家族や親しい友人とのおしゃべりでも「わかってほしいときほど、伝わらない」というもどかしい経験、ありませんか? 感動した映画や本について言えば言うほど、相手に引かれてしまう・・・とか。
「それは、言葉の洪水に本当に伝えたいことが埋もれてしまうから。本当に言いたいことはシンプルに。20字以内に込めて」
『20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす』
の著者、信元夏代さんからのメッセージです。
本当に言いたいことを
友人に、または会議やプレゼンで正しく伝えられている?
私たちの身近にあるコマーシャルのキャッチコピーを思い起こしてみてください。
「やめられない、とまらない! かっぱえびせん」(18字)
「インテル、入ってる」(8字)
「自然と健康を科学する」(10字)
など、たしかにどれも20字以内でわかりやすい。
「本当に伝えたいことがあるなら、まず、それをストレートに伝える。自分があなたと共有したいのは、これ! と、最初に提示することで、聞く人の気持ちをあなたにひきつけるのです」
でも、言うは易し。行うは難し。
そこで必要なのが、伝えたいことを相手にきちんと受け取ってもらうためのノウハウ。その方法を、自らの経験に基づき、チャート式でわかりやすく紐解いているのが、この本です。
これを教えてくれる著者、リップシャッツ信元夏代さんは、日本生まれ、日本育ちの生粋の日本人。
ノンネイティブスピーカーでありながら、トーストマスターズインターナショナルという国際スピーチコンテストで、世界トップ100の殿堂入りを成し遂げ、あのスティーブ・ジョブスなど、そうそうたる著名人が講演会に登場したTED (Technology Entertainment Designの略で、アメリカNY市に本部があり、毎年大規模な世界的講演会開催している非営利団体) と早稲田大学がコラボしたTED×WASEDA Uにも登壇。世界のビジネスの中心、アメリカを拠点に活躍するプロフェッショナルスピーカーの1人です。
そもそも、プロフェッショナルスピーカーとは、どういう職業?
その疑問、ごもっとも。
「プロフェッショナルスピーカーとは、ビジネスを中心とした公の場で、あるトピックの専門家として有償で講演や研修などを行うことをする職業です。たとえば業界団体の基調講演、あるいは企業に出向いて講演やワークショップを実施したり、企業のプレゼンテーションを効果的に行うために、提案実施したりすることもあります。」
日本ではまだ一般的ではありませんが、アメリカだけでも5万人はいるのだそうで、そのなかで3500人のみが所属する先鋭集団の、全米プロスピーカー協会プロフェッショナルメンバーにも認定されているのがリップシャッツ信元さん。まさに人前で、いかに目の人たちの心をつかむか、が勝負の仕事です。
今や押しも押されぬプロフェッショナルスピーカーの信元さんも、大学卒業後、MBA取得を目指し留学したニューヨーク大学で、はじめて自己紹介したときは、頭の中が真っ白になって、何を話したのか記憶がないほど上がってしまったのだそう。
ノンネイティブでシャイな日本人の彼女が、どうやってプロフェッショナルスピーカーへと成長したのでしょう?
本書には、そのドラマのようないきさつもありのまま書かれていて、そのステップアップの様子がとっても興味深いのです。
自分視点だけで語っていませんか?
実際、人と話すのが苦手、人前で話すなんて死んでも無理! と、いう人でも、仕事やプライベートで、打ち合わせやプレゼンのため話さなければならない時はあるもの。
意外にも、そんなときに一番大切なのは、
『相手の身になって考えること』
と、リップシャッツ信元さん。
なぜなら、女性が陥りがちなのが、自分目線になってしまうこと。
なんとか、お役目を無難にやり過ごしたいと思うあまり、相手に配慮する余裕がない。これでは、いい成果は望めないと言うわけです。
相手はどんな立場で、何を望んでいるのか。その人の本音に寄りそうところからスタートすることが鍵なのです。
アメリカのビジネス界で働きながら、セミナーや個人レッスンなど、その時々で必要と判断したトレーニングを地道に続けてきた成果が、現在世界トップ100に入るプロフェッショナルスピーカーとして結実。彼女が学んできたメソッドの肝が、冒頭の、一番伝えたいことは日本語で20字(英語の場合10ワード)で! という鉄則なのです。
本書では、以下の5章仕立てで、相手に届くスピーチの作り方が述べられていて、順を追って読んでいけば、自然とキャッチーなスピーチが出来るように構成されています。
第1章 なぜ、言いたいことが伝わらないのか
第2章 聞き手視点の情報整理
第3章 何を伝えるか
第4章 どう心をつかむのか
第5章 プレゼンの出来を左右するデリバリー
これをすべて実践すれば、あなたもスピーチ名人に。全部はできなくても、少なくとも人前でのスピーチが怖くなくなるはず。
そして、この方法は、スピーチだけでなく、日常の様々なシーンで役立ちそうです。
相手を立てながら、自分の思いをきちんと伝える。そして、相手の心を動かす。もしかしたら、夫婦喧嘩も減るかも? おっと、つい自分目線で考えてしまいました。
コミュニケーション力が問われる今、年齢と共に独りよがりになりがちなOurAge世代は一読する価値、大いにありそうです!
文/佐野美穂