体を動かしながら頭を使うといった“ながら作業”。上質な睡眠や口腔ケアなど、脳寿命を延ばす習慣を、順天堂大学医学部名誉教授の新井平伊先生に、詳しく伺いました。
ながら作業が脳を活性化する
「認知症の予防策として、今、デュアルタスク(二重課題)の効果が注目されています。いわゆる“ながら作業”のことです」(新井平伊先生)。
例えば体操をしながら頭の中で計算をしたり、ジョギングしながら歌を歌う、散歩しながら俳句を作る、テレビを見ながら体操をする…なんてことでOK!
「運動機能と一緒に頭を使うことで、脳の違う場所を同時に働かせることになり、これが脳の働きを活性化させます」。
運動に、好きなこと、楽しめることをプラスして、自分なりの方法を見つけて!
上質な睡眠でアミロイドβをためない
「アミロイドβは通常、寝ている間に代謝・分解されて、脳の外へ排出されます。ところが十分な睡眠がとれないと、排泄が遅れて蓄積してしまうのです」。
最適な睡眠時間は個人差がありますが、疫学的なデータからみると、最も認知症になりにくい睡眠時間は“6時間半~7時間”。それ以下でもそれ以上でも、認知症になる確率は約2倍に増えるという結果が。
また時間だけでなく、朝までぐっすり眠るなど、質のいい睡眠が肝心です。
歯周病にならないよう口腔ケアをしっかりと
「歯周病は糖尿病を悪化させることがわかっていますが、最近の研究で、“重度の歯周病と認知機能の低下に相関関係がある”という報告があります。歯周病のジンジバリス菌が、脳内のアミロイドβの生産に関与しているというのです。
歯周病→糖尿病→アルツハイマー病、この3つの負のスパイラルに陥らないように注意する必要があります」。
歯周病がある人は治療を。認知症の予防のためにも、口腔ケアをしっかりする習慣を!
教えてくれた人
新井平伊さん
Heii Arai
1953年生まれ。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門。アミロイドPET検査を含む健脳ドックを導入した「アルツクリニック東京」院長。2021年に「健脳カフェ」設立
イラスト/midorichan 構成・原文/山村浩子