体幹力が衰えると、姿勢がくずれて腰に負担がかかり腰痛の原因に
腰痛が起きてしまったり、なかなか改善しなかったりする大きな原因に、「体幹力」の衰えがあるとか。その理由を吉原潔先生に伺いました。
「腰痛の原因のひとつに筋肉の衰えがありますが、最も影響が大きいのが体幹の筋肉の衰えです。
体幹とは、体のコア、つまり中心部分を指し、具体的には、腕と脚を除く、首から下の胴体部分のことです。立つ、座るといった動作をはじめ、腕や脚を動かすときの軸にもなる、まさに“体を支える幹”の部分です。
この体幹の筋肉が落ちてしまうと、上半身を支える力が不足して、よい姿勢を保ちにくくなります。その結果、猫背の前かがみ姿勢になり、腰に負担がかかって腰痛が生じ、改善しにくくなってしまうのです」(吉原潔先生)
つまり、腰痛を根本から改善するには、体幹力を鍛えることがカギ。
では、体幹力をつけるには?
「体幹を構成するのは、お腹の腹直筋や腹横筋、腹斜筋や、背中の脊柱起立筋、広背筋など、一般的に腹筋、背筋と呼ばれるさまざまな筋肉です。
これらの筋肉を鍛えるトレーニングをすると、体幹力が向上し、よい姿勢が保てるようになって腰に負担がかかりにくくなり、腰痛の予防・改善につながります。
体幹力を強化すると、関節の可動域が広がり、体も引き締まるので、習慣にすることをおすすめします」
まずは、自分の「体幹力」をチェックしてみましょう。以下の「片脚立ち」でチェックできるので、さっそく試してみて。
「片脚立ち」で、体幹力をチェックしてみよう
片脚立ち
片方の膝を90度に曲げて、膝と股関節の角度も90度になる位置まで引き上げて片脚立ちになり20秒キープ。両手は腰に添えましょう。背すじは真っすぐにし、上半身が前や後ろに倒れないように注意。
これを20秒間続けられればOK。長い時間キープできるほど、体幹力があるということ。
20秒キープできなかったり、体が傾いたりぐらついたりするなら、体幹力が低下しているので、腰痛がすでにあるか、腰痛になりやすい状態です。定期的に行ってチェックしてみましょう。
横から見た姿勢
引き上げていないほうの脚は膝が曲がらないように真っすぐにし、肩が丸まらないように軽く胸を張ります。目線は真っすぐ前に向けましょう。
このチェックテストで体幹力が弱い結果となった人は、以下でご紹介するエクササイズを習慣にして強化しましょう。体幹力に問題がなかった人も、予防のために行うのがおすすめです。
<吉原先生おすすめ! 体幹力を鍛えるエクササイズ>
1 プランク
筋力があまりない人でも、比較的やりやすいエクササイズ。腰に負担がかかりにくいのが特徴。体幹とともに、二の腕も鍛えられます。
① うつ伏せになり、ひじから下を床につけ、手は軽く握ります。ひじは肩の真下にくるようにして90度に曲げ、足は肩幅かそれよりやや狭い程度に開いてつま先を床につけます。
② 腕で体を支えて体を浮かせて、頭からかかとまでを一直線になるようにして30秒キープ。お尻が上がったり、背中が反ったりしないように注意。頭は下げすぎず、視線は床に向けましょう。①②を2回。慣れてきたら、10秒ずつキープ時間を延ばしてみましょう。最終的に1分間できることを目標に。
2 サイドプランク
プランクの横向きバージョンで、お腹の深部の腹横筋と、両脇の腹斜筋を鍛えられるエクササイズ。
① 体の左側を下にして横向きに寝て、左のひじを肩の真下に置き、上体を起こします。右手は腰に当て、両脚は伸ばしてそろえます。
② 左腕で体を支えて、全身を床から浮かし、頭から足までが一直線になるように保ち20秒キープ。お尻が下がったり上がったり、体が前後に傾いたりしないように注意。終わったら体の右側を下にして同様に行いましょう。左右各1回。できるようになったら、10秒ずつキープ時間を延ばしていき、最終的に1分間できることを目標に。きつくてできない人は、両膝を曲げて行ってもOK。
3 ドクターズスクワット
いつでもどこでも気軽に行えて、体幹を鍛えられるのがこのスクワット。しゃがんだ状態から立ち上がるのを30秒繰り返すだけだから簡単なのに、普通のスクワットより上下動の幅が大きいので、効果抜群です。
① 足を肩幅に開き、つま先をやや外に向けます。両腕を真っすぐ前に伸ばし、両手のひらは下に向けて重ね、しゃがみます。背すじは真っすぐにします。
②口から息を吐きながら立ち上がります。このとき両腕は肩より下がらないように保ち、胸は軽く前に突き出して、目線は真っすぐ前に向け、膝はしっかり伸ばしましょう。次に鼻から息を吸いながらしゃがんで①のポーズに戻ります。これを30秒繰り返します。慣れたら秒数を増やしてもOK。1日に何回やってもOKです。
以上の3つのエクササイズを、1日1種類からでもいいので続けましょう。
全部行うと理想的です。
【教えていただいた方】
医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本医科大学卒業後、同大学整形外科入局。帝京大学医学部附属溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、2017年よりアレックス脊椎クリニック院長。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。トレーナーとしての信条は「ケガをしないトレーニング方法を指導すること」。50歳を過ぎてから筋トレでメタボ体型を脱し、ベストボディコンテストに出場、受賞歴多数。著書に『ドクターズスクワット』(アスコム)など。
撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/佐々木 篤 モデル/SOGYON 取材・文/和田美穂