歯ブラシのヘッドは親指の爪の大きさを基準に!
歯ブラシの種類も豊富な現代。選ぶのにもひと苦労してしまいます。そのセレクトポイントとは?
「まず、ヘッドは自分の手の親指の爪の大きさを目安に選ぶといいでしょう。また、毛の並びは3列と4列、コンパクトヘッドが主流です。コンパクトなものは小回りが利くので、歯のさまざまな部位に届かせることができます。
一方で大ぶりなものはざっと汚れを取るのには効率がいいのですが、隅々まで届かず磨き残しが出やすいというデメリットがあります。
そして重要なのは毛の硬さ。成人の場合は歯周病対策として、歯と歯茎の境目や隙間をターゲットにした磨き方を提案しますが、硬めのブラシでは痛くて磨けません。
おすすめは「普通」か「軟らかめ」です。歯茎が腫れているようなときや知覚過敏がある場合は、特に軟らかめがいいでしょう。
柄の部分や毛先の形はさまざまなものが販売されています。まず柄の形は直線タイプが鉛筆持ちをするには握りやすいと思います。
毛先の形はフラットタイプがおすすめですが、毛先が細くなっているタイプのものは、歯と歯、歯と歯茎の隙間にも入りやすいので、力を入れずに磨ける人にはいいでしょう。
太さが異なる毛を組み合わせて波型になったタイプは、小刻みな磨き方ができない人におすすめです」(照山裕子先生)
毛先のひと工夫で歯茎に優しく、歯周プラークを効果的に除去
毛の先端が 3 本に分かれた独自開発の「超極細毛先の弾力毛(ハグキケア毛)」が歯茎に優しくあたり、歯周プラークを効果的に弾き出します。歯茎やお口の状態に合わせて選べる超コンパクト、コンパクト、レギュラーの3種類のヘッドがあり、毛の硬さはふつうとやわらかめの、全5種類。ガム・ハグキラボ デンタルブラシ各¥418/サンスター
フロスは糸巻き式がおすすめ
1日1回は通常の歯磨きに加えて、フロスや歯間ブラシの併用により、歯と歯、歯と歯茎の間までしっかり汚れを取ることが推奨されています。これらの使用もかなり浸透してきた一方で、さまざまなタイプが販売されているので、選ぶのに悩んでしまう人も少なくありません。
フロスは糸巻きタイプとホルダータイプがあり、ホルダータイプにはI字型とT字型があります。糸の種類には、歯間に挿入しやすいワックスタイプと、汚れがしっかり落ちるノンワックスタイプがあります。
「これも使いやすさや好みなのですが、私がおすすめしているのは糸巻きタイプです。経済的でプラスティックのゴミが出ないこと。そして一度差し込んで引き出すときに、かぶせ物に引っかかって抜けにくくなっても、歯の横から引き出せることがメリットです。ホルダータイプだと、必ず上に引き上げなければならないので、詰め物やかぶせ物が取れてしまうリスクがあります」
唾液でふくらみ歯垢をしっかりからめ取る
唾液に触れるとフロスがスポンジ状にふくらむことで、歯茎に優しく、歯垢をしっかりからめ取ります。歯と歯の間をスムーズに動かせるワックスタイプ。キシリトール配合、ミントフレーバー。ケースはブルー、クリア、ピンクの3種。クリニカ アドバンテージ スポンジフロス 内容量40m¥420前後(編集部調べ)/ライオン
糸巻きタイプは使用方法に最初は少しコツがいりますが、慣れてしまえば簡単です。
糸巻き型のフロスの使い方
① フロスの長さの目安は約30㎝。手に持って、ひじのあたりまで引き出します。
② フロスの両端を両手の親指と中指で持ち、中指に2、3回巻きつけます。両指の間を10~15㎝ほどにして、両手の人差し指を立て、フロスを2~3㎝の長さのピンと張った状態にします。
③ 上の歯から順番に歯と歯の間にフロスを入れていきます。何度かやっていくうちに、挿入しやすい手の持ち方、角度がわかってきます。
④ できれば使用した部分は指に巻きつけ、新しい部分を使って、下の歯も行っていきます。
動かし方は上から通して、歯茎に当たるまで入れ、歯のカーブに沿って汚れをこそぎ落とすようにして上から引き出します。
歯間ブラシは歯の隙間の大きさでサイズを選んで
歯間ブラシにはI字型とL字型があり、ブラシの素材が針金、ナイロン毛、ゴム毛があり、太さは6種類ほどあります。
「歯と歯の間に隙間がある人、特にブリッジ治療をしている人には歯間ブラシは必須です。形の違いでは、奥歯にはL字型が使いやすいでしょう。
ブラシの素材は、以前は『ゴム製のものは歯茎には優しいが、汚れが落ちにくい』と言われていましたが、最近のデータによると、ゴム製のものでもしっかり汚れは落ちるようです。よって、素材は好みで選ぶのでよいと思います。
また、太さは細いサイズのものから試して、自分に合った太さを探すといいでしょう。歯の場所によっても適したサイズが異なりますので使い分けも大切です。定期的な歯科健診の際に、歯科医や歯科衛生士に相談すると確実です」
磨き残しも教えてくれる電動歯ブラシに注目!
