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「連休に張り切ってレジャーに出かける人は、退職金が消えやすい・後編 ~50歳からお金が貯まる人になる8つのレッスン⑥~」

老後に必要な資金は夫婦合わせて2000万円……いわゆる“2000万円問題”が世間をにぎわし、「どうしよう、そんな大金はとても無理」と焦った方も多いはず。そんな方にぜひ読んでいただきたいのがこの連載です。焦っているだけではお金は貯まりません。50代は“最後の貯めどき”、今からできることをご紹介します!

 

前回は、「自分へのご褒美」「せっかくの連休だから」といってレジャーに出かける家は退職金が残りにくいというお話をしました。

 

実は、ほかにも退職金が消えやすい人の特徴があります。

 

・50代後半で住宅を購入した人

・人からどう見られるかが気になる人

・超低金利の今、投資をしないと損と思っている人

・お金はあればあるほど嬉しいと思っている人

 

です。

 

ではなぜこのような人は退職金が消えやすいのでしょうか?

順番に見ていきましょう。

 

◆50代は出費が多いとき。「何とか払える額だから」とローンを組むのは危険

 

福利厚生がしっかりしている会社に勤めていて、家賃が安い社宅にずっと住んでいた人や、勤務先から家賃補助がしっかり出ていて賃貸に住んでいた人が、50代後半になって住宅を購入するケースがあります。

 

それまで家賃があまりかからなかった分、しっかりお金を貯めてあり、それを使うのであれば問題ありません。

 

最近は低金利が続いているので、やろうと思えば頭金ゼロでも家が買えてしまいます。

だからといって、「ローンの返済額が今まで払っていた家賃と変わらないから、何とかなるだろう」と家を買うのはとても危険です。

なぜなら、50代は予想外の出費が多い世代でもあるからです。

 

・思わぬ病気に見舞われてしまった

・親の介護が始まった

・子どもの教育費が想像以上にかかった

 

といったことが、突然起こりかねないのです。

 

上にあげた3つのような理由で急な出費があっても、住宅ローンは削ることができない固定費です。一定額を毎月支払い続けなければいけません。

 

〝フルスロットルでお金をつぎ込めば、何とか買える家〟を選んでしまうと、まさかのときに使えるお金がないだけではなく、住宅ローンが払えない事態に陥ります。ですから50代からの住宅購入は、老後を見据えて慎重にしていきましょう。

 

 

一方、すでに家を購入している方には第1回で、「50代は住宅ローンのめどをつけておくことが大切」とお話ししました。

 

60代前半には、ほぼどの家庭も収入が減っていきます。

それなのに75歳まで住宅ローンを組んでいて、月々の支払いが現役の時と同じ額だったら、払うのがいかに大変かは想像がつきますよね。

とはいっても退職金の全額を、住宅ローンの繰り上げ返済に充てることはおすすめしません。

退職金の一部を繰り上げ返済に充て、60歳以降の月々の支払いを減らす方法がおすすめです。

 

◆浪費の一因、承認欲求。その背景にあるものは?

 

次に、人からどう見られるかが気になる人についてです。

 

・SNSで「いいね」をつけてもらいたいと必死になる

・人前ではつい見栄を張ってしまう

・ブランド物を買ったら自慢したい

・夫の勤務先や年収、子どもの学歴などでマウントを取りがち

 

50歳くらいになると、こういった気持ちがなくなってくる人と、強くなってくる人に分かれてきます。

 

もしあなたが、承認欲求が強まっている人であれば、要注意です。

 

人から羨ましいと思われたいとか、SNS映えするという理由で物やサービスを買う人は、余計な出費がどんどん増えていき、気がついたら退職金が消えてしまいやすいからです。

 

承認欲求が強い人は、なぜ自分は承認欲求が強いのか、一度立ち止まって考えてみませんか。

 

そしてモノや経歴などを他人にひけらかすこと以外で、自分の誇れるものを探してみましょう。

きっとあるはずです。

 

・新卒で就職してから30年間働き続けてきた

・子どもを育てながら、家のこともしっかりやってきた

・気の合わない姑や義理の親戚と波風立てずに上手に付き合ってきた

・手先が器用で、ハンドメイドでいろいろなものを自作できる

 

そういったことも、どれもとてもすごいこと。

 

まずは自分を認め、自分のいいところを探して褒めてあげる。

そうすることで、ストレス解消のためや見栄に使うお金が減るばかりではなく、気持ちに余裕をもって、老後のプランを立てられるようになるかもしれません。

 

 

◆「低金利の今、投資しなくちゃ損」の罠

 

投資しなくちゃ損、と思ってしまう人の場合について。

 

いうまでもなく老後資金を考えるうえで外せないのは、退職金です。

ところがその退職金が原因で老後の資金計画が狂ってしまうケースもあるのです。

 

 

みなさんは退職金をもらったら運用しないといけない、と思っていませんか?

