんセンター中央病院緩和ケアセンター副センター長の下山理史医師と、温厚で情に厚い淀川キリスト教病院緩和医療内科主任部長の池永昌之医師

 

 

24歳で乳がんと告げられたとき、
〝人生終わったな〟と思った

 

 

下山 緩和ケアというと、どうしても終末期のイメージが先行しがちですが、現役大学生のたかまつななさんのまわりのお友達は、緩和ケアについてどんなイメージをもっていらっしゃいますか?

 

 

たかまつ 大学の友達のほとんどは、緩和ケアについて知らないですね。
知っていても、「なすすべがなくなったときにするもの」という認識です。
「がんと診断された時に緩和ケアを始めると、心の痛みを和らげてもらえるんだよ」と話すと、みんなびっくりします。「それは家族がやらなきゃいけないことだと思ってた!」って。

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緩和ケア普及啓発キャンペーン・メッセンジャーを務めるたかまつななさんは22歳。慶應義塾大学・東京大学大学院情報学環教育部在学中

 

 

秋月 心のケアもなかなかハードルがあって、患者一人ひとりが必要性を理解して選ぶのはなかなかむずかしい。ですから、まずは一緒に働くがん治療医に心のケアについて理解してもらって、主治医からすすめてもらうようにお願いしています。実際、主治医から「診断直後にとても動揺されているので、精神科に寄って帰ってもらおうと思う」という紹介はけっこうあるんです。

 

 

たかまつ それはとても大切なことだと思うんですけど、主治医に緩和ケアや精神科を紹介されると「見捨てられた…」と思う人もいるのでは?

 

 

秋月 その通りで、やっぱりかなりの方がそう思われるみたいなんです。
けれど主治医からの紹介で戸惑いながら精神科に来た患者さんも、心配ごとを整理して、「今それは考えなくていい」「その悩みは来週の今頃はなくなってるよ」と見通しをちゃんと説明するとすごくほっとされますよ。
やはりがんに関する悩みは多岐に渡るので、主治医ひとりですべてカバーするのはムリ。だから緩和ケアはさまざまな専門家が分業してチーム医療を行っているんです。躊躇があるかもしれないけど、損しないことが大事だから、利用できるものは利用してほしいですね。

 

鈴木 見通しを示してもらうのはすごくいいですね。

私は、2008年に24歳で乳がんと診断されたとき、〝あ、人生終わったな〟と思ったんです。眠ったらそのまま死ぬんじゃないかと不安で、闘病中はずっと不眠に悩まされました。
そのとき、精神科をすすめられたのですが、治療が必要なのはわかっていても、〝私、がんだけでなく精神病なのかな〟と思ってしまって……。がんや死への恐怖を受けとめきれない自分が悔しいし悲しいし、それを認めるのも嫌だったんです。でもお話を聞いて、闘病に伴う不安や不眠を解消するためにもっと気軽に足を運べばよかったんだって、わかりました。

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自分の体験を率直に語る鈴木美穂さん。2016年夏にはイギリス発祥のがん患者と支える人たちに寄り添う施設「マギーズセンター」を東京豊洲にオープン予定

 

相談窓口は掃除のおばちゃん
でもかまわない!?

 

 

下山 そもそも相談の窓口がわからないという声も高いようですね。

 

細川 「まずは主治医や担当の看護師に」と言っても、しゃべりにくい主治医がいるのもわかるし、しゃべりにくい看護師もいますよね。それでも誰かに相談してほしい。なんなら古くから病室の掃除をしてくれているおばちゃんでもかまわない。こういう人が意外に看護師と密につながっていたりするんですよ(笑)。患者さんにふるわけじゃないんですけど、言ってもらえなかったからできなかったということは、けっこうあるんです。

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一見こわもてだがハートはホットな細川豊史医師。ユーモアのセンスも抜群! 京都府立医科大学疼痛・緩和医療学講座教授

 

風間 同じ病気を抱える患者さんも、いろんなことを教えてくれる存在だと思います。外来の待合室で、患者さん同士励まし合っている姿をよく見かけます。

 

 

鈴木 私は看護師さんから紹介された患者会に勇気をふりしぼって参加したら、「あなたみたいな若い人も(がんに)なるのね。親より先に死んじゃダメよ」と言われてすごくショックで。 そこから半年くらい他の患者さんと接することができませんでした。でも立ち直るきっかけになったのも、看護師さんが紹介してくれた患者サロンでした。主宰は30代前半で乳がんになった方で、9年経って元気に人のためになる生き方をされているのを見て、〝私もこの経験を生かしたい〟と思えるようになったんです。

 

それで、自分で35歳以下のがん患者の会「STAND UP!!」を立ち上げました。現在会員は約350人ですが、旅行に行ったり、バーベキューしたりしながら、若くしてがんになった人特有の、就職、恋愛、結婚の問題が話せる場として楽しくやっています。仲間を持つというのはすごく大事。できれば、医療者以外に、悩みをぶつけられるような場を持っていただけるといいなと思います。

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たかまつ 人と人との関わりなのでいい面もあれば悪い面もあるのは当然ですが、いい患者会の選び方ってあるんですかね?

