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原因不明だった「めまい」に病名がついた! 

「めまい」とは症状の総称です。原因となる病気はさまざま考えられます。その約9割は耳(内耳)が原因のことが多いようです。その主な病気について、全国から患者が集まる「めまい治療」の名医・新井基洋先生に伺いました。

めまいのほとんどが内耳の不調

 

「私はこれまで多くの患者さんを診てきましたが、めまいの原因のほとんどが耳にあると考えられます。耳は外耳、中耳、内耳の3つに分かれ、このうち、めまいを起こす原因になるのは、主に内耳です。それは、内耳の中にある三半規管耳石器平衡機能=体のバランスを司っているからです」(新井基洋先生)

 

この左右のどちらかの耳の、三半規管と耳石器の機能に不具合が生じることで、平衡感覚に左右差が生じます。これがめまいを感じる原因です。

 

その代表的なものが「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」です。

 

内耳 解剖図

 

「内耳にある耳石器の中には、粘着性のある耳石膜があり、そこに耳石という直径0.001mmほどの小さな粒が、1万粒ほど付着しています。私たちが動いて、頭が傾くとこの耳石がずれます。その情報が小脳に伝わることで、体が傾いていることを認識するのです。これが多数剥がれて三半規管に入り込むと、頭を動かすたびに三半規管内を耳石の塊が移動し、誤った情報を脳に送りバランス情報に不具合が生じます。これが『良性発作性頭位めまい症(BPPV)』といわれる、グルグル・回転性のめまいで、特に60歳以上の女性に最多で、内耳性めまいの約半分を占めます」

 

「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」の主な症状

●朝、目が覚めて、起き上がるときに目が回る

●夜、枕に頭がつくときに目が回る、奈落の底に引き込まれるようなめまいがする

●寝返りを打つとめまいがする
●洗顔やお辞儀など、頭を下に傾けたときにめまいを感じる
●目薬をさすときなど、上を向いたときにめまいを感じる

 

 

内耳から脳に情報を伝える前庭神経に障害が起こることで発症するのが「前庭神経炎」です。

 

グルグルと目が回り、まわりの景色が流れて見え、体感震度8ともいわれる激しい症状です。3日~1週間くらい続くこともあり、立ったり歩いたりできず、横になっても激しいめまいに襲われます。発症時には身動きが取れないことが多く、入院治療になります。

「前庭神経炎」の主な症状

●激しい回転性のめまい
●目が開けられない
●3日~1週間続く

 

 

ストレスが原因の「めまい」は?

「2017年のバラニー学会(めまいの国際学会)で新たに定義されたものに、『持続性知覚性姿勢誘発めまい症(PPPD)』があります。フワフワの浮動性、またはユラユラ・不安定性のめまいの症状があり、少なくても2日に1度起こり、それが3ヵ月以上続きます。
この病気は、めまいの回復過程において、目や足の裏からのバランス情報に偏った依存が生じることで起こると考えられていますストレスが大きく関係している、慢性的に日常生活に著しい障害が起きるめまいです。今まで原因不明や心のせいとされてきたので、なかには病名がついたことで、安心する患者さんもいます」

「持続性知覚性姿勢誘発めまい症(PPPD)」のおもな症状

●フワフワした感じが一日中続き、年単位で認められる
●不安感や慢性的な疲労感、うつ状態を合併する
●歩いたり立ち上がったときに起こる

●スーパーの陳列台等の視覚で誘発される

●朝より夕方に症状が悪化する

 

 

「ストレスの関与が大きいめまいには、ほかに『片頭痛性めまい』があります。片頭痛は頭の片側が脈打つようにズキズキ痛くなる、女性に多い症状。仕事が一段落した週末などに発症しやすく、その激しい痛みに嘔吐する人もいるほどです。この片頭痛に10~15年ほど付き合っていると、やがてめまいを生じるようになることがあります。原因は遺伝のほか、ストレスが関与し、脳内伝達物質であるセロトニンや、女性ホルモンのエストロゲンの変動の関与が考えられます」

「片頭痛性めまい(前庭性片頭痛)」の主な症状

●回転性および浮動性のめまい
●頭痛とリンクして繰り返す場合と、頭痛→めまいと続く、またその逆もある

めまいの2回に1回は、光や音、においに過敏になる

●頭を動かしたときに、浮動性のめまいが数秒から数分、数時間、数日単位で続くことがある

 

 

難聴や顔面神経麻痺が伴う「めまい」病は?

「メニエール病」

耳のストレス病ともいわれる、めまいの代表的な病気ですが、実はそれほど多くなく全体の5~10%程度。内耳の内リンパ液が原因不明で増えて、水ぶくれ(内リンパ水腫)になると、平衡機能と聴覚に異常(耳鳴りや難聴)が出ます。めまい発作による自律神経が乱れることで、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

 

「めまいを伴う突発性難聴」

ある日突然、何の前触れもなく、片方の耳(ごくまれに両耳)が聞こえにくくなる病気。なかには、回転性のめまいが起こることがあります。この病気の治療は時間が勝負。なるべく早く、1~2週間以内に耳鼻咽喉科で治療を受ける必要があります。

 

「ラムゼイ・ハント症候群」

顔面神経麻痺が起こるのが特徴です。子どもの頃にかかった水疱瘡のウイルス(水疱帯状疱疹ウイルス)が顔面神経や膝神経節に潜んでいて、免疫力が低下したタイミングで再活性化することで起こります。ほかに耳の痛みや頭痛、耳に発疹ができて、水ぶくれやかさぶたができます。

 

これら以外に、加齢による小脳をはじめとする全身の平衡機能低下と、筋力の衰えで起こる「加齢性めまい、高齢者の平衡障害」もあります。小脳の働きや筋力の低下は50代から始まり、年齢とともに加速します。寿命が延びたことにより、最近増えている高齢者の病気のひとつです。

 

いかがでしたか? ひと言で「めまい」と言っても、さまざまな病気があることに驚きます。

 

 

【教えていただいた方】

新井基洋
新井基洋さん
耳鼻咽喉科専門医
公式サイトを見る

1964年生まれ。横浜市立みなと赤十字病院 めまい・平衡神経科部長。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本めまい平衡医学会専門会員・代議員。北里大学医学部卒業後、国立相模原病院、北里大学耳鼻咽喉科を経て現職。『全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方』(KADOKAWA)など著書多数。

 

イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子

 

 

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