よく聞く話だと、退職金が振り込まれた瞬間から、金融機関から運用の勧誘電話が次々とかかってくることが多いようです。

 

「退職して時間もあるし、ちょっと説明会に行ってみるか」と思うのなら聞きに行ってもいいですが、ノープランで何となく話を聞きに行くのは危険です。

 

すすめられるままに投資を始めてみたら収益が出た、というラッキーな例もあると思いますが、慣れない投資をいきなり大きな金額で始めてみたら、大きく目減りしてしまったというケースも少なくありません。そうなれば老後の資金計画は狂ってきます。

 

退職金のようなまとまった金額を手にすると、「まだ低金利時代も続きそう。銀行口座にお金を寝かしておいても金利が付かないから、投資をしなくちゃ」とつい焦りがちですが、投資に〝絶対〟はありません。

 

まずは投資を始める前に、生活のダウンサイジングにとりかかることをおすすめします。

老後は現役時代よりも収入が減ることが多いのだから、家計簿をつけるなどして自分の現在の支出を把握し、〝今の生活の棚卸〟をしてみましょう。

 

投資は裏切るかもしれないけれど、節約は裏切りません。

確実に結果が出るものです。

 

「退職金をもらったら投資をしないと、もったいない」という思い込みはいったん捨てて、まずは「今の生活で節約できるところはなんだろう?」と探してみましょう。

 

 

◆穏やかで充実した老後に必要なのは、お金だけではありません

 

そして最後の「お金はあればあるほど嬉しい」と思っている人についてです。

 

例えば宝くじで1000万円当たったとしましょう。

それに満足するのか、いや、まだ足りないから2000万円でも3000万円でももっと欲しいと思うのか。

 

宝くじの1000万円を退職金におきかえてみます。

 

欲望がエスカレートしていくタイプの人は、退職金というまとまった額を手にしたときに、「今まで我慢してきた分」「ここまで頑張ってきたんだから」と、たちどころに使ってしまうかもしれません。

 

またお金はあればあっただけ、悩みもいっぱい出てきます。

富裕層といわれる方々も、相続や資産運用とお金の悩みは尽きません。

 

穏やかで充実した老後を送るのに必要なのは、資金だけではありません。

自分はこれくらいで十分生活ができるという自信、身の丈に合った金銭感覚が必要です。

 

今のうちにそれらをじっくり考えてみましょう。

 

 

自分の身の丈を知り、その範囲でできる自分にとって心地のよい暮らしが見えてきたら、次にとりかかってみていただきたいことがあります。

それはキャッシュフロー表の作成です。

 

 

日本FP協会のサイト「便利ツールで家計をチェック」より)

 

私は老後マネーの相談を受けたときには、少なくとも90歳くらいまでのキャッシュフロー表を作ってアドバイスするようにしています。

 

キャッシュフロー表を見て、90歳で資産残高がある程度あれば安心です。

逆に80歳くらいですでにマイナスになっていたら、資金計画を考え直さないといけません。

その場合はもう一度「節約できることはほかにないか」を考え、場合によっては「収入を増やすためにできること(夫婦でパートにでる、など)」もイメージしてみましょう。

 

 

本日はここまで。

次回は「投資を始めたいなら」というテーマでお話します。

 

 【教えていただいた方】 

黒田尚子
黒田尚子さん
CFP®  1級ファイナンシャルプランニング技能士
公式サイトを見る

1969年生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年に日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得、98年に独立系FPとして転身。現在は、各種セミナーや講演、執筆、個人相談など幅広く活躍。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格取得。「がんとくらしを考える会」理事、城西国際大学経営情報学部非常勤講師なども務める。著書に『がんとお金の真実(リアル)』『親の介護は9割逃げよ』『病気にかかるお金がわかる本』(共著)『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』『終活1年目の教科書』など多数。

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取材・文/倉澤真由美、写真/山田真由美

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