 

 

坂本 がん相談支援センターでは患者会を探す手伝いもよく行うんです。顔の見えない患者会にあたるとき参考にするのは、患者会のホームページ。参加されている人の経験談などを読んで、肌が合いそうなら行ってみてもいいかなと。会の代表者に電話して、直接話してみるのもいいと思います。

 

 

風間 最近、患者さん同士の支え合いが、サロンとか、ピアサポート(当事者同士のサポート)とか、いろいろな名前で出てきているのですが、組織としてまだ歴史が浅いので、よかれと思って活動していることが他の人には合わないこともあるようです。同じ病気でも必ずしも同じような経過を辿っているわけではないので、違ったら〝私の求めてるところじゃないわ〟と切り離して、別のところにあたるといいと思います。

 

 

細川 患者さんでもいろんな方がいらっしゃるのでね(笑)。でも、とりあえず出て行ったらぽんと気が合う人、波長の合う人もいると思いますよ。
生きることは知ることだという言葉がありますが、知れば知るほど悩みが増えるということもあります。ただ、知らなければどこにも行けないし解決もできません。ぜひ前向きにいろいろ動いていただきたい。我々もそのサポートができるようにと思っています。

 

 

家族は患者に
どう接したらいい?

 

 

たかまつ 家族の方も患者にどう接したらたらいいか迷うと思うんですけど、自分で勉強する方法はありますか?

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秋月 がん対策情報センターががんの小冊子を発行していて、その中に『家族ががんになったとき』という本があります。ダウンロードもできますし、がん相談支援センターにも必ず置いてあります。
http://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/society.html
(出典:国立がん研究センターがん情報サービス)

 

 

坂本 国立がん研究センター東病院では、全部で400〜500種類くらいのがん関連の資料を置いてあります。声を掛けてもらえれば、一緒にそれを選ぶ手伝いもしています。冊子を一緒に見ながら「特効薬のような言葉があるんじゃないかと思っていたけど、〝普段通りの接し方をするのが大事です〟と書いてあるのを見てほっとした」という方も多いです。また迷いが出てきたら冊子に立ち返って、〝これでベター〟なんだと支えにしてください、とおすすめしています。

 

 

有賀 病院の中は多職種でそれぞれ専門の力を発揮しているので、受け持ちの看護師やがん支援センターに窓口になってもらって、相談にのってくれる人がいないかと伝えれば、必ずふさわしい誰かを紹介してくれますよ。
私たちはみなさんの応援団なので、困ったら迷わず声を上げてください。

 

 

池永 がんと診断されたからといって、あなたの全てが、がんになったわけではありません。自分らしい人生を過ごすために支える医療が緩和ケアです。登壇している我々も、いざとなると、とってもこわくなったり、じたばたしたりするかもしれません。だからこそこういう仕事をしているわけで、同じ限りある人生を生きる者同士、よりよい関わりができたらと思っています。ですから遠慮なく緩和ケアチームやがん支援相談センターにいるスタッフに声をかけてください。
私たちもみなさんから、さまざまなことを教えていただけたらと思っています。

 

 

ラストは、日本緩和医療学会理事で精神科医の上村恵一医師の印象的な挨拶で締められました。

 

上村 とかくがん医療の話題といいますと、手術や抗がん剤で〝がんと闘う〟という話題が多いかと思いますが、これだけ多くの人ががんにかかる以上、私たちはがんと寄り添って生活していかなければいけないのかなと思います。

 

このキャンペーンは、さまざまなネットワーク、さまざまな人と人とのつながりがあってできた普及啓発の活動だと思っています。みなさんひとりひとりが、今日の緩和ケア講座について話題にあげて、身近な人たちにつないでいっていただければと思います。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします!

 

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物腰柔らかく本質を突く上村恵一医師。厚生労働省委託事業委員会委員長、日本サイコオンコロジー学会理事、市立札幌病院精神医療センター副医長

 

 

 

あつあつの緩和ケア白熱講座、いかがでしたか?

 

3時間半にもわたる長〜い講座でしたが、内容が濃くて、あっという間に時間が過ぎましたよ。必要な情報の集め方、医師とのコミュニケーションのとり方、困りごとの相談先など、がん以外の病気にも通じるお話でしたね。
緩和ケアについて知ることは、すこやかに自分らしく生きることにつながるのだと思いました。みなさんも、ぜひ、大切な人と緩和ケアについて話し合ってみてくださいね。

 

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取材・文/石丸久美子 イラスト/浅生ハルミン

 

「緩和ケア普及啓発  市民公開講座」では、専門家のレクチャー、パネルディスカッションのほかに、 「あなたが『力づけられた』一言」が発表されました。ここでは選考を行ったキャンペーンメッセンジャーのたかまつななさんと、日本緩和医療学会理事長の細川豊史医師が進行を務めました。

 

