私は、富士山がきらいという人に出会ったことがありません。
むしろ、きれいに富士山が見えたりすると、それだけでうれしくなってしまうのは、日本人のDNAレベルの話ではないかと思っているのですが、どうなのでしょう?
そんな富士山ですが、見るだけでなく、実は誰でも登ることができるって知っていましたか?
そう、超初心者のあなたでも登れます。テレビの特番に出るようなスペシャルな人でなくても大丈夫なんです。
私も、先日二度目の登頂を果たしてきました。
お子さん連れもたくさんいました。とはいえ、ちょっと特殊な富士登山は、前もってイメージできる方がトラブルも最小限で済みます。
どんなふうに準備すべきなのか、服装は?荷物は?注意することは?などなど、私の体験談をもとにお伝えしてみようと思います。
富士登山の基礎知識
まず、基礎的なことを整理してみましょう。
富士山の標高は3776m。
登山シーズンは毎年7月上旬から9月の上旬ごろです。この登山シーズンとは、登山道が開通している期間(開山期間)のこと。山小屋などもこの期間しか空いていません。
つまり、富士登山は花火や海水浴のように、夏のレジャーでもあるわけです。
登山口は吉田口ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートの4つ。標準コースタイムは登りで6-8時間、下りで4-6時間くらいで、ルートや脚力によっても変わります。ただ、それぞれ2000~2400mあたりの五合目から登るので、約3700mの高さをすべて自分の足で登るわけではありません。ちょっとほっとしましたか?
さらに、富士山の場合は1日で登って降りるのではなく、お昼前に五合目から登り始めて、途中の七合目や八合目の山小屋で一泊し、そして翌日頂上まで行って下山する、というパターンの方が一般的です。
理由はいろいろありますが、一番は高度があるため、一気に登る”弾丸登山”だと高山病の危険が増すから。普段から山登りが趣味という方であれば体も慣れていますが、超初心者には体力面でもあまりお勧めできません。
下山ルートが分かれていることも、富士登山の特徴。
実は、富士山は毎年数十万人もの人が登りに訪れる超人気レジャースポットなので、上記のような一般スケジュールだとものすごく渋滞するタイミングが発生します。そのため、上り下りで混雑して事故が起こらないようしっかりルートが分けられているのです。(富士宮ルート除く)
また、富士山はルートごとに頂上の到着場所が違います。火山なので、頂上は火口の淵になっているからです。この火口をぐるっと一周することを「お鉢巡り」といいます。
もしも「絶対に日本最高地点に到着したい」というなら、このお鉢の途中に剣ケ峰という一段高い場所があるので余力があればチャレンジしてみるのもいいですね。
ただし、道が狭く風も強いことが多く、アップダウンも多いので思ったよりも体力を使います。長い下山が控えているわけですから、もし不安なら無理しないようにしてください。
これがお鉢。
なお、お鉢沿いには神社が2つ(富士山頂上浅間大社奥宮、淺間大社奧宮久須志神社)があります。御朱印もいただけますよ。また、郵便局もあり、はがきを購入すると特別なスタンプを押して送ってくれます。登頂記念として自分や家族に送ってみるとよい記念になるかもしれません。
富士登山計画の立て方
超初心者におすすめの方法は、ツアーを利用することです。富士登山は多くの旅行会社から登山ガイド付きツアーが出ています。都心からバスで連れて行ってくれて、お弁当などもついているなどすべてお任せでOK。ガイド付きも多く、時間厳守の行動になるので自由度は少し減るかもしれませんがとにかく安心です。
それ以外では、個人ガイドを手配する、友達と行くなどが考えられますが、まず最初は”経験者に連れて行ってもらう”ということを大事にしてください。
意外と周囲にいたりしますから、気軽に聞いてみるとよいですね。ガイドならネットで検索しても結構出てきたりします。
ツアー以外では、ルートの検討や山小屋の手配も必要になります。
一般的に富士山より東に住んでいたら、吉田・須走ルート、西なら富士宮ルートがアクセスしやすいでしょう。
吉田ルートは一番メジャーで山小屋の数も多い王道ルートです。利用者が多く、救護所や登山指導員などリアルなヘルプが多いことも特徴の一つ。その分開山期間、特に週末は混むため、早めの山小屋予約などが必須です。また道が混んで自分のペースで歩けないこともあるのでスケジュールには充分余裕を持ってください。
須走ルートは”砂走り”と呼ばれる下山道が特徴。スキーを滑るように下山できることで人気があります。ただし、ものすごく膝にきますし、盛大な砂ぼこりはのどの弱い人などにはちょっと辛いかもしれません。でも須走ルートはどこでも東向きなので、どの高さでもご来光が見れるのはメリットです。
富士宮ルートは西からのアクセスでは一般的なルートです。五合目の高さが4つの中で一番高く(2400m)山頂までの距離が一番短いのですが、その分登りが急で高山病になりやすいことが注意点。でも、頂上が前述した最高地点剣ケ峰に一番近いので、一番高い場所でご来光が見たい、お鉢巡りをするまでの体力はないけど、最高地点に到達したいという場合はいいかもしれません。
御殿場ルートは中級向け。五合目の高さが約1400mしかないので、一番距離が長いです。また、山小屋の数が少なく、七合目までには一軒しかありません。休憩や飲み物の補給がしにくいため、初心者にはあまりおすすめできないでしょう。
ただ裏ワザとして、五合目からちょっと上がったところにある「宝永遊歩道」から御殿場ルートに回る、通称「プリンスルート」(皇太子時代の天皇がお使いになったルート)もあります。同行者と相談して決めてくださいね。
ちなみに東側起点の私の場合、一度目は吉田ルート、二度目は須走ルートでした。
公共交通機関だと吉田ルート、車で行くなら須走ルートがアクセスしやすいかな、というイメージです。
どのルートであっても、自分の歩くスピードを考慮して、必ず夕方早めに山小屋に到着するようなタイムスケジュールを組みましょう。夜歩く人も多い富士山ですが、ごつごつしたガレ場(岩の多い場所)も多い富士山の登山は、やはり最初は明るい昼間の方が危険が少ないです。また、五合目をスタートする前にはしっかり時間をとり(目安は1時間)高度に体を慣らしてから登り始めてくださいね。
富士山登山計画のまとめ
①ツアーか個人手配か決める
②(個人の場合)ルートを選ぶ
③(個人の場合)山小屋の予約をする ※一泊二日の場合
④富士山までの交通手段を検討する ※到着時間と体を慣らす時間を考えて
⑤(個人の場合)だいたいの行動予定(タイムスケジュール)を決める
⑥ 行動予定にあわせた荷物の準備
という感じでしょうか。
少しイメージが湧いてきましたか?
すっかり長くなってしまいました。
次回はどんな準備をしたらいいのか、ウェアや登るときの注意点などお伝えしますね。