「大腸黄金時代」がやってきた!
大腸がんなど大腸の病気が急増中! 日本人の "大腸劣化"が進んでいます。腸内環境が悪化する40代以降は、"大腸力"を鍛えるべきときです。
大腸力とは、腸内細菌の集団「腸内フローラ」が持つ力。近年の研究で、腸内フローラの新事実と重要性が 続々と明らかになってきました。
◆女性がんの死亡率◆
最新調査によると、女性のがんの死亡率の第1位が大腸がん。
約半世紀の間に6倍に増えているというデータも
腸内フローラで今、ここまでわかる
近年、腸内環境の研究が急速に進み、「腸内フローラ」が脳をはじめ全身の臓器と密接に関係することがわかってきました。
腸内フローラとは、おもに大腸にいる腸内細菌集団。大腸がんや心の病気、アレルギーに腸内環境の悪化が関係することも。腸内環境によって薬の効力に差が出ることも明らかになりつつあります。
【腸内フローラの多様性】
TOPICS1
ゲノム解析の発展で腸内細菌研究が躍進
「従来の研究手法では便から腸内細菌を培養していたのですが、培養できない菌がいることもわかっていました。やがて遺伝子研究者たちによる大プロジェクト『ヒトゲノム計画』が契機となり、遺伝子解析技術が飛躍的に発展。腸内細菌を培養することなく、遺伝子解析技術によって網羅的に解析できるようになったのです」と語るのは、腸内環境の最先端研究を行う福田真嗣さん。
これがブレイクスルーとなって世界中で研究が進み、腸内環境と健康との関係が徐々に解明されつつあります。ここ数年、大腸に関するニュースが次々と届く背景にはこんな事情があったのです。
創薬やヘルスケア市場で腸内フローラが熱い!
下図は潰瘍性大腸炎やクローン病をはじめとする、腸内フローラが関連する疾患の薬の市場予測。現在は10億円程度。腸内環境研究が進むことで薬の市場が拡大し、2025年には100倍との予測も
TOPICS2
病気と腸内フローラの関連が明らかに!
乳がん、子宮頸がんよりも死亡率が高い女性の "大腸がん"。腸内細菌の集まり「腸内フローラ」の多くは大腸にすんでいますが、近年、大腸がんとの関係もわかってきたと福田さん。
「大腸がんの発症原因のひとつに、肉食による動物性タンパク質と脂質に偏った食事が挙げられていました。ですが、問題は栄養素そのものではなく、動物性タンパク質や脂質を多くとることで変化する腸内フローラのバランスや、そこから作られる代謝物質。これらが発がんにかかわっている可能性が出てきたのです」。がんを発症する原因は腸内フローラだけではありませんが、腸内フローラのバランスと大腸 がんのリスクの関係の研究も進んでいます。パーキンソン病や認知症、動脈硬化、糖尿病など、全身の病気に腸内フローラが関与していることも、疾患の予防や治療の分野でさかんに研究されています。
腸内フローラの働きを変えることで、病気予防も
さらに、うつ病や自閉症などにも腸内フローラが関連することがわかっています。
病気に関連する腸内細菌の代謝物質の産生を抑制すれば予防や治療も可能になるため、
新薬の研究も始まっています。
次回は、腸内フローラは薬の効き目も左右する!? など、[腸の中でも「大腸」の腸内フローラに注目(後編)]をご紹介します。
インフォグラフィック/ZOE イラスト/内藤しなこ 取材・文/伊藤 学、山村浩子