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「好き」を仕事にしている行正り香さん。未来の自分のために、今から「場づくり」を

料理、インテリア、英語教育…。行正り香(ゆきまさりか)さんの仕事はさまざまです。最近は、自分のミッションと考えている、子どものための探求型学習を広める活動に力を入れているそう。そしてそれは、行正さん自身の未来の「場づくり」でもあるといいます。

やりたい仕事ができる環境をつくる

 生涯現役で仕事をし続けるのは、私の夢です。

そして私は自分が学んで「よい!」と思ったら、それを誰かにシェアするのも夢のひとつです。

 

時間は限られていますから、シェアしたいことを仕事につなげていくためには、与えられる環境だけでなく、環境を自らつくりだしていかなくてはなりません。

行正り香さん上半身ポートレート

私は広告代理店でCMプロデュースの仕事をしつつ、料理好きが高じて料理の本を出版させていただきました。

 

自分がおいしいと思うレシピを皆さまにシェアしてきましたが、最近はレシピアプリをはじめ、メニューを学ぶ選択肢が多岐にわたっている時代です。お声がけがあれば、もちろん喜んで料理の仕事をこれからもしていきますが、時代の変化を感じています。

 

そこで料理だけでなく、大好きだったインテリアの仕事の比重も増やしていきました。おかげさまで、東京国立博物館内のレストラン・カフェ「ゆりの木」の空間プロデュースをはじめ、仕事の幅も広がってきました。

東京国立博物館内のレストラン・カフェ「ゆりの木」内観写真

照明デザインをした東京国立博物館「ゆりの木」  写真提供/ルイスポールセン

 

料理、インテリアなど、どれも私の趣味を仕事につなげてきましたから、大変なときがあっても、すべて楽しんでやらせていただいています。

 

これからシェアしていきたいこと

2007年から、料理、インテリア以外の領域にも挑戦しています。それは子ども向けの教育アプリ開発です。

 

自分に子どもが生まれたときから、考えさせるきっかけを与えてくれる探究型の学びや、アクティブに学べる英語学習の仕組みに興味を持ちました。

 

留学したアメリカの大学では探究型の学習方法を受け、また英語も型から音読で学ぶ方式で学んできました。両方とも私にとっては目からうろこの学習方法で、自分の娘たちも留学せずとも同じような学び方を体験してもらえるのではないかと思ったのです。

 

日本は主にレクチャー方式で勉強するのが一般的ですが、アメリカやヨーロッパでは、子どもに先生が問いを投げかけること、発表させることで考えるチャンスを与えてくれます。

日本のレクチャー方式もよい面があると思いますが、私は「受け身で学ぶ」日本型がどうにも合いませんでした。そこで興味のあるものを見つけ、調べてまとめるプロセスを学べる方法を考えられないか、と思ったのです。

 

2007年に会社を退社し、専門家や友人の力を借りて、アプリ「なるほど!エージェント」を立ち上げました。使ってくれた娘たちは大学生になりましたが、これらのアプリも活用しながら育ててよかった、と思っています。

行正り香さん「なるほど!エージェント」画像1

オリジナルキャラクターを使った動画教材もたくさんあって、私自身がナレーションをしていたりします。

 

現在、全国350以上の小中学校で使われはじめ、文部科学省の「たのしくまなび隊」というサイトのレコメンド教材にも選ばれました。

行正り香さん「なるほど!エージェント」画像2

声を出して学ぶ英語音読学習法も紹介しています。

 

 

売り上げは経費をまかなうので精一杯…いや、むしろマイナスです(笑)。

学校に教材を卸すビジネスというのは、そもそも大きな利益が出るようなものではありません。でも子どもの教育というのは、私自身が娘たちを相手に、長い時間をかけてトライ&エラーしてきた体験をシェアする場でもあります。

 

長年のプロセスで学ばせてもらったことを、自分のミッションとして、シェアしていけたら楽しいなと思っています。

行正り香さん「なるほど!エージェント」画像3

こちらは外国籍の子どものための日本語学習教材です。

 

 

「拍手」をもらって元気になる

大変ではあっても、面白い。「なぜだろう?」と改めて考えてみると、情熱を傾けて何かに取り組むと、「思いがけないリターン」をいただけるからだと思います。

 

「思いがけないリターン」の中身はさまざまです。

例えば、全国いろいろな地域の小学校に伺うと、子どもたちが「あ! あのアニメの人の声だ!」と、喜んでくれたりします。「ありがとう」と言ってくださる先生がいらしたり、「私の子どもの頃にも、こういうのがあったらよかった」とおっしゃってくださるお母さんがたもいます。

そして何より「こんなものを作ってくれて、ありがとう! 面白いよ!」とメッセージをくれる子どもたちがいます。

 

こうした反応の数々は、お金に変えられない「拍手」をもらうようなもの。大きなやりがいを感じています。

行正り香さんのスタジオにあったキャンドルスタンド

50代後半になって、これからはたくさん食べたり、ワインを飲むこともできなくなってしまうでしょう。でも、誰かからの笑顔や拍手がいただけるなら、それは何より楽しみとなり、元気の源となります(笑)。

 

だけど、何もやらずに「何か面白いことはないかな」と思っているばかりでは、突然「求められる場」に立つことはできません。

たとえ誰かの役に立ちたいと思っての行動でも、求められていない場にいきなりやってきたら、それは「押しかけボランティア」となってしまうからです。もしかしたら、相手は迷惑かもしれません。

 

だから私は、心身ともに元気なうちから自分が歓迎されるような「場づくり」をしていけたらいいな、と思っています。

行正り香さんスタジオのフロアライトと鏡

趣味であれ、仕事であれ、「生涯現役」でいるために、みなさんも少しずつ、コツコツと「場づくり」していくことをおすすめします。

私もエネルギーやワインをチャージしながら、やりたい仕事を続けられるように、亀のスピードで頑張っていきたいな、と思います。

 

 

行正り香
行正り香さん
料理家、インテリアデザイナー
公式サイトを見る
Instagram

福岡県生まれ。高校3年生からカリフォルニアに留学。大学卒業後は広告代理店でCMプロデューサーとして活躍後、料理研究家となる。またデンマーク親善大使に選ばれるなど北欧インテリアに造詣が深く、インテリアコーディネーターやリフォームプランナーとして、多数の家づくりに携わる。料理レシピ本のほか、インテリア本、英語スピーキング教材など著書は50冊以上。2023年、東京国立博物館のアンバサダーに就任。館内のレストラン・カフェ「ゆりの木」の照明ディレクションのサポートを務める。最新刊は『人生を変えるリノベーション』(講談社)。

撮影/藤澤由加 取材・文/中沢明子

 

 

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