大和撫子の太ももは硬くてカチカチ! 運動どころじゃない!
KAORU:女性は40歳過ぎたら女性ホルモンが減少していって、更年期によるさまざまな影響が出てきますけど、そのひとつが筋肉量の低下ですよね。
kyo :もし、それまでと同じ生活をしていたら、筋肉が徐々に減っていくのは当たり前。食事も運動も40歳を過ぎたら見直す時期かなと思いますね。体重が減って「痩せた」って喜んでると骨密度が下がっていたりね。
KAORU:脂肪が減ったんじゃなくて、筋肉と骨が減っていますよね、だいたいは。体重を目安にしてはだめ。痩せたいなら筋肉をつけて、代謝をよくしないと。
食事にしても、その人の食べグセ次第で徐々に悪いものが蓄積されていくし。体の使い方も40歳頃から体全体に影響して不都合が出てくる。座り仕事が長い人などは股関節がうまく使えなくなって、膝下だけ使って歩いていたり。
kyo :そう、結局クセが大問題。筋肉や関節は、日常の動作でつくられていくもの。1時間のエクササイズよりも23時間の何気ないクセのほうが勝ってしまうんです。特に日本人は座っている時間が世界一長いのだから、座りすぎによる悪影響はありますよね。
KAORU:あと、日本には背中と脚を使う文化があまりないことが、海外と違うと思うの。欧米はスコップを持つ文化、バレエの文化なんですよ。外旋・外転、体の後ろ側を使う習慣がある。その点、日本の農作業は鍬(くわ)だったし、着物で正座でお辞儀だし、すべてが内旋・内転で前のめりな習慣のある民族でしょう。
kyo :大和撫子的な動きって全部それね。欧米人は肩こりがないっていうのもそれですよね。
「骨盤の女王」のニックネームを持つkyoさん。骨盤底筋や骨盤に注目が集まるずっと前から、独自のメソッドを開発していたオーソリティです
KAORU:私たちの世代は日本の「密やか文化」から生まれてますからね。みんな内ももなんて動かしてない、日常的に使ってないからカチカチに硬い。筋肉があっても硬くて使えてないんだな、という印象です。
40歳過ぎたら、使える筋肉をどれだけ持つかということが第一だと思いません?
kyo :そうね。内ももカチカチですよね、固めてる感じ。いちばん動かしたほうがいいのは股関節と肩関節と、そして背骨。背骨は全部が関節ですけど、大事ですよね。
関節を動かさなかったら筋肉も動かなくて固まってしまう。そうやって使わないでいると使えなくなる。若いときは動かせばすぐに使えるようになってたけれど、年を重ねると動かなくなっちゃう。
だから余計に運動なんてしたくなくなる。使える筋肉を増やすために、どうするかですね。
運動習慣のない人に、いきなり筋トレは逆効果?
KAORU:まずは、ほぐしたり緩めたりすることから始めること。
私のメソッドは「ほぐして、伸ばして、正しく使って、強化する」という4つのステップなんですけど。「ほぐして、伸ばして、正しく使う」まででニュートラルな状態に戻して、そこから強化すべきところを強化する。
まず「0」にしてから強化するんです。kyoさんの指導も似ているでしょう?
kyo :マイナスを0にしてからですね。まず、長座でもあぐら座でも骨盤が立たない、坐骨で座れない人が多すぎる。その状態で立ってエクササイズなんて無理。悪いほうに行ってしまうこともある。一時はやった開脚とかね、骨盤が立たないのにやっちゃって股関節や内転筋を痛めたりして。
KAORU:そうそう、あなたそれやっちゃだめって人いるいる。
若いときは間違ったことをやってもどこかが悪くなることはめったにない。でも40歳を過ぎるとねー。
ほかに、間違ったことをやって痛めているのは膝ですね、多いのは。股関節が使えないものだから膝を使ってしまう。そうすると太ももが使えなくて膝に負担がかかって痛くなる。
kyo :首や肩も痛い人が多いかな。筋肉をつけたいからとマシントレーニングすればいいってものでもない。
KAORU:いいトレーナーさんに出会うのももちろん大事なんだけど、自分がどうして今痛くなっているのかを考えて、「もしかして原因は姿勢にあるのかな」とか、理由を探ってほしい。
そして自分でケアできたほうがいいじゃないですか。
kyo :結局、運動にしても筋肉をガチガチに固めるだけではだめで。うちのレッスンにもあるようなダンスとかね、不安定な動きの中ででも使える筋肉が本当にいい筋肉。やっているうちにいつしか体の奥、インナーの筋肉が使えるようになっていて、あとは自由に動けるというのが理想だと思う。
KAORU:私も、いつも言うのは「踊るように生きていくのがいちばんいい」ってこと。例えば上のほうにある物を手で取るときに、うーんと腕も肩も脇も背中も、全部伸ばして取ったほうがダンスみたいできれいですよね。きれいな動作は関節にも筋肉にもいいんです。
kyo :人は本当は教えられなくても、本能で自然にケアする方法を知っているはずなんです。日常動作の中で、本来はねじるも伸ばすも全部無意識にできる。それが筋肉にもよい影響を与えるようにしたい。
KAORU:歩き方とか姿勢って、習慣の賜物。その習慣を変えるのが大変なんですよね。40歳を越えると。
みんな、「筋肉がないと大変だ、フレイルだ」と言われてわかってはきたけれど、何をすればいいかわからない。でも、まずは下半身よね。
テニスボールダイエットやクッションピラティスなどの著書が大好評のKAORUさん。独自の姿勢分析を開発し、その人の特性、クセなどを瞬時に見抜き、必要なセルフエクササイズを伝授してくれます
kyo :けっこうみんな知識はあるんですよ、最近は。
一時スクワットがはやったでしょう。下半身から筋肉をつけなきゃという知識はある。でも、やらなきゃ意味がない。年を重ねたらホルモンも激減するのだから、応えてくれるのは筋肉しかない。応えてくれるのよね、やれば。
KAORU:「筋肉をつけなきゃって思ってはいるんだけどねぇ」みたいな人が8割。「よし、筋肉をつけよう!」となる人は2割、って感じかな。本を買っただけで安心しません? 「買って安心、読んで安心、でもやらないよ」みたいな(笑)。
それでもいいの。まずは筋肉をつける以前の段階でいい。どこでもできること、例えば信号待ちのときに肩甲骨を寄せることを習慣にするだけで、姿勢が変わっていく。筋トレではないけど、それで可動域は確実に増やしてます。上腕二頭筋と、肩甲骨の内側の筋肉を緩めたりしているわけだし。
kyo :緩めるっていう動作はすごくいい。なぜかといえば、やれば気持ちがいいから。人って気持ちのいいことは続くんですよね。つらいことは続かないけど。まず気持ちのいいことから始めて、それにつらいことをプラスしていく、というやり方がいいかなと思ってる。
筋肉は縮みたがり。正しく伸ばしてあげれば勝手に使えるようになる!
