更年期に起きやすいメンタルの不調は、実は「セロトニン」という“幸せホルモン”を増やすことで改善が可能です。普段の生活に少し取り入れるだけで増やせるので、“セロ活”を取り入れてみませんか?
お話を伺ったのは
有田秀穂さん
Hideho Arita
東邦大学医学部名誉教授。セロトニンDojo代表。セロトニン研究の第一人者。おもな著書に『医者が教える疲れない人の脳「慢性疲労」を消す技術』(三笠書房)など
「セロトニン」を増やせば、心が整う
更年期に心の不調が出やすいのは、セロトニン不足も関係していると有田秀穂先生。
「セロトニンは脳内の神経伝達物質で、心のバランスを保ったり、自律神経を整える作用があり、“幸せホルモン”とも呼ばれます。ただ、女性ホルモンの分泌が減るとセロトニンも減ってしまいます。そのため、更年期になるとメンタルの不調が起きやすいのです。
しかし、セロトニンは太陽光を浴びたり、一定のリズムで行うリズム運動をしたり、セロトニンの材料のトリプトファンを含む食材をとることで、自分で増やせます」
セロトニンの働き
- ● 朝の目覚めをよくする
- ● 心のバランス(平常心)を保つ
- ● 自律神経を整える
- ● 痛みを抑える
- ● 顔つきや姿勢をシャキッとさせる
“幸せホルモン”セロトニンを増やす「セロ活」の具体的な方法をチェック!
太陽光を浴びる
セロトニンを増やす簡単な方法は、太陽光を浴びること。
「朝起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びましょう。太陽光は1万ルクス以上の照度がありますが、室内の電灯は照度が500ルクス程度と低いので、電灯ではセロトニン神経が活性化されません。できれば30分ほど外で太陽光を浴びるのが理想的。難しいなら室内の窓際で太陽光を浴びてもOK」
トリプトファンをとる
体内でセロトニンの材料になるトリプトファンをとるのも有効。
「トリプトファンは牛乳やヨーグルトなどの乳製品や、納豆、豆腐などの大豆製品、バナナ、玄米などに多く含まれます。また、セロトニン合成には炭水化物とビタミンB6も必要。ビタミンB6は、卵黄や玄米、レバー、豚肉などに豊富。例えば、玄米ご飯、納豆、卵、豆腐の味噌汁といった典型的な日本の朝ごはんなら、3つの成分をとることができます」
玄米ご飯、豆腐の味噌汁、納豆、卵といった朝食は、セロトニン合成にぴったり。時間がないときは、トリプトファンも炭水化物もビタミンB6も含まれるバナナを1本とるだけでもOK
リズム運動を取り入れる
一定のリズムで体を動かす“リズム運動”もセロトニンを増やせる方法。
「代表的なリズム運動に、呼吸、咀嚼(そしゃく)、歩行の3つがあります。これは動物の生命活動の基本ですが、それをしっかり行うとセロトニン神経が活性化されるように私たちの脳はできているのです。一定のリズムで行う自転車こぎや、深い呼吸をしながら行うヨガなどもおすすめです」
呼吸
忙しかったりストレスがたまっていたりすると、呼吸が浅くなりがち。気づいたときに深呼吸をするとセロトニンが増え、心が安定
噛む
食べ物をゆっくりと嚙むだけでセロトニンが増加。早食いすると嚙む回数が減るので注意して。イライラしたらガムを嚙むのも効果的
歩く
歩くことでもセロトニンを増やせますが、大事なのは不快な刺激が入ってこない環境で、歩くことに集中すること。ラッシュ時の通勤などでは効果ナシ
自転車こぎ
ジムのエアロバイクなどで一定のリズムで自転車こぎをするのも効果的です。心地よい速度で行いましょう
イラスト/本田佳世 取材・原文/和田美穂