「最近は電動歯ブラシの進化がめざましく、私も愛用しています。歯垢をしっかり除去するには、手磨きの場合は歯ブラシを1カ所に20回動かす必要があり、所要時間は約10秒かかるそう。ところが、電動歯ブラシだと0.04秒ですむというのです。
もちろん、毛先の当て方をマスターしていることが絶対条件ではありますが、時短にもなり、毎日のケアが非常に楽です。音波ブラシは隙間の細かな汚れを分解する力も備えているので、ある程度高機能の製品をおすすめします。初期投資は大きくても、歯の健康を考えると結果的にコスパがよいです。
また、最近はスマートフォンのアプリと連動して、磨き残しを教えてくれる機能も! これを活用する価値は大いにあると思います。とはいえ、フロスや歯間ブラシの併用は必要です」
正しい磨き方も指導してくれるSenseIQ搭載の最高級モデル
歯垢除去、ステイン除去、歯茎ケアの3つを備えたオールインワンブラシヘッドを採用。音波テクノロジーにより毎分31,000回の高速振動と幅広い振幅、さらに口の中の唾液の流れ「音波水流」を発生させることで、口の隅々まで歯垢を優しく、効果的に落とします。手磨きと比較して最大20倍の歯垢除去力!
また、歯と歯茎への圧力を感知してブラシの押しつけすぎを防止。ブラシの動かしすぎを予防して効果的な磨き方へ誘導します。こうしたブラッシングデータを記録し、個々に合わせた歯磨きの上達をサポート。
ソニッケアー 9900 プレステージ(本体、A3プレミアムオールインワンブラシヘッド、舌磨きブラシヘッド付き)¥49,830(編集部調べ)/フィリップス・ジャパン
タフトブラシで汚れをピンポイントでケア!
どんなに念入りに歯磨きをしても、どうしても汚れが残ってしまう部分があります。例えば、歯並びが悪くて歯が重なっている部分、かぶせ物のまわり、奥歯の裏側、前歯の裏側など。
「そこにはタフトブラシという、毛先がひとつのヘッドがとても小さい歯ブラシを使うといいでしょう。歯ブラシと同じように鉛筆持ちをして、汚れが気になる部分をピンポイントで磨きます」
超極細毛の小さなヘッドで磨き残し対策を!
小さなヘッドに超極細毛が植えられているタフトブラシは、ピンポイントでねらった歯周ポケットにアプローチが可能。奥歯の奥や歯並びの悪いところなど、磨き残しが気になる部分に毛先を45度の角度で当てて、歯茎に沿って優しく小刻みに動かすのがポイント。システマデンタルタフト 歯周ポケット集中ケア¥330前後(編集部調べ)/ライオン
歯磨き剤は用途に合わせて使い分けを!
虫歯対策には高濃度フッ化物配合のものが最強!
歯磨き剤の種類も多すぎて、選ぶのに苦労します。まず、フッ化物(フッ素)入りの歯磨き剤には賛否両論ありますが…。
「フッ化物は世界的に高い虫歯予防効果が認められた唯一の成分です。使って悪いことは何ひとつありません。最近では日本におけるフッ化物の配合基準が改正され、1450ppmの高濃度の製品が増えています。特にこれは歯の根元の軟らかい部分にできる大人の虫歯対策に有効です」
年齢を重ねると、歯周病の発症も気になります。そんな人には歯周病対策の歯磨き剤を選びましょう。
「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩化セチルピリジニウム(CPC)などの殺菌成分や、グリチルリチン酸系、トラネキサム酸などの抗炎症成分を配合したものがおすすめです」
歯茎下がりを伴う歯周病にアプローチ!