KAORU:楽なところからやればいい。うちはもともと、初回はリリースから始めるので、気持ちよさより痛いかな。
「足の裏は痛い」っていうことを初めて知る人も多いんです。「こんなに硬かったんですねぇ!」って驚く人も多いです。そのうち気持ちよくなりますけどね。
kyo :自分のことを自分自身で押したり触ったりするのはもちろん、リリースしたことがない人は、痛いのかどうかもわからないのよね。
「これ柔らかいんでしょうか、硬いんでしょうか?」って。もっと触りましょうよ、自分をね。触りも何もしないで、カチコチのまま筋肉をつけようとするのは絶対よくない。ついても使えない筋肉ですね、それこそ。
KAORU:動きが悪い人っていうのは、伸びない筋肉を持っているだけ。ちゃんと伸び縮みできる筋肉が大事なの。伸びない筋肉は縮みもしない。
伸びない筋肉は使えない。だからまず伸ばすことから始めましょう。それが筋肉にとって最初の筋トレ。伸ばすことを覚えた筋肉は、勝手に使えるようになりますから。
kyo :縮むの大好きですよね。特に下半身がわかりやすい。
KAORU: 伸ばすことによって筋肉は活動し始めるので、そうなったら歩くだけでも使えていることになる。伸びない人は固めて歩いているんです。筋肉に伸びることを教えれば勝手に縮んでくれるから、運動もしてくれるんですよね。
kyo :ご本人が何に関心を持っているかでも理解力が違いますね。
例えば、健康には興味があるけど運動はイマイチな人に「筋肉が縮むと中に入っている血管も縮むわけだから、伸ばせば筋肉だけでなく血管のストレッチにもなるのよ」って言うと、「あ、いつもストレッチって言ってるけど、血管にもいいのか」って、病気予防のスイッチが入ってやる気になる。それでやってくれるならいいですよね!
KAORU:習慣を変えるのは大変だと思うんですけど、3カ月あったら変わりますよね、絶対。
kyo :40代以降はダイエットも難しいですけど、よい筋肉をつけるのもかなり難しい。太るのが難しいっていう人も、筋肉がつかないっていう人も多いですよね。
でも3カ月あるなら、まず習慣づけてほしいのは「今日一日の体のクセをその日の終わりにリセットする」ということかな。
KAORU:運動習慣のない人なら、やみくもに筋トレするよりは順序立てて、体をまず柔らかくすることから始めたほうが効率的。
姿勢も変わるし血流も変わります。そこからゆるトレ、気持ちいいと思える程度の運動で十分だと思いますね。
kyo :そして、更年期世代は筋肉のために食事も大事。
KAORU:人にもよりますが、筋肉のためには運動3割、食事が7割くらいで、食事を変えないと筋肉がつかない人もいますからね!
【教えていただいた方】
1962年生まれ。アプロ主宰。指導歴40年。 “姿勢で人生を変える”をテーマに指導を行う。姿勢に関する分析をホリスティックに行う独自のメソッドは、多くのファッション誌・フィットネス情報誌で紹介されている。自分の姿勢の現在の状態を把握し、ウェルネスコンサルティングが受けられる「姿勢分析」メニューが人気。自身、還暦とは思えないウェルネスな姿勢美は、まさに日々のエクササイズの賜物。近年、スタジオワークのかたわら、後進の指導や著作活動、オンライングループレッスンやイベントを通して、多くの人たちにそのメソッドを発信中。著書に『テニスボールダイエット』(幻冬舎)、『自分で整体ストラップ』(講談社)、『テニスボールでほぐす!のばす!やせる!』(扶桑社)、『クッションピラティス 内ももを締めれば勝手にやせる!』(幻冬舎)など。
1962年生まれ。ボディワークプロデューサー。「b-i STYLE(ビイスタイル)」主宰。幼児体操の指導を経て、大手スポーツクラブの人材育成やプログラム開発に携わる。1997年より整体や解剖学などを学び、独自の骨盤調整メソッド「ペルヴィスワーク」を考案し、2005年よりスタジオ・ヨギーでレッスンを展開。2015年、自律できるからだづくりをテーマに、日本初の骨盤専門スタジオを東京・青山にオープン。基本の骨盤調整レッスンをはじめ、筋膜ストレッチ、美脚・美尻づくり、筋調律、フローダンス、ウォーキング、整顔など、独自のレッスンで女性の美と健康を応援。骨盤や骨盤底筋に特化した著書多数。
撮影/藤澤由加 取材・文/蓮見則子