コロナ禍での生活のなか、なんとなく体の調子が不安定…。新型コロナにかかりにくくするために出来ることって何でしょう? ハーバード&ソルボンヌ大学医学部・根来秀行教授に詳しく伺いました。
昼と夜の呼吸法を使い分け、自律神経のメリハリをつけて
生活習慣を正し、自然免疫が高くなる状態をキープすることで、感染や重症化を一定程度は防ぐことができるはず。何より大事なのは、副交感神経が優位になる状態をできるだけ増やすことです。
コロナ禍にいる私たちの体は交感神経が上がりやすい状態で、体内時計が乱れ、副交感神経へのスイッチが入りにくくなっています。そのせいで毛細血管が収縮している時間が長くなり、全身の毛細血管への血流が低下し、体の中心に血液が集中。
血流が悪化して全身の細胞に酸素や栄養が行き渡りにくくなり、細胞呼吸の効率が低下。細胞を取り巻く内部環境が悪化しています。
この状態が続くと、血圧も高くなり、血管の内皮細胞も傷つき、新型コロナの感染リスク、重症化リスクが高まります。実際、糖尿病や高血圧など、内皮細胞が傷む持病があると新型コロナに感染しやすく、重症化しやすいという報告があります。
そこでおすすめしたいのが、昼夜で呼吸法を使い分け、自律神経のメリハリをつける呼吸法。日中は、交感神経の上がりすぎを防ぐ「4・4・8呼吸法」を。これによって毛細血管への血流を増やすことが出来ます。
①ラクな姿勢で腰かけ、お腹の動きに意識を向けやすいように、おへその上に軽く手を置きます。準備として、腹式呼吸を2〜3回繰り返し、鼻から息を吐ききります。
②4秒かけて鼻から息を吸います。
③4秒息を止めます。
④8秒かけて鼻から細く長く息を吐きます。お腹を絞るようなイメージで。②〜④を4回繰り返します。
寝る前には、まずリンパの流れをスムーズにする「リンパ呼吸法」を行います。
お腹の真ん中あたりにある、全身の約8割のリンパ液が通る「乳び槽(にゅうびそう)」が刺激され、どろどろリンパがさらさらに変化します。
精神科医の名越康文さんにご紹介したら、毎晩の習慣にしてとても調子が良くなったそうで、朝の目覚めが全然違うとおっしゃっています(ハーバード大学Dr.根来の体内向上プロジェクト 〈第113回〉)。
続けて「10・20呼吸法」を行うことで、深い眠りに誘います。睡眠中の副交感神経をしっかり上げることで、リンパ球が優位になりウイルスやがん細胞を攻撃、自然免疫を向上させて自然治癒力を高めることにつながります。
①まずはリンパ呼吸法。あお向けに寝て膝を立て、「乳び槽」があるお腹の真ん中あたりに手を置きます。鼻から息を軽く吐き出してから、鼻から息を吸い込みます。
②お腹の力を緩め、細く長くゆっくりと同じペースで息を吐いていきます。
①と②をしばらく繰り返すと、乳び槽に程よい圧がかかって、ドロドロだったリンパがサラサラになり流れがスムーズに。
③続いて10・20呼吸法。下腹をゆっくり絞るようにして、鼻から息を吐ききったあと、下腹と肛門の力を抜いてゆっくり10数えながら、下腹を徐々にふくらませ、自然に鼻から息を吸っていきます。
④首から胸にかけて、ゆっくり力を抜いていくと、自然に鼻から息がもれます。
そのまま肛門をやんわり閉じていき、ゆっくり20数えながらさらに鼻から息を吐いていきます。下腹を徐々に絞っていき、最後は息を吐ききります。③・④を20回ほど繰り返します。
根来秀行さん
Hideyuki Negoro
1967年生まれ。医師、医学博士。ハーバード大学医学部PKD Center Visiting Professor、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、杏林大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授、社会情報大学理事。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。本連載から生まれた『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業「毛細血管」は増やすが勝ち!』『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(ともに集英社)が好評発売中
撮影/森山竜男 イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/石丸久美子