緩和ケア普及啓発活動の一環として、がん治療の中で医療スタッフから「力づけられた」一言が募集されました。 多くの応募の中から、心温まる作品として「オレンジバルーン賞」が3作品、「たかまつなな賞」が1作品、最も力づけられた一言として「力づけられた一言大賞」が選出されました。まずは「オレンジバルーン賞」の3作品をご紹介しましょう。

 

「オレンジバルーン賞」
・何か悩んでない?話してみて
(愛知県/加藤さん)

 

31歳で早期乳がんの告知を受けた加藤さん。勇気をふりしぼって、初めて参加した患者会で先輩患者さんに「あなたは軽くていいわよね」と言われ、とても傷ついたそう。その後の治療中、「症状が軽い私がつらいと言ってはダメなのだと思い、つらいことを周りに伝えられなくなりました」。そんなとき、看護師さんから「何か悩んでない?話してみて」という言葉をかけてもらい、とても力づけられたそう。「つらいと言えないことがつらいのだと伝えたことで、その後少しずつ気持ちが軽くなり、いまも治療を続けられています」

 

看護師さんの言葉で力づけられた経験は、パネルディスカッションに参加した鈴木美穂さんもコメントしていましたね。治療時に、いちばん身近な存在になるのは、看護師さん。何か困ったり悩んだりすることがあったら、まずは看護師さんに話してみるのもいいかもしれません。

 

・3人で頑張りましょうね
(京都府/古川さん)

 

古川さんの夫が大学病院で肺がんの末期だと診断されたときに、近所のかかりつけ医が言った言葉だそうです。「夫は大学病院に入院しているのに、なぜかかりつけ医が一緒に頑張ってくれているのか。やがてその言葉の意味は夫の病状進行と共に理解できました」。その医師は最後までご夫婦に寄り添ってくれたそうです。古川さんの、医師への感謝が感じられる一言でした。

 

・今日はお母さんが楽しいことをしましょう。
お母さんが楽しいと息子さんもきっと嬉しくなりますよ
(東京都/こがねさん)

 

こがねさんは、5歳の息子さんが、がんに罹患しました。治療で付き添い入院をしていたときに、看護師さんにこの言葉を言われたそう。「自分が楽しんだりしたらいけないんだ、と、いろいろ我慢してつらくなっていたときだったので、心身に染みる一言でした。がん治療では、特に長期戦に備えるには、適度にリラックスすることが大切なんだと、気づくきっかけになりました」。今でもつらくなると、この一言を思い出しているそうです。

 

進行を務めた細川医師からは「がんの子どもさんを持たれたご家族は、何か自分が悪いことをしたから(がんになったん)じゃないかという思いがあって、自分が笑うこと、楽しむことがいけないと思い込むし、また逆に親ががんになった子どもさんは、自分がいい子でなかったから、お父さん・お母さんが、がんになっちゃった、と思うこともあります。そういった心の機微を医療者がわきまえて、一緒に楽しみましょう、と。長期戦になるんだから落ち込んでるだけではだめで、一緒にやっていきましょうねという意味も多分あったのでしょう」と、コメント。

 

そして最後に、今回の応募の中で最も力づけられた言葉「力づけられた一言大賞」が発表されました。

 

「力づけられた一言大賞」

かえられないものを受け入れる静けさと、かえられるものをかえる勇気と、
その両者を見分ける叡知をお与えください
(愛知県/薬剤師 牧野さん)

 

こちらの選考理由は細川医師にうかがいました。
「実はこの言葉は、19世紀後半のアメリカの牧師、ラインホールド・ニーバーの祈りです。元の言葉はもう少し長くて

『かえることのできないものについて、それをかえるだけの勇気を与えたまえ。かえることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。そしてかえることのできるものとできないものとを見分ける知恵を与えたまえ』

というのが原文です。

生まれついた環境や条件の中で、病気になってしまった。これはかえることができない。でもかえることができないことをずっと悩み続けるよりは、目の前の時間、自分の人生を変えることのできることによって、よりいいものにしていこうという解釈もできると思うのです。

牧野さんはご自分ががんになられて、がん患者さんに向けた講演で、この言葉を聞かれたそうです。それからのご自分の闘病に、この言葉を糧にして前向きに進まれたそうです。これは、がんだけでなく、人生そのものにも使える言葉と思い、大賞に選ばせていただきました」

 

最後に、細川医師とともに発表の進行を務めた、たかまつさんの一言を。
「緩和ケアをいろいろと取材して、それぞれの専門家の方がものすごく熱い思いを持っていらっしゃるんだなと思いました。緩和ケアをいままで自分が知らなかったことが恥ずかしいし、知らないで苦しんでいる人がいたら、とてももったいないことだなと思いましたので、地道にこれからも発信することを続けたいと思います。ぜひもっと緩和ケアが身近になればいいなと思っております」

 

みなさんもぜひこの機会に、緩和ケアについてもっと知ってくださいね。
■緩和ケア普及啓発活動公式 HP
http://www.kanwacare.net/

 

 


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