殺菌剤「CPC(塩化セチルピリジニウム)」が、歯周病(歯肉炎・歯周炎)の要因である歯周病菌の増殖と歯茎の炎症を抑え、さらに「β-GR(グリチルレチン酸)」を高濃度で配合することで、歯茎の組織を分解する物質の働きを抑えます。これにより歯茎下がりや腫れを伴う歯周病を効果的に予防。フッ素1450ppmの高配合なので虫歯予防にも(6歳未満の使用は控えてください)。ガム・ハグキラボ デンタルペースト メディカルハーブミント/ナチュラルハーブミント<医薬部外品>85g¥935/サンスター
朝と夜の口腔環境に合わせた2本ケアを新習慣に!
口内環境は朝と夜で変わります。寝る前に歯磨きしても、唾液が少ない就寝中に細菌は増えます。口の中は一日のうちで寝起きがいちばん汚いのです。だからこそ「夜」寝る前と、「朝」起きた後では、歯磨き剤も用途の違う2本で、異なったケアをするのが正解!
夜用は、虫歯・歯周病菌の発生・増殖をしっかりブロックしつつ、ビタミンEで歯茎の血行を促進。ジェルタイプなので薬効成分が隅々まで行き渡りやすく、抗菌コーティングすることで、寝ている間の長時間ケアを可能に。
朝用は、就寝中に増えた菌を徹底的に除去。高吸着シリカ成分が歯に負担をかけずに、菌や黄ばみ、歯垢に速攻で吸着して、一日を笑顔で過ごすためのホワイトニングと口臭ケアを実現します。
COSMiON コンプリートセット モーニングペースト100g +ナイトジェル 70g¥1,833/スモカ *個別売りの場合は各¥1,019
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知覚過敏には象牙質を保護するものを
「歯の根元はエナメル質が薄いため、象牙質が露出しやすくなります。この部分は歯の神経までの距離が近く、しみる症状を感じることが増えます。このため、何らかの理由で歯茎が下がっている方は知覚過敏になりがちです。特に睡眠中に食いしばりがある人などは知覚過敏になりがちです。そんな症状がある人は硝酸カリウムや乳酸アルミニウム配合のものを選ぶといいでしょう。
その症状がある部分に、歯磨き剤と歯ブラシで優しくすり込むように塗布し、薬用成分が浸透するのを少し待ってからゆすぐのがポイントです。
ダブルの「しみるバリア成分」で知覚過敏症状をケア
歯周病を防ぐ効果に加えて、歯がしみて痛みを感じる原因にアプローチ。歯がしみる痛みは、歯茎が下がって歯の根元が露出することで、象牙細管を通じて刺激が神経に伝わって起こります。そこで、その神経を鈍麻させる成分と、刺激が通る穴である象牙細管を直接封鎖する成分をダブルで配合。フッ素も1450ppmの高配合(6歳未満の使用は控えてください)。ガム・知覚過敏ラボ デンタルペースト リフレッシュシトラス/マイルドハーブ<医薬部外品>90g¥935/サンスター
このように、歯磨き剤は歯の悩みや用途に応じでさまざまあります。歯磨き剤も歯ブラシと同様に、家族共有ではなく、最低でもひとり1個を用意する時代です! 体調などに応じて使い分けることも必要です」
口臭予防にも舌のケアが大事!
「舌の表面が白くなっていませんか? これは舌苔(ぜったい)と呼ばれ、歯垢と同様、食べかすや細菌の集合体であるバイオフィルムのひとつです。このケアには舌専用のブラシを使ったり、ガーゼを指に巻きつけて、舌を優しく一方向にぬぐいます。舌苔は口臭や、味覚を鈍らせる原因にもなるので、毎日ケアをするようにしましょう。
先ほど紹介した、電動歯ブラシのソニッケアの取り替え用ヘッドに舌ブラシもあり、この使用感が抜群によく、私のお気に入りです」
いかがでしたか? 歯ブラシも歯磨き剤も日々進化しています。自分に最適なものを見つけて、しっかりケアをしてください。
【教えていただいた方】
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子