肩こりや頭痛に悩むことの多いミーナです。マッサージや鍼のお世話になることも。でも、時間もお金もかかってしまいますよね。そんな時に役立つのが、自分でできる「ツボ押し」。まずは、「ツボ」ってそもそもどういうものなのか、鍼灸師の島田力先生にお伺いししました。
女性ホルモンが減少する
MyAge世代の不調を自分で改善!
私を救う!困ったときの
10のツボ
40代後半~50代にかけてはちょっとした不調が重なる時期。そんなとき、頼りになるのが〝ツボ押し〞。きちんと東洋医学の知恵を借り、応用の利くツボを覚えるだけでさまざまな症状改善に役立ちます。
今まで効き目がなかったという人、今度こそ期待して試してみてください!
島田 力さん Tsutomu Shimada
profile
「スクール・トリートメント・カフェ気流」代表、フィットフード協会理事、鍼灸師。父の影響で東洋医学の世界へ。専門学校での鍼灸教育、在宅鍼灸臨床への取り組み、東洋医学外来設立などにも参加。東洋医学に基づく暮らしを提案しつつ、鍼灸治療、セミナー開催、執筆などの活動中。
東洋医学が一段と注目され、ツボには単なる迷信やプラセボ効果ではなく、スゴイ効果があるらしい! と誰もが思うようになりました。
でも、見様見真似でやってみても、いまひとつ症状が改善されないのはどうして?
そこでまずは、東洋医学に基づいた女性のライフスタイルにも詳しい鍼灸師の島田力先生に指南を仰ぎます。
島田先生、
そもそも「ツボ」って何ですか?
「コレにはこのツボ」方式を改めることから始めたい
「ツボって何? と聞かれたら『皮膚から刺激することで、何らかの症状を改善する効果のある場所のこと』と答えます。刺激というのは鍼灸や指圧、素人が指で押すような刺激も含みます。この説明、わかりやすいでしょう?」と島田力先生。
ツボと呼ばれるものは総称して「腧穴(しゅけつ)」と言います。ツボ(腧穴)は全部合わせると2000個以上にもなるとか!
東洋医学では体には目に見えないエネルギーのようなもの(気)が流れていて、そのルートを経脈と呼んでいますが、代表的な経脈上にあり、名前や部位が定められているツボを経穴(または正穴)、経脈上にはないけれども名前・部位・主治症が定まっているツボを奇穴、名前や部位は決まっていないが治療効果のあるものを阿是穴(あぜけつ)と呼びます。
WHOが認める経穴だけでも361個。これらを正しく扱うのなんて、私たち素人にはまず無理なことですね?
「よく『肩コリにはこのツボ、胃が痛いときのツボはコレ』などと、ひとつのツボを紹介することがありますが、それは素人的な考え方。それではあまり効果は望めません。東洋医学では症状や病気を治すのではなく、体調やもとの体質、なぜそうなったかの病因を総合的に分析します。これを証(しょう)と呼ぶのですが、証によって選ぶツボやツボの組み合わせを考えるのが鍼灸師。
例えば、いちばんベーシックな『八綱弁証(はっこうべんしょう)』には病気の勢いを表す「虚/実」の診断があります。虚(=不足している)と診断すれば補法(弱い刺激)、実(=停滞している)ならば瀉法:しゃほう(強い刺激)を使うはずです。そんなふうにして、病因となっているバランスのくずれを正しく整えるため、一人一人に対してオーダーメイドでツボを選ぶわけです。ですから、〝コレにはコレ”方式のツボはおすすめできないのが本当のところです」
つまり、補法と瀉法の考えからすると、ツボは刺激が強ければ効果を発揮するものではなく、逆効果になってしまうことも! これにはちょっとびっくりです。
「また『足裏マッサージ』などで用いられるツボは、東洋医学のツボとはまったく別物。リフレクソロジーの分野で使う、足裏に全身を投影させた〝反射区”のことです。東洋医学のツボが“点”なら、こちらは少し広い“面”であることも大きな違いですね」
何千年もかけて体系化されてきた、東洋医学の知恵、ツボを私たち素人が上手に扱うにはどうしたら…?
「たくさんのツボを全部覚えても、そんなに使えるものではないですよ。そもそも正しく押せなければ意味がない。ならば10
個だけでもいいから正しく覚えて、応用できるようにしたいですね。そして原因を推測してバランスを整える、という東洋医学の考え方に頭を切り替えていきましょう!」
八綱弁証(はっこうべんしょう)=東洋医学で病態を把握するための基準のひとつ
有名な弁証方法で、4つの物差しにおいて「陰陽」「表裏」「寒熱」「虚実」とふたつずつ項目があります。
例えば、体を保っている「気血水※」に対して病気の勢いは「気虚」「気実(=気滞)」などと表します。鍼灸ではこれによって、原因を取り除くツボを選択するのです。
※「気」は目には見えないエネルギー、「血」は血液とそれに含まれる栄養素、「水」は血液以外のすべての体液。この3つが体の中を巡ってバランスをとり、健康が保たれているというのが東洋医学の考え方。
次回は、島田先生に教えていただく確実な「ツボ探し」と「ツボの押し方」をご紹介します。
撮影/広瀬壮太郞 監修/島田 力(スクール・トリートメント・カフェ気流)
構成・原文/蓮見則子