【教えてくれた人】
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
「食べないで飲む」のは不健康なだけでなく、1ミリも痩せない
こんにちは、こんばんは。
朝に夕に、食べ物と健康のことばっかり考えている管理栄養士の麻生れいみです♪
40代以上の女性にはお酒が好きな人、意外と多いですよね。私を含めてね。
厚生労働省のデータ、飲酒の習慣率(週3日以上、1日当たり日本酒換算1合以上飲酒する人の割合)を見ても、この20年で男性の飲酒は明らかに減少しているのに、女性の飲酒の習慣は増えていました。
私がこれまでダイエット指導をしてきたなかにも、お酒が大好きで太っている女子がけっこういます。
彼女たちの言い分で多いのが「お酒を飲む分、おつまみはあまり食べてない」「お酒を飲む日は、朝や昼を抜いてカロリーを控えてる」です。
「食べないで飲む」「カロリーを控えて飲む」のが、太らないことだと思ってる。
それ、“昭和のダイエット”あるあるですから〜。
お酒を飲むということは、普段より余計にいろいろな栄養素が必要になるの。アルコール代謝にいろんな栄養素が使われるからよ。
アルコールは肝臓で代謝されるのだけど、まず、アルコールを分解していく過程で大量のビタミンB1が必要。
ビタミンB1はエネルギーを作るのにも必要だから、飲酒によって不足するとだるさや疲れにつながる。
飲み会が多い時期に「何だか疲れてるな」と感じるのは気のせいじゃないわけです。
そして、アルコールを分解するために働く酵素はタンパク質からできているので、お酒を飲むときにはタンパク質を多く含む食品をとらなきゃダメ。
ほかにもビタミンやミネラルなど、アルコールの摂取で消費されてしまう栄養素はいっぱいあります。
これらの栄養素がみんな不足したらどうなりますか?
そう! 何度も言ってますが、体内に栄養素が不足すると脂肪は1ミリも燃えないのよ。
「私は飲むだけ。おつまみは食べないっ」なんて頑張っても、脂肪は減りませんから〜。
以前、痩せない痩せないと嘆く、酒飲み女子のダイエット指導をしたことがありました。
彼女もまさにそのタイプ。
食事報告をしてもらうと、夜は1週間に何度もお酒を飲みに行っていました。
そして、びっくりするほどおつまみを食べていない。
食べているとしてもお通しだけとか、乾き物とか、太らなさそうなこんにゃくとか。
これでは、必要な栄養がとれない。痩せないのは当然です。
飲んだあとに締めのラーメンやアイスクリームが食べたくなる理由
そして、お酒とダイエットに関しては血糖値の問題も大きいんです。
意外に知られていないけど、アルコール自体は血糖値をほとんど上昇させません。
それどころか、血糖値を下げることもあるほどです。
醸造酒のビールやワインは、けっこう糖質が高めですが、それでも血糖値はあまり上がらない。
血糖値を24時間モニタリングし続けてくれる機器(FreeStyleリブレなど)をつけたことがある人ならわかると思いますが、お酒と一緒に糖質の高い甘い物や炭水化物を食べても、単独で食べたときより血糖値が上がらないの!
最初は私もびっくりしました。
これには肝臓の働きが関係しています。
肝臓は体内に入った毒物を分解する解毒作用で知られていますが、食べ物からとった糖を貯蔵しておき、必要なときに使えるように血液へも送り出します。
お酒を飲むと、肝臓は「毒」であるアルコールを優先的に分解するので、その間は糖を出さなくなり、血液中に糖が少なくなるんです。
そして、そのままアルコールを飲み続けていると、血糖値は下がり続けます。
お酒を飲んだあとは、いわゆる血糖値が異常に低い「低血糖」の状態になるんですよ。そのまま寝たら、寝ている間に低血糖状態が続き、睡眠の妨げになる。
逆に、お酒を飲んで低血糖のまま起きていると、体は危機を感じて血糖値を上げようと「糖」を欲する。
お酒の後にラーメンやお茶漬けなどの炭水化物、はたまた甘いものを食べたくなるのは、そのせいなのよ!
酔っ払って記憶をなくしてるのに、深夜に何か作って食べていたとか、ごみ箱に記憶のないアイスの袋の山があった…なんてことがあるのもそれよね。
先の彼女の場合も、お酒を飲みすぎたときほど締めに何か食べてしまうことがありました。
それがカップ焼きそばだったり(キムチまでつけちゃって)、ケーキだったり、フルーツだったり…、あからさまに糖質が高いもの。
そして、お酒の解毒に一生懸命な肝臓さんは、炭水化物(糖質)を食べてもまだ気がつかなくて、低血糖のまま。
ところが、時間がたってアルコールの分解がある程度落ち着いてきた頃、寝ている間に血糖値がどーんと上がっちゃう。
血糖値が上がれば、今度は血糖値を下げようとして「インスリン」がドバドバ出て、血糖値を下げてくれるわけです。
この血糖値の乱高下も健康にはまったくよくないんだけど…、それよりダイエットの観点から言えば、インスリンは極力出したくないもの。
インスリンは血液中の余った糖を体脂肪として蓄えてしまう働きがあり、「肥満ホルモン」とも呼ばれているくらい。
インスリンをなるべく一気に出さないようにするには、血糖値を急に上げたり下げたりしないこと。
低血糖を起こさせるお酒も飲みすぎたら太るということよ!
お酒とともにきちんと食べるほうが自然に痩せていく!
先のお酒大好きダイエット女子の続き。
私は、飲みに行くのをやめなさいとはアドバイスしませんでした。
その代わりに「ちゃんと食べながら飲みましょう」「または、お腹いっぱい食べてから飲みましょう」「お酒は飲む分だけ先に頼んで、あとは頼まないように」と言いました。
お酒とともに食べるものは、タンパク質とビタミンB1が豊富なもの。
タンパク質は、いわずと知れた肉魚・卵・大豆製品など。
ビタミンB1も一緒にとれるおつまみというと、枝豆・冷奴・レバー焼き鳥・豚肉キムチ炒め・にらレバ炒めなど。
よく居酒屋などで出てくる枝豆はタンパク質もビタミンB1を多く含むので、理にかなってるんですよ。
そしてにらレバ最強説! 彼女にも推しまくった結果、枝豆とにらレバをよく食べるようになってくれました。
それから、もうひとつアドバイスしたのは、飲みに行くからといって朝食や昼食を抜かないこと。
空腹で血糖値が下がりまくっているときに飲みに行くのはさらによくないからです。
小腹が空いたときには、少しでいいからおやつに何か食べること。
できれば糖質や脂質を控え、かつタンパク質の多いものが理想的。
ナッツやプロテインバー、コンビニで最近よく見かけるチキンバーや豆腐バーもいいわね。
少しお腹に入れておくと、血糖値の乱高下=インスリンのドバドバ攻撃からも免れて、太りにくくなります。
お酒大好きダイエット女子のその後。
3カ月でお酒の飲みすぎが落ち着き、前よりも栄養を考えて食べてくれるようになりました。
食べながら飲み、おやつもちょこちょこ食べてくれました。
結果、1カ月で1kgずつ自然に落ちていったんです。
「きちんと食べて痩せる」を実証してくれた、酔っぱらい星人でした!
取材・文・画像制作/蓮見則子 イラスト/カケハタリョウ