猫背、巻き肩、カメ首の改善に取り入れたい姿勢とはどのようなものなのでしょうか? 理学療法士の山口正貴に、よい姿勢とラクな姿勢(悪い姿勢)について詳しくお話を伺いしました。
教えていただいたのは
山口正貴さん
Masataka Yamaguchi
1980年生まれ。東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 理学療法士。2016年の研究論文で日本理学療法士学会の第8回優秀論文表彰で優秀賞を受賞。著書に『背骨の医学』(さくら舎)、『「ねたままストレッチ」で腰痛は治る!』(集英社)など
よい姿勢とラクな姿勢、両方とることが大切!
「医学的によい姿勢とは、骨、椎間板、筋肉に最も負担がかからない状態のことです」と、東京大学医学部附属病院・理学療法士の山口正貴さん。
「例えば、頭は胴体の真上にあると、首の広い面積に均等に重みがかかるため、首への負担は軽くなります。一方、首が前に傾いていると(猫背やカメ首)、支える面積が首の前側に偏るため、一点にかかる負担が増えます。それをまわりの筋肉が支えるので、首や肩がこったり、痛みになるのです」
理想は首の骨は少し前に、背骨上部は後ろに、腰は前にたわんだ、緩やかなS字カーブを描いていること。
「これがくずれていく原因は、背骨を支える背筋(はいきん)とインナーマッスルが弱り、よい姿勢を維持できなくなって、ラクな姿勢(悪い姿勢)が長くなるから」
つまり、背筋が弱る→疲れる→姿勢が悪くなる→さらに背筋が弱る→より疲れる→悪い姿勢が悪化する…という悪循環に陥るわけです。では背筋を鍛えればいいのでしょうか?
「それも大切ですが、その前に重要なのは体の“柔軟性”です。実はよい姿勢だけでも体によくありません。よい姿勢を支えているのは筋肉で、ラクな姿勢は靱帯が頑張っています。つねによい姿勢を維持している人ほど、腰痛になるケースも少なくありません。
よい姿勢にもラクな姿勢にも、それぞれにメリットとデメリットがあります。両者を均等に取り入れることで、“柔軟性”を高めることが、姿勢の改善や痛み防止のための最初のステップです」
よい姿勢もラクな姿勢も一長一短
よい姿勢のときは、骨や関節、靱帯、椎間板へのストレスは最小限ですが、それを支える筋肉が疲れます。
一方でラクな姿勢のときは、筋肉への負担は軽くなりますが、靱帯に過大な負担が。やがて骨や関節、椎間板が歪み、痛みが生じることも。双方の姿勢をバランスよくとることが大切です。
●よい姿勢の場合は…
筋肉を使って、靱帯は休んでいる状態。筋肉の疲労がたまり、長時間維持できなくなります。よい姿勢をとることで、背筋の筋トレになりますが、これだけでも腰痛の原因に
●ラクな姿勢の場合は…
筋肉は休んでいますが、靱帯を使っている状態。これを続けていると、体の歪みが定着して、猫背、巻き肩、カメ首に。やがて肩、腰、膝などの痛みに発展することもあります
次回は、姿勢の改善や痛み防止につながる、あなたの柔軟性をチェックします。
撮影/塩谷哲平 高山浩数 ヘア&メイク/木下庸子(プラントオパール) モデル/Yumico(YumiCoreBody) イラスト/おおさかあゆみ 構成・原文/山村浩子